アウディA1スポーツバック 1.4 TFSIスポーツパッケージ(FF/7AT)【試乗記】
生活を彩るクルマ 2012.08.28 試乗記 アウディA1スポーツバック 1.4 TFSIスポーツパッケージ(FF/7AT)……426万5000円
コンパクトな5ドアボディーにアウディらしさがギュッとつまった「A1スポーツバック」。今回はスポーツパッケージ装着モデルに試乗、ライバル車との関係についても考えてみた。
実用的な「A1」出ました!
「アウディA1スポーツバック1.4 TFSI」は、まずは3ドアハッチが登場した同社のボトムレンジモデル、「A1」の5ドア版である。ドアは2枚増えたが、2465mmのホイールベースのみならず、3970mmの全長もキープされたまま。クルマの大きさは変わらない。追加されたドアの恩恵で、後席に直接アクセスできるようになったほか、広さに余裕がない駐車場でも前後に短くなったドアを、「バン!バン!」と気軽に開け閉めできるので、狭いニッポンでは使いやすかろう。価格は、ベースグレードの1.4 TFSIが293万円。3ドアより20万円高となる。
「『オシャレで手頃な値段のA1に引かれているけれど、ちょっと3ドアでは……』と躊躇(ちゅうちょ)していたアナタ、いよいよ5ドアが出ましたよ!」と大いに推奨したいところだが、もしアナタが足腰が弱くなったご両親や家族の送り迎えに、また近所のワルガキ……、失礼、ご学友を頻繁に乗せてクラブ活動の支援をしようと考えているなら、アウディの販売店でしっかりリアの広さをチェックしたほうがいい。小柄なボディーサイズゆえ、後席の絶対的な前後スペースは限られている。リアシートの座面は短く、背もたれも切り立っているので、リラックスできる空間とは言い難い。とはいえ、スポーツカータイプの「+2」と比較するとはるかに実用的なので、想定される使い方との妥協点は見いだしやすいだろう。
なお、A1 スポーツバックには、標準モデルに加え、スポーツパッケージ装着モデル「Sport Package」がカタログに載る。こちらは、308万円。シートがスポーツタイプになり、ハンドルが革巻きになるほか、足まわりは硬められ、ホイールは1インチアップの16インチになる。タイヤは「205/55R15」に替え「215/45R16」と、一段とスポーティーなサイズだ。
小さなボディーの高級車
この日の試乗車は、グレイシアホワイトメタリック/デイトナグレーパールエフェクトのツートンに塗られたスポーツパッケージ装着車。足元は、さらに1インチアップの17インチが装着される。タイヤは扁平(へんぺい)率40という薄いもの。シートはぜいたくなレザー仕様となっていて、バイキセノンパッケージやらMMI 3G+(マルチメディアインターフェイス)、BOSEサラウンドサウンドシステムなどがおごられ、車両価格はベースの308万円から118万5000円アップの426万5000円。ここまで来ると、上級モデルの「アウディA3」や「BMW 1シリーズ」「メルセデス・ベンツBクラス」も十分検討対象になるから、よほどA1にほれ込んでいないと購入できない。「だって、『フォルクスワーゲン・ポロ』の姉妹車でしょ?」とは、口が裂けても言えない仕様だ。
A1スポーツバックの大きさは、全長×全幅×全高=3970×1745×1440mm。BMW 1シリーズよりひとまわり小さいが、1440mmの全高は変わらない。つり上がった半眼と大きく開けた口で精いっぱいすごんではいるけれど、どこか憎めない愛嬌(あいきょう)があるのは、このコロンとしたフォルムのためである。
2465mmのホールベースは、くしくも「BMW MINI」と同寸。スポーティーなFFモデルとして、本来、ライバルとすべき相手だが、A1はサイズも価格も、上手にMINIと1シリーズの中間につけている。元気でエネルギッシュなMINIが少々暑苦しいと感じているユーザーを、クールな魅力で取り込みたいところだ。
エンジンは、1.6リッターターボのMINIと比べて、A1は知的に(!?)小排気量な1.4リッターターボ。精緻に燃料を噴射し、またシリンダー内の温度上昇を抑える直噴技術の恩恵で、過給機付きながら圧縮比は10:1と自然吸気並み。つまり発動機全体の効率が高い。アウトプットはMINIの1.6リッターターボには及ばないが、最高出力122ps/5000rpm、最大トルク20.4kgm/1500-4000rpmと、一般的なNA(自然吸気)2リッターエンジン並みのトルクを発生する。カタログ燃費は、17.8km/リッター(JC08モード)と優秀な値だ。
堂々たる高速ツアラー
「アウディA1はカッコいいねぇ。BMW 1シリーズみたいに後からジワジワわかるよさじゃなくて、初見からステキ。ボディーをぐるりと一周するキャラクターラインは、アレだね、『シボレー・コルベア』の系譜だね……」
そんなことをブツブツ呟(つぶや)きながらスポーツバックの運転席へ。インテリアはまごうかたなきアウディのそれ。シンプルで機能的。エントリーモデルらしく、ダッシュボードまわりに加飾が少なく、ハンドルやシートの位置合わせも手動だが、それはそれ。堅実でよろしい。
握りの大きなシフターをグワシとつかんで(……このフレーズ、MINIの試乗記でも使ったな)走り始めれば、ボディーや機関の剛性感がしっかり“ジャーマン”してる。乗り心地は……ちょっと頑張り過ぎちゃったかな。スポーツサスにヨンマルタイヤだから、硬い。
Sトロニックを駆使して加速していくと、ローで40km/h、セカンドで70km/h、サードでようやく100km/hを超える感じ。7段に切った細かいギアを活用して、加速のよさを実現している。一方、ゆるやかに走る際には、効率のいい回転域で次のギアに動力を受け渡すことで、燃費向上にも貢献しているはずだ。アウディA1は、「スタートストップシステム」ことアイドリングストップ機能も搭載。再スタートはスムーズで、機能オンのまま街なかを走っても不満はない。
高速道路100km/h巡航では、4気筒ターボは2000rpmに満たない回転数でゆるゆると回っているだけ。圧倒的な動力性能は誇れないけれど、アウディらしい確固たる直進性はA1の大きな美点だ。「車格」などという、古くさい言葉を忘れさせる、堂々としたハイスピードツアラーである。
ひたすら直線が続く東京湾アクアラインを走っていたら、ふいにジャパネットたかたの社長の姿が頭に浮かんできた。「『“生活”を感じさせることなくチャイルドシートを使いたいわ』という、小さなお子さまがいるご夫婦にオススメです! 見た目もホラ!! オシャレでしょう?」と、リアドアをパタパタさせながら力説する……。
せっかくカッコいいクルマに乗っているのにと、ハンドルを握りながら苦笑した。
(文=青木禎之/写真=高橋信宏)
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青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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