ジャガーSタイプ3.0スポーツ(5AT)【試乗記】
『もうひとつの顔』 2000.10.20 試乗記 ジャガーSタイプ3.0スポーツ(5AT) ……685.0万円 ジャガーの販売台数を大きく伸ばした立て役者、Sタイプ。同車を買うような新しい顧客層、つまりより若い人たちの要望は、「スポーティ」。足まわりを硬めたSに、CG編集局長 阪 和明が乗った。CATS標準、足を固めたSタイプ
ジャガーSタイプにスポーティモデルが追加された。Sタイプの日本市場向けの2000年ラインナップは「3.0V6」「3.0V6SE」「4.0V8」の3種だったが、今回新たに仲間入りした「3.0スポーツ」は、中間グレードの3.0 SEをベースに、足まわりが強化されたモデルである。
以前3リッター版にもオプションで用意されていた、ダンパーの減衰力調整および車体姿勢をコンピューター制御するCATS(コンピューター・アクティブ・テクノロジー・サスペンション)と、18インチのホイール/タイヤ、3.0SEにオプション設定のDSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)を標準装備するほか、ダンパーやスプリングも独自の仕様になる。その他、コノリーレザーのスポーツシートや6連装CDオートチェンジャーなども備える。
価格は3.0V6SEより45.0万円高い685.0万円。
すべてがしなやか
「スポーツ」とSEとの外観上の違いは、BBS製大径7本スポークホイールを履くことと、ボディサイドのプロテクトモールがないことくらいで、サスペンションが固められているとはいえ車高が低くなっているわけでもないし、無粋なエアロパーツが付けられているわけもない。「スポーツ」であることの主張は、あくまでさりげない。
けれどサポートのよいシートに身を沈め、走り始めれば、ただの雰囲気重視の「スポーツ」でないことがすぐわかる。鈴鹿サーキットの南コースという、英国の小規模サーキットを思い起こさせる恰好の場所が試乗の舞台だったのだが、ひとつ目のタイトコーナーをクリアした段階で、なかなかスポーティーなサスペンションに仕立てられていることに気付く。
2年ほど前に乗ったSタイプのCATS仕様車は、ただただ固い足のクルマであまりいい印象を持てなかった。今度の3.0スポーツは格段に進歩している。
洗練度を増したというか、スポーツサスペンションのセッティングが巧妙、ダンパー、スプリング、アーム類のすべてがしなやかに動いているようで、スムーズにミニサーキットを駆け抜けられるのである。
ロールはそれほど小さくないのだが、クルマの挙動は常に安定していて、245/40ZR18サイズのピレリP-Zeroは路面を捕らえて離さず、ドライバーにまったく不安を与えない。
DSCをオフにして走れば、大人気なくテイルを降り回すことも可能とはいえ、その滑り出しは唐突ではない。243psを発生する3リッターV6ユニットと5段ATとのマッチングもよく、なかなかどうしてスポーツの名にふさわしい軽快な走りっぷりである。
日本ではラグジュアリーなイメージが強いジャガーであるけれども、スポーツ性能もじつはジャガーのもうひとつの「顔」なのだ。ジャガーSタイプ3.0スポーツはあきらかにドライバーズカーであり、積極的に走ることの好きな人にはお薦めの1台といえるだろう。
もっとも、普通の路面の一般道での乗り心地がどうなのかも気になるところで、そのあたりはあらためてリポートしたいと思う。
(文=CG編集局長 阪 和明/写真=松本高好/テスト日=2000年10月4日)

阪 和明
-
ランボルギーニ・ウルスSE(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.3 ランボルギーニのスーパーSUV「ウルス」が「ウルスSE」へと進化。お化粧直しされたボディーの内部には、新設計のプラグインハイブリッドパワートレインが積まれているのだ。システム最高出力800PSの一端を味わってみた。
-
ダイハツ・ムーヴX(FF/CVT)【試乗記】 2025.9.2 ダイハツ伝統の軽ハイトワゴン「ムーヴ」が、およそ10年ぶりにフルモデルチェンジ。スライドドアの採用が話題となっている新型だが、魅力はそれだけではなかった。約2年の空白期間を経て、全く新しいコンセプトのもとに登場した7代目の仕上がりを報告する。
-
BMW M5ツーリング(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.1 プラグインハイブリッド車に生まれ変わってスーパーカーもかくやのパワーを手にした新型「BMW M5」には、ステーションワゴン版の「M5ツーリング」もラインナップされている。やはりアウトバーンを擁する国はひと味違う。日本の公道で能力の一端を味わってみた。
-
ホンダ・シビック タイプRレーシングブラックパッケージ(FF/6MT)【試乗記】 2025.8.30 いまだ根強い人気を誇る「ホンダ・シビック タイプR」に追加された、「レーシングブラックパッケージ」。待望の黒内装の登場に、かつてタイプRを買いかけたという筆者は何を思うのか? ホンダが誇る、今や希少な“ピュアスポーツ”への複雑な思いを吐露する。
-
BMW 120d Mスポーツ(FF/7AT)【試乗記】 2025.8.29 「BMW 1シリーズ」のラインナップに追加設定された48Vマイルドハイブリッドシステム搭載の「120d Mスポーツ」に試乗。電動化技術をプラスしたディーゼルエンジンと最新のBMWデザインによって、1シリーズはいかなる進化を遂げたのか。
-
NEW
アマゾンが自動車の開発をサポート? 深まるクルマとAIの関係性
2025.9.5デイリーコラムあのアマゾンがAI技術で自動車の開発やサービス提供をサポート? 急速なAIの進化は自動車開発の現場にどのような変化をもたらし、私たちの移動体験をどう変えていくのか? 日本の自動車メーカーの活用例も交えながら、クルマとAIの未来を考察する。 -
NEW
新型「ホンダ・プレリュード」発表イベントの会場から
2025.9.4画像・写真本田技研工業は2025年9月4日、新型「プレリュード」を同年9月5日に発売すると発表した。今回のモデルは6代目にあたり、実に24年ぶりの復活となる。東京・渋谷で行われた発表イベントの様子と車両を写真で紹介する。 -
NEW
新型「ホンダ・プレリュード」の登場で思い出す歴代モデルが駆け抜けた姿と時代
2025.9.4デイリーコラム24年ぶりにホンダの2ドアクーペ「プレリュード」が復活。ベテランカーマニアには懐かしく、Z世代には新鮮なその名前は、元祖デートカーの代名詞でもあった。昭和と平成の自動車史に大いなる足跡を残したプレリュードの歴史を振り返る。 -
NEW
ホンダ・プレリュード プロトタイプ(FF)【試乗記】
2025.9.4試乗記24年の時を経てついに登場した新型「ホンダ・プレリュード」。「シビック タイプR」のシャシーをショートホイールベース化し、そこに自慢の2リッターハイブリッドシステム「e:HEV」を組み合わせた2ドアクーペの走りを、クローズドコースから報告する。 -
第926回:フィアット初の電動三輪多目的車 その客を大切にせよ
2025.9.4マッキナ あらモーダ!ステランティスが新しい電動三輪車「フィアット・トリス」を発表。イタリアでデザインされ、モロッコで生産される新しいモビリティーが狙う、マーケットと顧客とは? イタリア在住の大矢アキオが、地中海の向こう側にある成長市場の重要性を語る。 -
ロータス・エメヤR(後編)
2025.9.4あの多田哲哉の自動車放談長年にわたりトヨタで車両開発に取り組んできた多田哲哉さんをして「あまりにも衝撃的な一台」といわしめる「ロータス・エメヤR」。その存在意義について、ベテランエンジニアが熱く語る。