フォード・フォーカス2.0トレンド(4AT)【試乗記】
抑制がきいて、しかしヴィヴィッド 2002.06.19 試乗記 フォード・フォーカス2.0トレンド(4AT) ……248.0万円 1999年の欧州カーオブザイヤー・カーにして、同年の北米カーオブザイヤーをも獲得したフォード・フォーカス。しかし、日本においては苦戦を続ける。100台の限定モデルにして16インチホイールを履くスポーティ版「2.0トレンド」に、webCG記者が乗った。フォーカス苦戦の理由
2001年度は、フォルクスワーゲン・ゴルフを10万台ほど上まわる約91万7000台を全世界で生産したフォード・フォーカス。欧州のいわゆるCクラスセグメントで、未来指向のデザインとじゃっかん安い価格設定を武器にトップセラーの座を獲得した。リアの左右トレーリングアームを結ぶ簡素なトーションビームが、事実上のスタンダードであるこのクラスにおいて、後ろ脚にもマルチリンク式の独立懸架を奢った足まわり(フロントはマクファーソンストラット)は、ジャーナリスト間での評価も高い。さかのぼって、1999年のヨーロッパ・カーオブザイヤーに輝く。そのうえ、小柄なボディにして、同年の北米でのCOTYカーでもあるのだ!
ところが、わが国では……。
2000年3月から1.6リッターの5ドアハッチとワゴン、同年10月から2リッターモデルが加わった、老舗ゴルフがハッチモデルだけで1万5000台余を売るのに対し、フォーカスは2600台とまるでふるわない。英国から来日したフォーカスのプロダクトプランニング担当プロジェクトマネージャーに聞くと、日本ではこのクラスにおける選択肢が多いうえ、メーカーへのロイヤリティ(忠誠度)が高いのがフォーカス苦戦の理由、と分析する。「まぁ、ゴルフだって、最初からこうだったわけではありませんから。過去からの積み重ねでイマがあるわけで……」とは、フォードジャパンの商品マーケティング担当者。
さて、プジョー206やスバル・インプレッサ、三菱ランサーエボリューションなどと死闘を演じる、コリン・マクレーやカルロス・サインツ駆るフォーカス……といったWRC(世界ラリー選手権)でのイメージがいまひとつ活かされていない同モデルの、日本市場でのスポーティイメージを高めるためにリリースされたのが、2002年5月23日に発表され、6月3日から販売が開始されたフォーカス2.0トレンドである。
ゴルフCLiより1万円安
フォーカス2.0トレンドのボディは、スタンダードモデルと同じ5ドアのみだが、ルーフエンドスポイラーでスポーティに装い、ひとまわり大きな16インチホイールを履く。195/60R15から205/50R16にサイズアップしたタイヤに合わせ、サスペンションは、スプリング、ダンパーとも硬められる。たとえばオーバースピードによるアンダーステア、スロットルオフに起因するオーバーステアなどを、各輪のABSを個別に制御することでニュートラルなラインに戻すアンチスピンデバイス「ESP」(コンチテック製)が搭載されたこともニュースだ。トランスミッションは、4段ATのみ。
本国ではカタログモデルとしてラインナップされるが、日本では100台の限定販売となる。価格は、フォーカス2000Ghiaの229.0万円と比較して、HIDヘッドランプ、電動ガラスサンルーフ、インダッシュ6連奏CDオートチェンジャーなどを追加装備して248.0万円。それでもVWゴルフCLiより1万円安い。
「メトロポリスブルーメタリック」にペイントされた2.0トレンドに乗る。というか、100台限定の(モア)スポーティ・フォーカスのボディカラーはこの色だけ。
「スポーツバケットシート」と謳われるほどにはゴツくないシートに座る。地味な形状だが、よく体にフィットする。しかし、運転席座面前に設置される、L字形でグルグル回すタイプのハイトコントロールは使いにくいゾ(ノーマルは電動)。たすきがけのように向かって左から斜めに落ちてくるダッシュボードの形状はともかく、個人的には、ゾッとしない濁った緑色の木目調センターパネルが、2.0トレンドではシンプルなシルバーになったのがウレシイ。
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とにかく乗っていただく
チルト(上下)&テレスコピック(前後)の調整が可能な革巻きステアリングホイールを握って走りはじめると、16インチ・フォーカスは予想外に(失礼!!)イイ! 心配されたバネ下のドタつきも、ハードに振られたサスゆえの突き上げも、ほとんど、ない。131psと18.2kgmを発生する2リッター“ゼテック”ユニットはキレイに吹け上がり、同じフォードグループのマツダが開発を主導したという4段AT(生産は北米ミシガン州バンタイク工場)とのマッチングも不満ない。
2.0トレンドは、むやみにトガらない、控えめなスポーティバージョンだ。抑制がきいていて、しかし試乗会場となった福島県は磐梯吾妻スカイラインを行くと、活き活きとしたハンドリングが楽しい。つい先日乗ったゴルフXEの、安定指向にしてコントローラブルなシャシーにも感銘を受けたが、フォーカスのそれはずっとヴィヴィッドだ。ステアリングホイールを回すと、「待ってました!」とばかりに、ノーズがインを向く。ESPが無粋な介入することはめったにないから、ドライバーがちょっとしたマクレー気分になることができる。もちろん、なりすぎないことが肝要だ。
フォード・フォーカスは、ドイツ、スペイン、アルゼンチン、メキシコ、北米、そしてこの夏からはロシアでも(!)生産が開始される予定のグローバルカーだ。「ブランドへのロイヤリティが高い日本」においては、「フォーカスをつくるフォード」のイメージがぼやける一因ではあるが、一方、このクルマは、「欧州COTY」や「北米COTY」や「コリン・マクレー」といった単語から縁遠い層がターゲットユーザーでもある。
英国からのマネージャーは、「とにかくお客さまに乗っていただくことが大事」と強調しており、それは正しい。ファーカスは“素”の実用車としてじゅうぶんな実力を有するから、いまさら“ガイシャ”としてある種のバイアスをかけて販売することはないと思う。
(文=webCGアオキ/写真=郡大二郎/2002年6月)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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