トヨタ・カローラランクス&アレックス X Gエディション(4AT)/Z エアロツアラー(6MT)【試乗記】
『神は細部に宿る』 2001.02.20 試乗記 トヨタ・ランクス&アレックス 2001年1月24日、カローラのハッチバックモデル「ランクス」と「アレックス」が発表された。「洗練されたデザインと爽快でしなやかな走り」(プレスリリース)と謳われる「スタイリッシュ5ドア」(同)である。ランクスはトヨタカローラ店、アレックスはネッツトヨタ店を通じて販売される。 拡大 |
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逗子マリーナにて
2001年2月5日、トヨタ・ランクス&アレックスのプレス向け試乗会が、神奈川県は逗子マリーナで開催された。英国人女性失踪事件でいま話題の場所である。しかし、凪いだ海にはやわらかい日ざしがそそぎ、キラキラと輝く水面は、平和そのものであった。
と、それはともかく、ズラリと並んだ試乗車を見ながら、同行した(というか、webCG側が同行させてもらったのだが)自動車専門誌『NAVI』の佐藤健記者に、「太いCピラーがフォルクスワーゲン・ゴルフに似ているねぇ」と話しかけると、「いや、アウディA3でしょう」とキッパリ。佐藤記者は、NAVIの長期リポート車「ゴルフGTI」の担当なのだ。なるほど、かるくノッチのついた(段差のある)リアビューは、たしかにA3を彷彿させる。「最近のデザイントレンドなのかしらん」と、リポーターは外野の気楽さで考える。
ランクス&アレックスは、1.8リッター「Z」、1.5リッター「X」と、大きく2つのグレードに分かれる。トランスミッションは、前者が6段MTと4段AT、後者は4段ATのみである。駆動方式は、「Z」はFFだけだが、「X」には4WDモデルも用意される。
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「走る!」予感
まず乗ったのは、ランクスの1.5リッターモデル「X」Gエディションの4WD版。オプション装備を含めて、価格は179.9万円となる。
佐藤記者が乗ってきたゴルフと並べてみると、ボディサイズはほとんど変わらないが、ランクスは、サイド、リアとも「内側から膨れる」の感があり、ふっくらと立体的だ。見慣れたフォルクスワーゲンが、にわかに古く見える。
「オッ」と思うほど軽いドアを開けてランクスのドライバーズシートに座る。内装はタン。インテリアまわりはカローラと同じだが、3本スポークのステアリングホイールがスポーティだ。ホワイトメーターと、2トーンのシートが若々しい。
車重は、セダンよりむしろ増えているが(1140から1170kg)、走りは軽快。「VVT-i」こと可変バルブタイミング機構を備えた1.5リッター(105ps、14.1kgm)は、回転が高まるにつれ「ビーン!」と独特の共鳴音を発するライブリィなエンジン。カメラマンを含め、3名乗車で逗子、鎌倉の街なかを走って、なんら不満はない。
続いて、ランクス「Z」エアロツアラーをドライブした。トランスミッションは6段MT。かつては廉価版の役目も負ったマニュアルモデルであるが、最近の日本では、「特殊なスポーツ版」と位置づけられ、ほぼトップグレード扱いである。テスト車は、車両本体価格189.4万円。オプション込みで199.9万円也。
黒基調の室内。インパネまわりには、シルバーパネルが配され、計器類は黒字に赤文字のオプティトロンメーターが使われる。
1.8リッターユニットは、バルブタイミングのみならず、リフト量まで変化させる「VVTL-i」を搭載。最高出力190ps/7600rpm、最大トルク18.4kgm/6800rpmという、すばらしいカタログスペックを誇る。
セリカのハイチューンエンジンを小柄なハッチに積んだのだから、文句なく速い、はずだが、あいにく今回はテストする場に恵まれなかった。わずかに、披露山を登る短い山道で、「X」よりひとまわり大きな16インチホイールを履いた足まわりがカーブでグッと踏ん張り、「なかなかヤル」予感がしただけである。
ロバストネス
試乗後、トヨタ自動車・第2開発センター第2デザイン部の廣川学さんと、同製品企画主担当藤田博也さんにお話をうかがうことができた。
カローラハッチことランクス&アレックスのスタイリングは、セダン同様、欧州デザインセンターによるもの。「ロバストネスをキーワードにした」と廣川さんはおっしゃる。ロバストネスとは、「塊感」の意味で使っているという(robust:強健な、豊潤な)。クルマを上下に分ける「Bライン」(サイドウィンドウ下端の線)、スポーティなヒップアップ、そしてリアガラスの角度が、デザインのキモだそうだ。
「リアビューがあまりにアウディA3に似ていませんか?」というリポーターのぶしつけな問いには、「そうでしょうか?」と首をひねる。
リアで下方に折れ曲がるサイドのキャラクターラインと、垂直方向のクランクを強調するリアのコンビネーションランプが「ランクスのアイデンティティ」との説明を受けた。ヒトはトレンドに流され、しかし細部に神は宿る、ということでしょうか。
「リーンバーンVTEC、CVT、フラットなフロアといった斬新なコンセプトをもつホンダ・シビックと比較して、ランクスは保守的に過ぎませんか?」と聞くと、「まあ、手持ちの武器がなかったということです」と、藤田さんが穏やかに応える。
カローラのハッチバックモデルは、既存のコンポーネンツを手堅く組み合わせただけでなく、開発初期からCAE(Computer Aided Engineering)を駆使して、徹底的に軽量化したという。「走りにも、燃費にも影響しますから」と藤田さん。「ドアの鉄板だって、0.5mm厚くするだけで、バスッといい音で閉まるんですが、敢えてそうしなかった」。「メルセデスの質感」や「フェラーリのエンジン音」よりコスト、もとい、燃費や環境が大切ということである。なにせ、経済的な小型ハッチですから。
終始ニコやかな藤田主担当に、質問を続ける。
--北米には輸出しますか?
「予定はありません」
--欧州はどうですか?
「このまま出したら、『日本用のクルマをそのままもってくるのか』と怒られるでしょう。デザインは変えることになると思います」
そうでしょうなぁ。
--ときに、ハッチバックは日本ではすっかり影が薄くなりましたが、果たして市場はあるのでしょうか?
「たとえばターセル、コルサ、カローラIIに乗っている年輩のご婦人。ヴィッツじゃ小さいし、bB、ファンカーゴというわけにもいかない。このセグメントで、手堅いクルマがなくなっていたから、待っていたヒトも多いと思います。ランクス、アレックス合わせて月4000台と控え目な販売目標ですが、意外に売れるのでは。それから、外国車のコンパクトモデルにお乗りの方にも来て欲しい」
--ランクスは、ゴルフやA3より、だいぶお安いですから
「とはいっても、プアマンズA3になっても困るんでね……」
なっていると思います。
(webCGアオキ/写真=望月浩彦)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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