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【スペック】全長×全幅×全高=4970×1930×1410mm/ホイールベース=2920mm/車重=1940kg/駆動方式=4WD/4.8リッターV8DOHC32バルブ(430ps/3500rpm、53.0kgm/6700rpm)/価格=1554万円(テスト車=1744万3000円)

ポルシェ・パナメーラGTS(4WD/7AT)【試乗記】

穏やかなスーパーセダン 2012.07.16 試乗記 下野 康史 ポルシェ・パナメーラGTS(4WD/7AT)
……1744万3000円

最新型のパナメーラ、「GTS」が日本に上陸。NAモデルのトップグレードは、どんな走りを見せたのか?

「4S」以上、「ターボ」未満

「アメリカ横断」を連想させる名のフル4座ポルシェがデビューしてから3年、シリーズに“GTS”が加わった。4輪を駆動するエンジンは430ps。7段PDKと組み合わされる直噴4.8リッターV8をS系よりさらに30psパワーアップしている。エアサスペンション、PASM(ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネジメント)、スポーツクロノ・パッケージなどを標準装備し、ターボと同じブレーキシステムを採用する。価格は“4S”より109万円高い1571万円(2013年モデルの車両本体価格。テスト車は2012年モデル)。ノンターボ・パナメーラの頂点に立ったのがGTSである。

オプションの20インチホイール(標準は19インチ)を履く試乗車でも、見た目にそれほどの派手さはない。せり出してから横に広がるリアウイングは他モデルと共通だが、止まっていれば格納されている。だが、運転席に座ると、アルカンターラの小径ハンドルがちょいワルだ。シートやダッシュボードに走るステッチは赤。そういえば、ホイールからのぞくブレーキキャリパーも赤だった。

シリーズ初のGTS、「パナメーラのGT3」みたいなやつか、と思って走りだすと、肩透かしを食らった。第一印象は乗り心地がいいこと。タウンスピードでのしなやかなフットワークは、エレガントですらある。「ジャガーXJサルーン」みたいだ。

ターボに70ps差まで迫ったエンジンも、町なかではパワフルさより静粛性のほうが際立つ。GTSもアイドリングストップ機構が標準装備。出たてのパナメーラに付いていたシステムに比べると、再始動の反応は格段に向上し、もうキャンセルスイッチに手を伸ばしたくなることもなくなった。

レザーとアルカンターラに囲まれた「パナメーラGTS」のインテリア。シートの中央部や前席のアームレスト、ルーフライニングなどがアルカンターラ仕上げとなる。ステアリングホイールには合金製のシフトパドルが備わる。
レザーとアルカンターラに囲まれた「パナメーラGTS」のインテリア。シートの中央部や前席のアームレスト、ルーフライニングなどがアルカンターラ仕上げとなる。ステアリングホイールには合金製のシフトパドルが備わる。 拡大
ブレーキシステムは「パナメーラ ターボ」と共通のもの。テスト車は20インチのRSスパイダーデザインホイール(オプション:25万3000円)を装着していた。
ブレーキシステムは「パナメーラ ターボ」と共通のもの。テスト車は20インチのRSスパイダーデザインホイール(オプション:25万3000円)を装着していた。 拡大
強力なダウンフォースをもたらす可変式2ピースリアスポイラー。(写真をクリックするとスポイラーのせり出す様子が見られます)
強力なダウンフォースをもたらす可変式2ピースリアスポイラー。(写真をクリックするとスポイラーのせり出す様子が見られます) 拡大
マットブラック仕上げのテールパイプを備えた「スポーツエグゾーストシステム」を標準装備。スイッチ操作によるシステム作動時や「スポーツ」「スポーツプラス」モード選択時に、迫力のあるサウンドを奏でる。
マットブラック仕上げのテールパイプを備えた「スポーツエグゾーストシステム」を標準装備。スイッチ操作によるシステム作動時や「スポーツ」「スポーツプラス」モード選択時に、迫力のあるサウンドを奏でる。 拡大
ポルシェ パナメーラ の中古車

スイッチひとつで戦闘モードに

GTSの0-100km/hタイムは、ノンターボ・パナメーラで唯一、5秒をきる4.5秒。「911」でもカレラS以上でないと勝てないスピードセダンである。しかもスポーツクロノ・パッケージやPASMを標準装備するところをみると、「いつでもサーキットへどうぞ」のパナメーラである。

そんな戦闘的キャラが垣間見えたのは、とっておきのワインディングロードを走らせたときだった。センターパネルのスイッチでPASMを「スポーツプラス」にセレクトすると、2920mmの長大なホイールベースが半分になったかのようにクルマの挙動がシャープになる。4WDだが、けっこうテールハッピーにお尻が流れる、がしかし、次の瞬間には自らスタビリティーを取り戻して、強力な脱出加速に移る。そのワインディングロードには、クルマを壊すかのような段差舗装があるのだが、パナメーラGTSのスポーツプラスモードは、かつて試したどのクルマよりもそこをフラットに通過してみせた。衝撃吸収と減衰性能の高さはロードバイク(自転車)の高級なカーボンフレームを思わせる。
という具合に、たとえファイティングポーズをとっていても、最後は高級なマナーのほうに感心させられるのがパナメーラGTSだ。

「脱ぐとスゴイんです」が、最近のヨーロッパ製高性能車のキーワードである。オンデマンドでスゴくなるが、そうでないときはまったくスゴくない。なにしろ、どんなにパワフルで官能的なスポーツエンジンでも、信号待ちでパタリと止まっちゃうのだ。ポルシェの“GTS”ブランドもそういう時代に入ったわけである。

「4S」のものをベースに開発された4.8リッターV8自然吸気エンジンは430psと53.0kgmを発生。ベースエンジンよりも最高出力が30ps、最大トルクが2.0kgm高められている。
「4S」のものをベースに開発された4.8リッターV8自然吸気エンジンは430psと53.0kgmを発生。ベースエンジンよりも最高出力が30ps、最大トルクが2.0kgm高められている。 拡大
「パナメーラGTS」専用のオプションとして、2色から選べるトリムパッケージが用意される。ブラックのインテリアとの組み合わせで選択でき、ダッシュボード、シートなどに、カーマインレッド(写真)またはGTシルバーのステッチが施される。また4つのシートのヘッドレストにもステッチと同色の「GTS」ロゴ刺しゅうがあしらわれるほか、シートベルトも同色となる。
「パナメーラGTS」専用のオプションとして、2色から選べるトリムパッケージが用意される。ブラックのインテリアとの組み合わせで選択でき、ダッシュボード、シートなどに、カーマインレッド(写真)またはGTシルバーのステッチが施される。また4つのシートのヘッドレストにもステッチと同色の「GTS」ロゴ刺しゅうがあしらわれるほか、シートベルトも同色となる。 拡大
センターコンソールには、運転席/助手席の空調操作スイッチのほか、「スポーツ」「スポーツプラス」のモード切り替え、車高調整、「スポーツエグゾーストシステム」の作動、アイドリングストップ機構のオン/オフなど、数多くのスイッチ類が並ぶ。
センターコンソールには、運転席/助手席の空調操作スイッチのほか、「スポーツ」「スポーツプラス」のモード切り替え、車高調整、「スポーツエグゾーストシステム」の作動、アイドリングストップ機構のオン/オフなど、数多くのスイッチ類が並ぶ。 拡大
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主役はやっぱりドライバー

最近、東京の都心部ではパナメーラ目撃頻度がとみに高まってきた。911より目につくこともある。そのたびに注意して見るのだが、まだリアシートに人が座っていたのを見かけたことはない。

でも、パナメーラの後ろは空席にしておくには惜しいシートである。画然と左右にスプリットされた後席は、レッグルームもヘッドルームも十分に確保されている。座面は高めで、ダッシュボードは低めだから、見晴らしもいい。もぐり込んだ感じはない。ちゃんと主役感を与えてくれるシートである。ここに座った若きIT社長は、スマホをイジリながら「パナメーラ買ったし、今度はあの会社買っちゃおうか」とか考えるのだろうか。

リアシートは前席よりさらに乗り心地重視で、PASMの“ノーマル”だとエアサスっぽいフンワリ感が明確に出る。それもわるくないが、一段ハードな“スポーツ”にすれば、揺れはピタリと収まる。

天井はすごみのある黒のアルカンターラ。ダッシュパネルはピアノブラック。縦に並んだスイッチがどこかアルマジロを想起させるセンターパネルも、リアシートからのぞくとカッコイイ。だから、やっぱり主役は運転席だ! と思わせるクルマである。

GTSは燃費性能も優秀だ。一般道、高速道路から山道まで、約250kmを走って、8.0km/リッター(満タン法計測)をマークした。0-100km/hを4秒台でこなすフル4座セダンとしては立派だろう。
ほとんど死角なしのパナメーラGTS、映画「トランスポーター」の黒いスーツを着たジェイソン・ステイサムのような人に乗ってもらいたい。

(文=下野康史<かばたやすし>/写真=高橋信宏)


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後席の室内空間は、レッグスペース、ヘッドクリアランスともに余裕がある。座面は前席に対してやや高めで、見晴らしも良好。
後席の室内空間は、レッグスペース、ヘッドクリアランスともに余裕がある。座面は前席に対してやや高めで、見晴らしも良好。 拡大
荷室容量は4名乗車時で432リッター。リアシートを折り畳むことで最大1250リッターまで拡大できる。(写真をクリックすると荷室の変化が見られます)
荷室容量は4名乗車時で432リッター。リアシートを折り畳むことで最大1250リッターまで拡大できる。(写真をクリックすると荷室の変化が見られます) 拡大
【テスト車のオプション装備】
ボディーカラー<カーマインレッド>=65万4000円/ポルシェ・ダイナミックシャシー・コントロールシステム(PDCC)&ポルシェ・トルクベクタリング(PTV Plus)=83万円/20インチ RSスパイダーデザインホイール=25万3000円/カラークレスト・ホイールセンターキャップ=3万円/フロアマット=3万2000円/スポーツデザインステアリングホイール=2万1000円/プライバシーガラス=8万3000円
【テスト車のオプション装備】
ボディーカラー<カーマインレッド>=65万4000円/ポルシェ・ダイナミックシャシー・コントロールシステム(PDCC)&ポルシェ・トルクベクタリング(PTV Plus)=83万円/20インチ RSスパイダーデザインホイール=25万3000円/カラークレスト・ホイールセンターキャップ=3万円/フロアマット=3万2000円/スポーツデザインステアリングホイール=2万1000円/プライバシーガラス=8万3000円 拡大
下野 康史

下野 康史

自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。

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