フォード・フォーカス2000GHIA 5ドアハッチバック(4AT)【試乗記】
『饒舌な小型車』 2000.10.30 試乗記 フォード・フォーカス2000GHIA5ドアハッチバック ……220.0万円「ニューエッヂ」の集大成
2000年10月23日、フォードのコンパクトカー、フォーカスに、1.6リッターに加え、2リッターモデルが導入された。車型は従来通り5ドアハッチとステーションワゴンの2種類。マクレーファン待望の3ドアは、今回もオアズケである。トランスミッションは、いずれも4段ATが組み合わされる。
「Break from the Routine」(既成概念からの脱却)をコンセプトに、ヨーロッパフォードによって開発されたフォーカスは、1998年にエスコートの後継車種としてデビュー。「1999年度欧州カーオブザイヤー」および翌年の「北米カーオブザイヤー」を獲得するという、幸先のよい滑り出しを見せた。日本には、2000年3月1日にまず1.6リッターモデルが上陸。しかし、「エンジンから異音が出る」とのことで、デリバリーが遅れ、こちらの出足はパッとしない。
2リッターモデル販売開始の2日後、大磯でプレス向け試乗会が開かれた。小雨降るなか、「ニューエッヂ」デザインをまとったフォーカス5ドアハッチと、ステーションワゴンが並んでいる。
「エアロデザン」をフォード流に発展させたという「ニューエッヂ」デザインは、曲面パネルをシャープな直線で組み合わせる手法のこと。フォードKa、ピューマ、クーガーといったスペシャルティカー群でまず採用、じゅうぶんこなれたところで、量販車種フォーカスに投入され、同車を「ライバルとは一線を画する孤高の存在」(広報資料)にしたという。フォーカスは、フォードのデザインコンセプトのひとつの集大成なのである。
万人のためのベーシックカー
アクアマリンフロストメタリックと呼ばれる薄緑の5ドアに乗る。リアドアのサッシには、欧州における最上級グレードを表す「GHIA」のエンブレムが付く。日本に導入される「フォード・フォーカス2000GHIA5ドアハッチバック」は、パワステ、パワーウィンドウ(挟み込み防止機能付き)はもちろん、電動ボディ同色ドアミラー(くもりを抑えるヒート機能付き)、本革ステアリング、CDチェンジャー、エアフィルター付きエアコン、キーレスエントリー、前後フォグランプ、アルミホイールなど装備満載。
そのうえ、5ドアが220.0万円、ワゴンが240.0万円と、2リッタークラスの「ガイシャ」として、意欲的な価格が設定された。
「平均的な体格のドライバーなどいない」という前提で設計されたという運転席まわりは、なるほど、ステアリングホイールを上下前後に、シート座面を電動上下に動かすことができる。好みの運転姿勢をとりやすい。運転席横にアームレストを備えることが、1.6リッターモデルとの違い。
生地の張りが強い、硬めの、VWゴルフを思わせる座り心地のシートにつくと、いささかデザイン過多と思われるインストゥルメントパネルが目の前に広がる。使い勝手を考えて「……敢えて『圧縮』し、フリースペースの拡大が図られた」そうである。
フォーカスの内装が、「色」「デザイン」「質感」をはじめ「匂い」まで考慮してつくられたということは、68ページにもおよぶ広報資料を読んで、後で知った。ウッカリ者のリポーターは、スクラッチ模様の入った濁った緑のセンターパネルが「ゾッとしない」と思っただけである。
言うべきこと多きモデル
握りが太くしっかりとした革巻きステアリングホイールは、走りはじめはちょっと重い。
2リッター「Zetec E」ユニットは、131ps/5500rpmの最高出力、18.2kgm/4500rpmの最大トルクと、1220kgのボディにはじゅうぶんな出力を発生する。「コスワースが開発に携わった」というフレーズより、「2次振動の20%低減」「エンジンノイズの50%削減」といった説明を思い出す実用ユニットである。マツダが開発した4段ATとの相性もいい。
ブルーオーバルの自慢は、フォーカスに、このクラスには珍しいマルチリンク式リアサスペンションを採用したこと。トレーリングアームにプレス鋼板を使ったことで(コントロールブレードと呼ばれる)、コスト削減と、ホイールあたり3.5kgのバネ下荷重軽減を果たしたと謳われる。
この日は、自動車専用道路を往復しただけだったので、4輪独立懸架のアドバンテイジを満喫することはできなかったが、角のない乗り心地であることはわかった。
「ニューエッヂ」の申し子は、内外とも饒舌なデザインをもつ。機関面でも、開発過程においても、ヨーロッパフォードの主力製品だけに、言うべきことがたくさんあろう。多国間のベーシックモデルたらんとするなら、当然のことだ。
とはいえ、「言葉が多ければヒトを説得できるというわけではない」とも、この日の「ちょい乗り」試乗でリポーターは感じた。
(web CG アオキ/写真(メインと人物)=阿部ちひろ/テスト日=2000年10月25日)
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【特別付録】日本市場はプレミアムマーケット
日本市場での進水式に合わせて英国からやってきたエクスポート&エマージング・プロダクツエンジニアリング・マネージャー、D.J.ベセルさんにお話をうかがった。
web CG:どうして2リッターモデルを追加したのですか?
ベセル:市場からの要求があったからです。1.6リッター導入直前から、計画していました。
web CG:遅れたのはなぜですか?
ベセル:2リッターエンジンに組み合わせるオートマチックトランスミッションがなかったからです。欧州では、MTモデルしかありません。今回導入された4ATは、日本市場のためにマツダが開発したもので、フォードが、ミシガン州はバンダイク工場で生産します。
web CG:すでにクルマが飽和状態である日本市場のために、なぜそのような投資をするのですか?
ベセル:世界に影響を与える重要なマーケットだからです。交通、天候がユニークであることも見逃せません。
web CG:ストップ&ゴーが多いということと、高温多湿ということですね。
ベセル:そうです。英国ではブロックごとに赤信号にブツかるようなことはありませんからね。現在、日本車にかつてのような勢いはありませんが、しかし、ひとつのスタンダードをつくったとは言えると思います。そこで成功することは、フォードにとって、プレステイジになることなんです。
日本に住むクルマ好きとしては、ありがたいことである。「フォーカスの他車に対するアドバンテイジは何ですか?」と聞くと、「98年のデビュー以来、すでに120万人からのオーナーが生まれています。T型フォード以来の成功したクルマです」と笑ってから、「安全性、ハンドリングのよさ、そして最適なパワー」とポイントを挙げてくれた。
(収録:2000年10月25日)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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