ホンダ・シビックタイプR(5MT)【ブリーフテスト】
ホンダ・シビック タイプR(5MT) 2000.11.20 試乗記 ……217.5万円 総合評価……★★★★ひとりでニンマリ
いうまでもなくシビック「タイプR」のハイライトは、6000rpmを境にカムが切り替わる瞬間である。一段と高まったエンジンサウンドが押し寄せて、最高出力発生ポイント、レブリミット直前の8200rpmまで一気呵成にパワーを稼ぎ出す。
ステアリングホイールを握ったイカツイ男が思わず笑い出す、というTVコマーシャルは、ウソじゃない。1速で70km/h、2速で100km/h、3速で……、ウッヒャッヒャッ!
しかし、タイプRは常日頃エンジンを回していないとツマらないかというと、そんなことはない。専用のクランクシャフト、コネクティングロッド、ピストンなどを使い、吸気ポートを丁寧に磨いた1.6リッター「B16B」ユニットはレスポンス良く、精緻で軽やか。中低回転域でも出力充分。
車両本体価格199.8万円也で購入したオーナーは、ヒンヤリ冷たいチタン削りだしのシフトノブを握るたびに、「いいモン買ったなぁ」と思うんじゃないでしょうか。
反面、足は硬く、高速道路の継ぎ目ではビシバシ突き上げる。レカロの厚いクッションで、大分緩和されるとはいえ、「スポーティな乗り心地」を助手席のヒトに納得してもらうのは難しかろう。そのうえ、遮音材を軽減した車内は、かなりウルサイ。いきなり笑い出すのは避けた方が無難だ。
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1995年にデビューした6代目シビック。国内では、当初3ドアハッチ、4ドア「フェリオ」がラインナップされた。エンジンは、1.3から1.6リッターまで5種類。なかでも、1.5リッターSOHC「3ステージ」VTECが、技術的ハイライトだった。トランスミッションは、4AT、5MTのほか、マルチマチックことCVTが設定され話題になった。ギョロ目のシビックは、この後、ワゴン「オルティア」、ライトクロカン「CR-V」、北米産シビッククーペなどを加え、豊かなファミリーを形成した。
(グレード概要)
シビック タイプRは、1992年のNSX、96年のインテグラに続く、3台目の「タイプR」として1997年に登場。1.6リッター「B16B」ユニットは、ノーマル比+15ps、リッターあたり116psの185psを絞り出す。赤い結晶塗装のカムカバーが「タイプR」の証。もちろん、増加したアウトプットに合わせて足まわりは硬められ、ブレーキも強化された。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
ダッシュボードを覆うシボ付きの樹脂は、しっとりとして品質感高し。カーボン調パネルは、メーターナセル内にとどめておいた方がいいかも。直径368mmの小径革巻きステアリングホイールが、クルマの性格によくあっている。赤いステッチがウレシイ。
(前席)……★★★★★
専用レカロシートが、やんわりとドライバーを包んでくれる。ホールド性の高さ、三角形のダイヤルによるバックレストの細かい角度調整が可能、といった機能面のみならず、シート中央部の粗い織りの生地とサイドに用いたバックスキン調ファブリックの「触感」「見た目」も抜群だ。
(後席)……★★
タイプRといえどもシビックだから、後席は実用的。座面を短く、背もたれを倒し気味にして、足もと、頭上の空間を稼いでいるのが気になる。もっとも、リアシート長時間滞在の妨げは、「広さ」より「乗り心地」だろう。
(荷室)……★★★
後席同様、こちらも実用車として充分な容量。ただし、軽量化のため、パーセルシェルフは省略され、かわりにティンテッドガラスが与えられた。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
ハイリフトカムに切り替わってからの、ほとばしるようなパワーはいうまでもなく、ストップ&ゴーの多い街乗りでも、ことさら神経を使う必要のない扱いやすさには感心するばかり。エンジン1基で2基分の働きをするVTECのありがたさを痛感するハイチューンユニット。シフトの剛性感もいい。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
スポーティというよりレーシィな硬い足まわり。特にリアは、ちょっとした段差でもガツンと突き上げる。日常ユースには、覚悟が必要だ。一方、峠ではすばらしい切れ味。サスチューンに加え、フロントのヘリカルLSDの効用もあらたかで、オンザレールとはまさにこのこと。スロットルペダルのオンオフに、ピーキーなところなく反応するシャシーは、玄人好み。病高じたらサーキットへ。
(写真=小河原 認)
【テストデータ】
報告者: web CG 青木禎之
テスト日: 2000年11月14日
テスト車の形態: 広報車
テスト車の年式: 1998年型
テスト車の走行距離: 2万3972km
タイヤ: (前)195/55R15 84V/(後)同じ(いずれもブリヂストン Potenza RE010)
オプション装備: コンフォートパッケージ=ボディ同色電動ドアミラー+パワーウィンドウ+エアコンディショナー(17.7万円)
テスト形態: ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(4):山岳路(3)
テスト距離: 322.0km
使用燃料:44.5リッター
参考燃費:7.2km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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