ホンダN BOX+ Gターボパッケージ/N BOX+カスタム G・Lパッケージ【試乗記】
いつかはN BOX+ 2012.08.08 試乗記 ホンダN BOX+ Gターボパッケージ 2トーンカラースタイル(FF/CVT)/N BOX+カスタム G・Lパッケージ(FF/CVT)……174万2250円/171万8250円
広さが自慢の新型軽「ホンダN BOX」に、荷室の使い勝手をウリにする派生モデルが登場。その実力を確かめた。
車中泊モードを試す
「ここまでは柔らかいんだけど、ここからちょっと硬くなる」
「でも、柔らかすぎるのもいかがなものか」
「そうだそうだ、柔らかければ快適というわけでもないゾ」
ホンダの新しい軽自動車「N BOX+」を前に、『webCG』取材班は白熱した議論をかわす。
柔らかいだの硬いだのいっても、サスペンションの話ではない。前席を後ろに倒せば「身長190cmクラスが2人で寝転べる」というふれこみの、“車中泊モード”を試してみたのだ。
実際に寝転んでみると、硬さや柔らかさには不満はないものの、段差が気になる。「無限とテンピュールのコラボで、“車中泊用マットレス”のチューニングパーツを出すといい」なんて冗談を言っていたら、カタログではニトリのマットレスを敷いてモデルが寝転んでいた。
さらに、アクセサリーカタログに「お泊まりパッケージ(4万9980円)」というのを発見! 寝心地のいいマットレスを敷いて、「お泊まりパッケージ」で四方のガラス窓を目隠ししたら快適に泊まれるんじゃないかと想像すると、なんだか楽しくなる。
いつかは実現させたい夢のひとつが、クルマに寝泊まりして日本一周することだ。totoかサマージャンボが当たったらキャンピングカー、当たらなかったとしても「N BOX+」という選択肢ができた。
申し遅れましたが、「N BOX+」は先にデビューした「N BOX」の荷室拡大バージョン。ラゲッジルームの奥行きが215mm延ばされて、630mmとなっている。この奥行きは、「N BOX」のほぼ1.5倍にあたるという。
子育て世代をターゲットにする「N BOX」に対して、「N BOX+」は日常使いからレジャー、介護にいたるまで、より幅広い使われ方を想定しているという。「N BOX」に積載能力をプラスしたから「N BOX+」というわけだ。
ここで、「介護?」と思われた方がいるかもしれない。実は、個人的にはこれこそが「N BOX+」というクルマの最大のポイントだと思った。
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本当の意味でのデザイン
前方から見る限り、「N BOX+」と「N BOX」は区別がつかない。何が違うのかといえば、リアのハッチとバンパーの形状が違う。荷物の積み降ろしを容易にするために、ハッチゲート開口部の高さが「N BOX」より150mm低い330mmになっているのだ。
そして「N BOX+」最大の特徴が、荷室の床が斜めになっていることだ。荷室フロアをスロープ状にすることで、オプションのアルミ製スロープを用いれば車いすやコンパクトなオートバイを簡単に積み込むことができるのだ。
開発のまとめ役を務めたホンダの浅木泰昭LPL(ラージ・プロジェクト・リーダー)にお話をうかがうと、車中泊などのレジャーよりも介護に重きを置いて開発したことがわかる。いわく、「高齢化社会におけるクルマの使われ方を考えると、どうしてもスロープ仕様が必要」とのことだ。
「N BOX+」のスロープ状の荷室は、思想を形にするという、真の意味のデザインだ。
けれども、ベース車を開発して、それをスロープ仕様に改造するいままでのやり方だと、どうしても高価になる。そこで、遊びにも介護にも使えるように、最初から荷室をスロープ状にすることをひらめいたのだという。たくさん作ってたくさん売ることで、「福祉車両が高価だ」というこれまでの常識を覆したかったそうだ。
「雪国で介護なさっている方のことも考えて、4WDも設定しています」とは浅木さんの弁だ。
荷室を斜めにすることができた“勝因”は、ホンダが特許を持つ「センタータンクレイアウト」だ。通常のクルマは車体後部に燃料タンクがあるから、荷室を斜めにすることは難しい。一方、燃料タンクが中央にある「N BOX+」なら、それが可能になるのだ。
「F1やスポーツカーをやらないホンダなんてホンダじゃない」という声もある。けれども、使う人を笑顔にするのは突き抜けるようなエンジンだけではないはず。荷室のスロープを使って笑顔になる人も大勢いるはずだ。独自の技術で人を幸せにするという意味で、「N BOX+」は、実にホンダらしいクルマだ。
と、ここまで書いたところで、「インプレッション」の記事なのに試乗していないことに気がついた。あわててエンジンをスタートする。
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実はこっちが本命では?
試乗インプレッションとはいっても、2012年に出るニューモデルに大きな欠点など存在しない。「N BOX+」も、他の軽自動車と同じように過不足なく走る。
強いて言えば、ターボ仕様に比べるとNA(自然吸気)仕様はエンジン回転の上昇にともなうノイズが気になる。けれども、ノイズが気になるのはほんの一瞬だし、特に力不足は感じない。値段や燃費を考えれば、個人的にはNAを推す。
また、コーナーや高速走行時にも不安を感じさせない安定感や乗り心地のよさなどは、足腰がしっかりしているという「N BOX」の美点を継承している。「N BOX」より積載重量が増えることを想定して、「N BOX+」は足まわりが強化されているという。タイヤも、「N BOX」の145/80R13よりひとまわり立派な155/65R14が装着されている。結果として、高速道路や山道での足取りが、さらに確実なものとなった。
荷室のスペースを拡大するために後部座席を約20cm前方にスライドしているけれど、それでも後席の広さは十分以上。ホンダ社内の資料では、「フィット」と同等の後席空間を確保しているという。実際に後席に座ってみると、身長180cmの筆者でも多少無理をすれば脚が組めるほど広い。
つまり、「N BOX」から何も失うことなしに、さらなるユーティリティーを獲得している。試乗を終えてみると、「N BOX」の派生車種、荷室拡大バージョンというよりも、「N BOX+」が本命のような気さえしてくる。
試乗を終えてから、3枚のボードを寄せ木細工のように組み合わせるシートアレンジのデモンストレーションを見学する。
シートをぱたぱたと倒して車中泊モードにしても、“ベッド”の下には荷物を入れるスペースがあるのが立派だ。いつの日か、「N BOX+」にテンピュールのマットと釣り道具を積み込んで、旅に出ることを想像する。
オプションのアルミスロープを装着すると、バイクも自転車も台車も車いすも、するっと車内に収納される。どんなに健康に気をつかっても、誰もが車いすのお世話になる可能性はある。もし自分が車いすのお世話になるとしたら、面倒を見てくれる周囲に経済的な負担をかけない「N BOX+」の存在がどれだけありがたいことか。少なくとも自分にとっては、「いつかはクラウン」より「いつかはN BOX+」のほうがリアリティーがある。
(文=サトータケシ/写真=峰昌宏、webCG)
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サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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