マツダ・デミオピュアレ(4AT)【試乗記】
『真剣に迷える』 2001.06.27 試乗記 マツダ・デミオ「ピュアレ」 ……120.8から129.8万円 コンパクトなボディと広い室内空間がウリのマツダ・デミオ。その1.3リッターモデルに、若い女性向けと謳われる「ピュアレ」と、“男の子仕様”ことスポーティルックの「エアロアクティブ」が加わり、2001年6月25日に発売された。 それに先立つ6月20日に、マツダのお膝元、広島県は三次で行われた「ウェブ媒体向け説明会&テスト走行」に、『webCG』特派自動車ジャーナリスト、森慶太が参加した。頭脳プレイの産物
今回加わったのは、デミオ「ピュアレ」。変わったのは色関係。若い女性をはじめとしたオシャレ意識層へのアピールを強めるのが狙いだ。具体的には、外装色にあわせてオレンジ色か水色のアクセントが、グレー内装の一部というか数箇所にあしらわれる。メカニズムに関する変更は特になし。で、以下はその試乗記。乗った場所は広島県は三次にあるマツダのテストコース。つまり非常に特殊な環境ということです。
まず運転姿勢は良好。上体を起こし、背筋を伸ばしてキチンとしたポジションを得ることができる。各種スイッチ類の操作性もよし。ダッシュボードのカタチがブワンと肥大していないので、車両感覚をつかみやすい。これに関しては、Aピラーの角度や位置がいいこと、および着座位置が適度に高いことも大いに効いている。また、デミオはこのクラスの日本車としては座面がチャチくないのもいい。
シートのかけ心地は、後席に関しても前とほぼ同様。フルフラット機構前提ということもあって、背もたれは前後ともサイズや形状がモノ足りないけれど、それはこのテの日本車ほぼ全部にいえることだ。
なにより、デミオは内部空間が無用にデカくないのがいい。外観のデザイン処理で「一見RV風に見せつつ実態はごくまっとうなハッチバック乗用車」という路線は、高度な頭脳プレイの産物といっていい。巧妙なダマシともいえるが、それが真にユーザーのメリットへ直結しているのだから文句のつけようがない。
乗り心地および操縦性はパリッとしていて気持ちよい。ルノー・ルーテシアのような懐の深さを思わせはしないけれど、とりあえずフニャフニャクニャクニャした動きが出ないのはありがたい、というかイヤでない。それに、1996年のデビュー当初から比べたら、ガサツな騒音やビシバシ系の痛いショックは確実に減った。
ヴィッツかデミオか
動力性能は、今回試乗した小さい方のこの1.3リッターで十分。というか、間違いなく1.5リッターよりも車体側との相性はいいはずだ。高速巡航時の静かさを得るためにオートマが当初の3段から4段に変わったのはドライバビリティの観点からすると必ずしも進歩ではないけれど、まあしかたない。
ちなみに、開発者にいわせると、デミオは1.3のマニュアルシフトがいちばんいいそうだ。なぜなら、「上のほうからヘンなチャチャ入れられることがなかった分、現場の思うとおりにやれましたから」。
実際、1.3のマニュアルは数も堅調に出ているという。実にめでたいことだと思う。自動車サイトやクルマ雑誌で紹介されることはまずない仕様だが、えてしてこういうところにオイシい部分があるものである。
総合評価は5点満点中の4点に近い3点。贔屓でなく、国産の小型ハッチバックからどれか買えといわれたらヴィッツかデミオかはけっこう真剣に迷えるところだ(あとストーリアというのもあるけど)。
(文=森 慶太/写真=難波ケンジ/2001年6月)
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |

森 慶太
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。