スバル・レガシィツーリングワゴンTStypeR(4AT)【ブリーフテスト】
スバル・レガシィツーリングワゴンTStypeR(4AT) 2001.05.18 試乗記 ……267.1万円 総合評価……★★★★ターボじゃない不満。または、こんなに印象が違うとは
"国産という枠内でクルマ選びをした場合、あるいはそうでなくとも、レガシィというのはひとつの決定版だ。全長4.6m級のオーソドックスなセダン/ステーションワゴンというのがまず王道であるし、「空間の設計」といい「走りの鍛えられ方」といい、見ても乗ってもエンジニアリングの内容がとにかく真っ当。濃厚。信用に足る。作り手の意識の高さがアリアリと感じられる。
個人的なことだが、たとえガイシャのどんな感動的なクルマに出会ったとしても、すくなくとも一度はアタマのなかでそれを、以前『webCG』で乗ったレガシィツーリングワゴンGT-B E-tuneと冷静に比較せずにはいられない。クルマの“正味”の部分でいえば、たとえばポルシェやアウディやボルボにほぼ匹敵する世界を、レガシィでならはるかに安い価格(300.8万円)で得られるのである。スゴい。
ツーリングワゴンTStypeRを試したあとのいまも、その考えは基本的には変わっていない。同じといえば同じクルマなのだから当然だ。が、気分はいささかフクザツである。なんでフクザツかというと、ターボじゃないことが乗っていて常に不満だったからだ。
高性能と引き換えにガマンしなければならないネガの少なさ(ほとんどゼロ)を考えても、やや極端な話、ターボを前にしてのTS-Rはただの“劣ったレガシィ”としか思えない。せめて値段が倍以上も違えばまだしもアレだが、実際はロクに違わない。これと50万円も違わないカネでトップガン仕様が買えてしまうのならば、そっちを買わないほうがおかしい。
下取りの際の評価の差を考えると、ますますターボモデルは買いだろう。電動サンルーフやレザーシートといったアイテムとは違って、レガシィにおけるターボ関連の各種ハードウェアは、所有期間中の全域で実のあるありがたみを効果的に与えつづけてくれるはずだし。
※さて、ここから先は追加で書いたぶんだ。というのもつい先日、やはり『webCG』で基本的に同じ仕様の別の個体(TStypeR)に乗ったところ、印象がだいぶ違ったから。
純白のペイントとマッキントッシュ音響装置の2点から、ついターボモデルだと思い込み、乗り込んで東京は原宿あたりの明治通りを走り出し、高樹町から首都高環状線内回りに入ってナンと1号横羽線とレインボーブリッジの分岐を過ぎる手前のあたりまでターボだと思いつづけるという事態が発生してしまった。気づく地点までずっと渋滞だったとはいえ、「過給なしゾーンのナンと自然なこと」など好印象を口に出してホメながら。あーあー。
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1998年6月17日に登場した3代目レガシィ。看板モデルたる「ツーリングワゴン」、車高を上げ、SUV的な性格が与えられたワゴン「ランカスター」、そしてスポーティセダン「B4」に大別される。ツーリングワゴンは、ボディサイズを5ナンバー枠にとどめたまま、ホイールベースを20mm延長して室内空間を稼ぎ、ボディ剛性を上げ、リアにマルチリンク式サスペンションを採用したのが新しい。エンジンは、2.5リッターNA(自然吸気)、2リッターターボ、同NAのDOHCとSOHCがラインナップされる。すべて水平対向4気筒だ。駆動方式は、全車4WD。
(グレード概要)
TStypeRは、2リッターDOHC16バルブNAユニットを搭載したモデル。可変バルブ&吸気システムを搭載し、SOHCユニットと比較して、18psと1.0kgm大きい、155ps/6400rpmの最高出力と20.0kgm/3200rpmの最大トルクを得る。当然、シングルカムモデルよりスポーティな位置づけで、倒立式フロントダンパー、1インチ大きな16インチアルミホイールなどを装備する。
SOHC、DOHC問わず、2リッターNAモデルAT車の4WDシステムは、「アクティブトルクスプリット4WD」。これは、駆動力を基本的に前後半々に分け、状況に応じて電子制御でトルク配分をコントロールするものだ。ちなみに、ターボモデル(AT車)は、35:65をベースとする「VTD-4WD(不等&可変トルク配分電子制御4WD)」を採る。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
オプション装備の「Legacyマッキントッシュサウンドシステム」が、ついてる。多少「あーあーよくやるよ」と思わないでもないが、造形上ドライバーを惑わすような成分が含まれていないぶん、日産“ITドライビング”プリメーラのこのへん(センターコンソールまわり)よりは確実にいい。が、いまや新味に乏しい。やや煩雑でもある。見た目の質感がとびきり高いともいいがたい。
(前席)……★★★
ターボ用のレザーシートと較べるとたんにカタい。布の色柄もいささかジミ。華がない。シート全体でなく座面のみ動かす上下調整機構はターボと基本的に同じだが、改めて減点要素としての存在感が強くなる。そこらの日本車と同じような設計やらんでくれ、と思う。
(後席)……★★★★
後席環境のつくり込みで手を抜いていない点で、同じスバル車でもレガシィはインプレッサやフォレスターを確実に一歩リードしている。
なにも後席にかぎった話では必ずしもないが、全幅1.7m未満の枠内でこれだけ充実した居心地をつくり出したのもスゴい。願わくば、ヘッドレストの最高位置をもうちょっと上に。
(荷室)…★★★★
ワゴン世界一を目指した(そして実現、と開発陣は主張する)クルマなのだから、今となっては積載時の後席安全性や細かい使い勝手への配慮にもう一歩の工夫がほしい。見習うべきは、まずボルボ。ヨンクとFFで床の高さが変わらない、という点は、国内向けにFFの仕様がないのであえて指摘してもアレか。
【ドライブフィール】 運転すると?
エンジン+トランスミッション)……★★★
2リッターターボなしで155psは、一応第一線級のスペックだ。オートマも含めて、それじたいが悪いということは特にない。しかし、「ヨンク+鍛えられた足腰の基本+それなりスポーティな仕様」に相応しいチューニングとの関係でいうと、はっきりモノ足りない。最新世代の4気筒エンジンと較べて特に静かでもスムーズでもない。ターボにするか、あるいはもっと柔らかく優しく動くアシにするかしてほしい。いっそ、ヨンクもやめてしまうとか。そういえば、旧型にあった1.8リッターFFの仕様はけっこうヨカッタ。余談だが、現行インプレッサは、1.5リッターのFFモデルがとびきり好印象だった。
※上記のとおり、ランエボVIIでなくルノー・メガーヌクーペ16Vから乗り換えた際の印象はだいぶ違った。「あ、これでいいわなあ」。ということで、ここでも★ひとつ追加。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
上に同じ。トバしてもコワくないところとか足腰の骨太さを感じさせるところはいかにもレガシィらしいが、現状ではただただ無難なだけ。あるいは、中途半端にスポーティ。スカッと一本抜けたところが特にあるわけでなし、さりとてトケるようなリラックスがあるわけでなし。全体として、これとの競合だったらプリメーラワゴンの2リッター直4モデルやトヨタ・アルテッツァの2リッター直6+ATもアリかなと思ってしまう。このエンジンで、アシは1コ下(SOHCエンジンモデル)の「TX」という仕様の方がいいのではないか。
※追体験で、やはり★ひとつ、いや半分ほど追加。タイヤのコンディションのせいか、後で乗ったヤツのほうが「ガサツの反対」でよかったと思う。
(写真=郡大二郎)
【テストデータ】
報告者:森 慶太
テスト日:2001年2月7日/2001年4月27日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2001年型
テスト車の走行距離:7745/9079km
タイヤ:(前)205/50R16/(後)同じ
オプション装備:Legacyマッキントシュサウンドシステム
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:1回目:市街地(2):高速道路(8)/2回目:市街地(3):高速道路(7)
テスト距離:239.1/116.6km
使用燃料:34.8/17.0リッター
参考燃費:.9/6.9km/リッター

森 慶太
-
日産フェアレディZ NISMO(FR/9AT)【試乗記】 2026.10.28 「日産フェアレディZ」のマイナーチェンジモデルが登場。改良の主眼はZが受け継いできたヘリテージのさらなる深化と性能の強化だという。もはやお値段1000万円(!)に迫らんとする「NISMO」の9段ATモデルを試す。
-
ダイハツ・ミラ イースtuned by D-SPORT Racing(FF/5MT)【試乗記】 2026.10.27 ダイハツのベーシックな軽乗用車をもとに、ラリーやレース向けの競技車両に仕立てた「ミラ イースtuned by D-SPORT Racing」。軽量ボディーをロールバーで固め、力強いターボエンジンを搭載した一台は、クルマの楽しさを学べる教科書のような一台となっていた。
-
フォルクスワーゲン・ゴルフGTI(FF/7AT)/ゴルフRアドバンス(4WD/7AT)【試乗記】 2026.10.26 1976年に誕生し50周年を迎えたフォルクスワーゲンのホットハッチ「ゴルフGTI」と、333PSの出力とハイテク満載の4WDシャシーを武器とする高性能モデル「ゴルフR」にサーキットで試乗。両者の違いとそれぞれの特徴を報告する。
-
レクサスES350h(FF/CVT)【試乗記】 2026.10.24 「レクサスES」がフルモデルチェンジ。8代目となる新型ではボディーがググッと大きくなったほか、デザインも一気に現代的に。さらにトヨタグループでは最新鋭のパワーユニットを積むなど、中身も外身も刷新されている。2.5リッターハイブリッドモデルを試す。
-
マツダCX-30 25エアエディション(4WD/6AT)【試乗記】 2026.10.23 マツダのコンパクトクロスオーバー「CX-30」に、一部改良で2.5リッターガソリンモデルが登場。新たなパワートレインを得た最新型は、過去のモデルからどのような進化を遂げているのか? 装備全部盛りの最上級グレードで確かめた。
-
NEW
思わずなでたくなってくる 丸いデザインのクルマ特集
2026.11.1日刊!名車列伝最近のクルマのデザインは、シャープなラインが特徴だったり、造形そのものが複雑だったり……。今月は、つるりと丸い、シンプルなエクステリアが印象的な世界の名車を日替わりで紹介します。 -
NEW
ベントレー・コンチネンタルGT S(4WD/8AT)【試乗記】
2026.10.31試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」にハイパフォーマンスバージョンの「S」が登場。すでにトップパフォーマンスモデルの「スピード」が存在するなかで、果たしてSはどんなポジションを担うのだろうか。試乗を通じて検証した。 -
「BYDラッコ」がアジアにはばたく!? ニッポンの軽自動車規格が海外勢に奪われる日
2026.10.30デイリーコラム中国のBYDが、軽BEVの「ラッコ」を日本以外でも販売すると発表! 日本独自のスモールカー規格は、はたして海外でも受け入れられるのか? 本家・日本のメーカーが、海外展開に及び腰だった理由とは? BYDが食指を動かす、軽自動車の秘めた可能性を探る。 -
メルセデスのトップからのまさかの転身 BMW日本法人の上野金太郎社長にインタビュー
2026.10.29デイリーコラムメルセデス・ベンツ日本からビー・エム・ダブリューのトップへ。いわば巨人の四番から阪神の四番のような異例の転身を遂げた上野金太郎社長。両ブランドの文化や製品の違い、今後の販売戦略などについて話を聞いた。 -
ボルボEX90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(後編)
2026.10.29あの多田哲哉の自動車放談ボルボの新世代EV「EX90」に、トヨタでさまざまなクルマを開発してきた多田哲哉さんが試乗。ちょっと気になったところと、クルマとしての魅力を感じたポイントについて熱く語る。 -
写真で解説する「メルセデス・ベンツ・エレクトリックGLC」
2026.10.28画像・写真メルセデス・ベンツの新たなフル電動SUV「エレクトリックGLC」がデビュー。2026年10月28日に国内での注文受け付けがスタートした。一体どんなクルマなのか、その見どころを写真とともに解説する。


































