フォルクスワーゲン・パサートワゴンW8 4モーション(5AT)【ブリーフテスト】
フォルクスワーゲン・パサートワゴンW8 4モーション(5AT) 2002.05.30 試乗記 ……541.0万円 総合評価……★★★★露払い
「D1」改め「フェートン」がラインナップされるまでの暫定フラッグシップ。各所に銀色のモールが這うボディはまことに上品。パサートにとって、かつての実用一点張り、装甲車のような外観は、忘れてほしい過去でありましょう。W8モデルには、ボディペイント、レザーシートと、内外とも有無をいわさぬ品質感の高さあり。
「W8」というけったいなレイアウトの8気筒は、つまり片バンク4つのシリンダーを、互い違いにズラして並べたと考えるとわかりやすい。公式には「狭角15度のV型4気筒を72度のバンク角でV型に組み合わせた」と説明される。軽量コンパクトがジマン。等間隔爆発のシングルプレーンのクランクシャフトと、2本のバランサーシャフトを組み合わせた機構をもつ。スムーズだけれど独特の作動感が、メカオタクを喜ばせる。爆発的なパワーはないが、不満なく1800kgのワゴンを運ぶ。
アウディゆずりの4WDシステムの恩恵か、高速スタビリティの高さと乗り心地のよさが印象的。気を付けていないとトンでもないスピードで走っている。3リッターV6を積むアウディA6アバントより安く、かつ語るべきモノをもつクルマ。「国民車」の、プレアム市場への露払いを務める。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1996年8月にセダンが登場した4代目パサート(VWいうところの5代目。シリーズIIIのフェイスリフトを一代と数えるため)。アウディA4用をストレッチしたフロアパネルを用いるフォルクスワーゲンの旗艦である。97年に、ワゴンと4WDモデル「4モーション」が加わった。
2000年10月に開催されたパリサロンで、いわゆるビッグマイナーチェンジを受け、ドアとルーフ以外のボディパネルを一新した。本国では、1.6リッター直4から用意されるが、日本には、当初1.8リッター直4ターボと、2.8リッターV6の2種類、2001年10月30日から販売が開始されたニューバージョンは、1.8ターボに代わった2.3リッターV5(FF)と、従来通り2.8リッターV6(4WD、FFは受注生産)がラインナップされる。斬新なシリンダーレイアウトで注目された4リッターW8モデル(275ps、37.7kgm)は、2002年5月21日から日本での販売が始まった。
(グレード概要)
パサートのW8モデルは、セダン、ワゴンとも4輪駆動の「4モーション」となる。トランスミッションは5段ATのみ。「ファインナッパレザー」を使用した革内装が標準で、ウッド素材が随所に使われる。DVDナビゲーションシステム、8スピーカーのオーディオ、フィルター付きオートエアコン、クルーズコントロール、前後シートヒーター、ヘッドランプウォッシャー、レインセンサー付きフロントワイパー、ヒーター付き電動格納式リモコンドアミラーなど装備満載。わずかに電動ガラスサンルーフがオプションとして残される。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
豪華なトップグレードといえど、機能的でクリーンなデザインは変わらず。シルバーで縁取りされたメーター類、インストゥルメントパネルを上下にわけるシルバーのパイピングが品よく贅沢。エアコン吹き出し口ほか、各パーツの“合わせ”は、アウディゆずりの精密さだ。タン内装と、ステアリングホイール、シフトノブほかに配された明るいブラウンの“リアル”ウッドパーツがよく似合う。
(前席)……★★★★★
左右とも8ウェイのパワー調整機構がつくフロントシート。小柄な体型のヒトでも、もてあまさないサイズだ。ナッパレザーを用いた厚めの表皮、適度な堅さをもったクッションと、座り心地はいい。長距離ドライブでも疲れない。見た目はおとなしい形状だが、コーナリング時には腰部分のサイドサポートが有効に働いて、上体をよくホールドしてくれる。
(後席)……★★★★
前席より勝るとも劣らない座り心地をほこるリアシート。シートヒーターが備わる。座面はやや高めで後ろ下がり。シートバックの窪みが深いので、心地よい包まれ感がある。膝前空間はじゅうぶん。ヘッドクリアランスにも余裕があるが、外観から想像されるほどは大きくない。左右の天井に読書灯がつく。小物入れになる大きなアームレストももちろん用意される。
(荷室)……★★★★★
重い荷物を滑らせて奥に入れられるよう、リブのついたフラットなフロア。複雑な張り出しのないシンプルな荷室空間。いかにも使いやすそうだ。床面最大幅118cm(ホイールハウス間は106cm)、奥行き110cm、パーセルシェルフまでの高さ50cm。スキーなどを積む際に、室内が汚れないようカバー付きのトランクスルーが備わるほか、ワゴンは後席が分割可倒式となる。ダブルフォールディングすれば、約175cmもの奥行きが確保される。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
メカニカルな存在感が大きいW8。狭角V4をセルにしたモジュラーユニットである。吸排気とも可変バルブタイミング機構を備える。心地よい作動感があり、かつスムーズ。275psと37.7kgmと、“スーパー”ではないが、なんの不満もないアウトプット。ティプトロニック付き5段ATとのマッチングはいい。ただ、テスト車は初期ロットゆえの調整不足か、4WD車の走りはじめにときどき見られる「コツン」というショックが、ドライブトレインに伝わることがあった。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
ラグジュアリーでソフトな足まわり。街なかでは快適で、また、ハイスピードクルージングでの直進性能のよさも特筆もの。トルセンデフをセンターに配した4輪駆動システム「4モーション」を有効に使うことで、ドライバーに不安を感じさせることないスタビリティの高さと、柔らかく優雅な乗り心地を両立することができたのだろう。コーナリングでのロールは大きいが、よくチェックされた斬新的なものなので、ステアリングホイールを握る楽しさをスポイルすることがない。
(写真=郡大二郎)
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2002年5月17日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2002年型
テスト車の走行距離:2485km
タイヤ:(前)(後)同じ
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(7):山岳路(1)
テスト距離:378.8km
使用燃料:70.0リッター
参考燃費:5.4km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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