トヨタ・ハリアーiRバージョン(4AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・ハリアーiRバージョン(4AT) 2001.02.14 試乗記 ……300.0万円 総合評価……★★★唸るライオン
2000年11月のマイナーチェンジで、ハリアーの4気筒モデルは、2.2リッター「5S-FE」ユニットを、「クルーガーV」でも使われる2.4リッター「2AZ-FE」ユニットに換装。VVT-i(連続可変バルブタイミング機構)装備、給排気系のファインチューニングで、燃費向上、排ガス低減を狙う。
新世代エンジン搭載で、4シリンダーモデルの走りがグッと新しくなったかというと、これがそうでもない。2AZユニットは、トルキーだが、回してもまるで色気のないエンジン。キックダウンを効かせたときに高まるノイズは、ワイルドというより、ガサツで興ざめ。そんなに唸らないでも……。
テスト車は、「ユーロチューンドサスペンション」を備えた「iRバージョン」。低速時には、つっぱった足で左右にユラユラ揺れるの感あり。高速道路に乗ると、さすがにビシッとするが、視界の高さからくる優越感ほどは、感銘を受けず。百獣の王は、あんまりシャカリキに獲物を追わなくてもいいんじゃないでしょうか。それにしても、同じ価格で3リッターのベースモデルが買える絶妙の価格設定。どうせV6モデルが買えるなら……って、おそるべし、三河商法。
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1998年に登場した乗用車ベースのSUV。北米ではレクサスRX300として販売され、大ヒット。国内のデビュー当初は、2.2リッター直4と3リッターV6の2本立て。2000年11月13日にマイナーチェンジを受け、2.2リッターは、2.4リッターに拡大された。いずれも4段ATと組み合わされ、4輪駆動、前輪駆動が用意される。
(グレード概要)
ハリアー全グレードを通して、標準仕様のほか、スポーティな「iRバージョン」、ラグジュアリーな「Gパッケージ」がラインナップされる。iRバージョンは、スプリングレイトを上げた「ユーロチューンドサスペンション」を装着するほか、内装では、シフトボタンの付いたステアリングホイール、スポーツタイプのシート、アルミパネルを採用、外装のリアスポイラーなどで、スポーティを演出する。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
スポーティ版らしく、ウッドではなくシルバーのオーナメントを用いたインパネまわり。スッキリしている。センターコンソール上部に配されたディスプレイ、シフト時に左手の動線が短いシフターの位置など、機能的で、よく考えられている。ステアリングホイールには、表側がダウン、裏側がアップのシフトボタンが装備されるが、さて、どれほど使われるんでしょうか?
(前席)……★★★
iRバージョンに革内装は用意されない。ファブリックシートは、「スポーツタイプ」と称されるが、グレーと格子模様を組み合わせた雰囲気重視のもの。あたりが柔らかく、むしろラグジュアリーな座り心地だ。トンネルコンソールに設置されたモノ入れは、引き出しのようになっていて便利。カップホルダーも備わる。
(後席)……★★★★
頭上、足もと空間とも文句ない。左右はもとより、中央の席も、座面が盛り上がり、座り心地がいくぶん硬いが、じゅうぶん実用的だ。分割可倒式の背もたれを倒すと、連動して座面が沈み込み、ほぼ水平に荷室フロアが延長される。トヨタ流のおそるべき細かい配慮。使いやすい。
(荷室)……★★★
奥行き100cm、床面最大幅140cm、パーセルシェルフまでの高さ45mm、天井までは85mmと、まず不満のないラゲッジスペース。床下には深さ5cmから15cmほどの、細かく仕切られた収納トレイ有り。ガラスハッチだけの開閉ができないのが、後発SUVと比較されたときの弱点だ。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
新型2.4リッターエンジンは、2.2リッターより、パワーが20psアップの160ps、トルクは、400rpm低い4000rpmで、3.0kgm太い22.5kgmを発生する。連続可変バルブタイミング機構でフラットなトルク特性を狙った、純然たる実用ユニット。フィールはともかく、実用的な動力性能に文句はない。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
「ユーロチューン」を謳う足まわりだが、特に硬いことはない。街なかでもスポーツサスを意識することなく、一方、高速では安心感が高い。ハリアーは、ハンドリング、乗り心地とも、通常の乗用車と選ぶところがなく、そこがセダンからの乗り換え組からも、SUVの乗り心地にウンザリしたタフガイ気取りからも支持される理由だ。次第に運転していることを忘れがちになるところは、ほかのトヨタ車と同じ。
(写真=阿部ちひろ)
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2001年2月3日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年 :2000年型
テスト車の走行距離:2634km
タイヤ:(前)215/70R16 99S/(後)同じ(いずれもTOYO TRANPATH A11)
オプション装備:前席サイドエアバッグ(3.5万円)/プレミアムサウンドシステム(8スピーカー)+DVDナビゲーションシステム(27.0万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(6)
テスト距離:301.2km
使用燃料:44.5リッター
参考燃費:6.8km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
NEW
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
NEW
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RS
2025.12.4画像・写真およそ3年ぶりに、日本でも通常販売されることとなった「ホンダCR-V」。6代目となる新型は、より上質かつ堂々としたアッパーミドルクラスのSUVに進化を遂げていた。世界累計販売1500万台を誇る超人気モデルの姿を、写真で紹介する。 -
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る
2025.12.4デイリーコラム「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。







































