スバル・レガシィアウトバック2.5i EyeSight Sパッケージ(4WD/CVT)【ブリーフテスト】
スバル・レガシィアウトバック2.5i EyeSight Sパッケージ(4WD/CVT) 2012.08.14 試乗記 ……390万6000円総合評価……★★★★
仕様変更により、一段とSUVテイストが強調された「レガシィアウトバック」。新開発の2.5リッターエンジンを搭載したモデルで、その走りと使い勝手を試した。
一番おとなしいエンジンだけど
★の評価は4であるが、やはりスバルといえば水平対向エンジン。その魅力は絶大だ。メーカーが主張するほどには重心高の低さは感じられないものの、ロールについてはよく吟味されていて、大きく背の高いボディーにも関わらず、身軽な動作を可能とする。これも、コンパクトで軽量なボクサーエンジンが貢献している。よく見れば前後のオーバーハングは結構大きく、したがってヨー慣性も大きめながら、コーナリングにおける動きには余韻を残さずソリッドな挙動を実現している。
現行モデルの「レガシィ」シリーズは、拡大された居住空間の広さを十分に享受しつつ、ひとまわり大きくなったボディーを持て余すことなく、先代モデルに近い軽快な運動性能を得ている。4種類あるエンジンの中ではこのNAの2.5リッターが一番おとなしい仕様で、約387kmを走った今回の試乗では、平均11.3km/リッターの好燃費を記録した。このように燃費まで含めた経済性を重視するならば、この「アウトバック2.5i」はシリーズ中のオススメ。
一見同じような格好ながら「レガシィツーリングワゴン」はビジネスユースの雰囲気もあり、このアウトバックはよりパーソナルなたたずまいを醸し出す。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
“クロスオーバー”の草分け的存在。1995年にデビューした「レガシィグランドワゴン」を起源とし、その後「ランカスター」と名前を変え、2003年10月に世界統一の「レガシィアウトバック」として日本発売となった。
現行モデルは、2009年5月にフルモデルチェンジされた5代目「レガシィ」とベースを同じくする。2012年5月に大幅な仕様変更がされ、内外装の変更のほか、エンジン、安全技術「EyeSight」にいたるまで進化した。
アウトバックに搭載されるエンジンは、新開発の2.5リッター水平対向4DOHC(173ps、24.0kgm)と従来と同じ3.6リッター水平対向6DOHC(260ps、34.2kgm)。2.5リッターに組み合わされるCVT(リニアトロニック)は、軽量・コンパクトな「インプレッサ」用のものに変更され、グレードにより、アイドリングストップ機構を搭載する。3.6リッターモデルには5段ATが組み合わされる。
(グレード概要)
ラインナップは、2.5リッターモデルが「2.5i」「2.5i Lパッケージ」「2.5i EyeSight」「2.5i EyeSight Sパッケージ」、3.6リッターモデルは「3.6R EyeSight」の全5グレード。今回のテスト車は2.5リッターモデルの最上級グレードにあたる「2.5i EyeSight Sパッケージ」である。ダーク調フロントグリル、カラードフロントバンパー&サイドシルスポイラーに加え、18インチホイール、ビルシュタイン製ダンパーなどが標準装備される。
【車内&荷室】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
幅広いダッシュボードを持て余すことなく上手にレイアウトしている。大き目の回転計と速度計の間にある液晶画面の情報表示は、適切で読みやすい。ステアリングホイールに備わるスイッチ類も使いやすく、シフトレバーが「D」レンジのままでもシフトパドルによる変速が優先されるのは好ましい。このクルマのユーザーは、シフトアップよりも、シフトダウンで効果的にエンジンブレーキを得るためにパドルを使うのだろう。
S(スポーツモード)とI(インテリジェントモード)、S#(スポーツ・シャープモード)とIの切り替えスイッチは、内容の違いから別々に分けられており、情報表示も分かりやすい。ダッシュボード中央のナビ画面も大きく操作は容易。
(前席)……★★★★
現行モデルでひとまわり大きくなったサイズ(外寸)は室内容積拡大に確実に反映されている。知らずに乗れば米国製SUVの感覚あり。シートのサイズもたっぷりしているし、ここからの前後左右の眺めもまた、ゆったりした気分にさせてくれる。着座位置は高めであるが、決して高すぎることはなく、ボディーサイズの把握しやすさにつながる。ドアミラー周辺の見切りも上々。連続では最長3時間程度しか試乗しなかったが、特に腰が痛くなることもなく、再度アジャストする必要も感じなかった。
(後席)……★★★★
広々としている。座面の後傾斜角も適切でお尻が前にずれるのを効果的に防ぐ。前端が高いおかげで膝があまり開かず腰のおさまりも良い。背面のリクライニング機構も親切。この手の折り畳めるシートはとかく表面が平板になりがちだが、クッションの硬さ配分や表皮の縫い目の凸凹などが効果的にスベリを抑制してくれるから、座り直す回数は比較的少なくて済む。ルーフは高く、ヘッドクリアランスも十分。
(荷室)……★★★
クラスとしては標準的なのだろうが、絶対的には大きな容量が確保されている。普通のセダンでは得られない使いやすさがある。やや高めのフロアも、バンパーとは高さが同じだから荷物のスムーズな出し入れができるし、トノカバーまでの高さも十分で、四角い箱物ならばキッチリ大量に積めそう。電動開閉などの装備はないが、ダンパーを備えるハッチゲートの操作力は軽い。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
アイドリングストップ機能により止まる時や、再スタートする時のショック振動はやや気になる。レガシィツーリングワゴンはもう少し静粛だった。1500rpm以下の低速トルクは、排気量なりにもう少し欲しい。100km/h以下で走行中に「D」から「M」にすると予想より1段低いギアで走っていることも多い。CVT本来の“無段階D”で走っていると分からないが、ギアを固定したままだとトルクに物足りなさを感じる時がある。この辺は2リッターターボの方がストレスは少ない。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
平たんな路面では姿勢も乱れずフラットで良好。大きめの入力に対してもダンピングはまずまず。重量とロングホイールベースを生かした走行感覚は重厚。しかし首都高速の目地段差のハーシュネス的ショックは大きめ。太いタイヤや大径ホイールによるバネ下の重さを感じる。ただ、これもスポーツサスであることを意識するユーザーにとっては許容範囲だろう。ボディー剛性は強固に感じられ、低級音などによる安普請感覚はなし。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2012年6月14日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2012年型
テスト車の走行距離:2487km
タイヤ:(前)225/55R18(後)同じ(いずれも、ブリヂストンDUELER H/P SPORT)
オプション装備:ボディーカラー<サテンホワイトパール>(3万1500円)/LEGACYマッキントッシュ・サウンドシステム&HDDナビゲーションシステム+本革シート(64万500円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(7)
テスト距離:386.9km
使用燃料:34.1リッター
参考燃費:11.3km/リッター

笹目 二朗
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
NEW
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。 -
NEW
トヨタ車はすべて“この顔”に!? 新定番「ハンマーヘッドデザイン」を考える
2025.10.20デイリーコラム“ハンマーヘッド”と呼ばれる特徴的なフロントデザインのトヨタ車が増えている。どうしてこのカタチが選ばれたのか? いずれはトヨタの全車種がこの顔になってしまうのか? 衝撃を受けた識者が、新たな定番デザインについて語る! -
NEW
BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ(FR/8AT)【試乗記】
2025.10.20試乗記「BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ」と聞いて「ほほう」と思われた方はかなりのカーマニアに違いない。その正体は「5シリーズ セダン」のロングホイールベースモデル。ニッチなこと極まりない商品なのだ。期待と不安の両方を胸にドライブした。