アウディQ3 2.0TFSI クワトロ 211PS(4WD/7AT)【試乗記】
後発車の強み 2012.05.23 試乗記 アウディQ3 2.0TFSI クワトロ 211PS(4WD/7AT)……547万5000円
SUVの中でも最も熱いプレミアムコンパクト市場に遅れて登場した「アウディQ3」。勢いに乗るライバル車に打ち勝つ魅力はあるのか? 早速その仕上がりを試した。
“後出し”Q3に勝ち目はあるか?
後出しで確実に勝てるのは“じゃんけん”くらいなもので、商売の世界では、必ずしも後出しで勝てるわけじゃない。
アウディがこの「Q3」で挑むのが、プレミアムインポートSUV市場のなかのコンパクトカテゴリー。アウディジャパンによれば、2009年は約7000台だったプレミアムインポートSUVの販売は、2010年には一気に1万台を超え、さらに2011年には1万4000台に増加したという。
販売台数を押し上げたのは、2010年に登場した「BMW X1」だ。2010年が3829台、2011年が5874台と、圧倒的な伸びを見せている。と同時に、プレミアムインポートSUV市場におけるコンパクトカテゴリーのシェアを急激に押し上げているのだ。
このBMW X1の独壇場に、アウディは後出しのQ3でチャレンジする。プレミアムコンパクトSUVという意味では、ひとあし先に参戦した「レンジローバー・イヴォーク」も気になる存在だし、サイズも国籍も違うが購入時には比較検討の対象になる「レクサスRX」も手ごわいライバルだ。そんななか、「シェア2割を目指す」というQ3に勝ち目はあるのか? そのあたりを頭の片隅に置きながら、その仕上がりをチェックするとしよう。
“アバント”とは別の個性
Q3の第一印象は「これじゃあ『Q5』と区別がつかないなぁ」。うっかりすると「A4」と「A6」を見間違えてしまうように、このQ3とQ5も遠目にはよく似ている。少し背の高いボディーに、縦長のシングルフレームグリルや、ボディーサイドに回り込む“ラップアラウンドデザイン”のテールゲートなど、Qシリーズの文法どおりにデザインされたQ3だから、Q5に似ているのは当然といえば当然だ。
一方、「A4アバント」など、ステーションワゴンとは明らかに異なる雰囲気を持つのが、ライバルのX1とは違う部分だ。X1の強みのひとつに、SUVとしては全高が低いおかげでタワーパーキングに収まる点がある。残念ながらこのQ3は大半のタワーパーキングには収まらないが、都会的な雰囲気を手に入れながらアバントとは別の個性を持ち、そのうえSUVらしい存在感をうまく前面に押し出している。
Q3を目の当たりにすると、Q5に比べて明らかにひとまわり小さく、「Q5は無理でもQ3なら運転できそう」と思う人は多いに違いない。そのうえ、Q5に見劣りしない高級感を放っているのだから、“ダウンサイザー”には目が離せない存在だろう。実際、ディーラーのスタッフによれば、Q5のオーナーたちがこのQ3に大いに興味を持っているそうだ。
そんなダウンサイザーにとって魅力的なのがQ3のインテリアだ。ダッシュボードが上下2段に別れるデザインがこのQ3の特徴で、上級モデルに比べてカジュアルな印象を受ける一方、その精緻なつくりはさすがアウディという仕上がりなのだ。もちろんこれはX1に対するアドバンテージになる。
シンプルで見やすいメーターとMMI(マルチメディアインターフェース)のコントロールパネルは「A1」から、空調のコントロールは「A3」からそれぞれ受け継ぐもので、クオリティーや使いやすさはQ5に勝るとも劣らない。
うれしいのは、Q5よりも全長が250mm短いにもかかわらず、後席に大人が乗っても十分なスペースが確保されること。さすがに荷室はありあまるスペースとはいえないが、決して狭いという印象はない。このあたりに弱みを抱えるイヴォークとは対照的だ。
SUVくささのない安定した走り
いざ走りだすと、Q3は1610kgの重量を感じさせない軽快さを見せる。いまやこのクラスのスタンダードともいえる2リッター直噴ターボエンジン、アウディ流にいえば2.0 TFSIは、低回転から充実したトルクを発生し、出足は軽やか。湿式多板クラッチタイプの7段Sトロニックも、スムーズな動きに磨きをかけた印象だ。スピードを上げる場面でも実に力強く、箱根のワインディングロードや新東名の合流でも余裕がある。
注目はQ3の安定した走り。装着される235/50R18のSUV用タイヤはオンロード向けとはいえ、少しザラついた感触をもたらすのだが、乗り心地そのものは至って快適。そのうえ、街中から高速まで動きに落ち着きがあり、フラット感に富むのも実に好ましかった。ワインディングロードでもSUVとしてはロールも小さく、おかげでスポーティーなドライブを楽しむことができた。見た目とは裏腹に、徹底的にSUVくささを排除しているのがQ3なのである。
それでいて、クワトロの採用と少し高めのロードクリアランスにより、多少の悪路なら走破できる安心感がこのQ3にはある。
そんなQ3をひと言で評価すれば、「隙がないクルマ」。もちろん、後発の強みもあるだろうが、魅力的なクルマを世に送り出そうとする意思と、それをきっちりと実現する技術力が、この仕上がりを生み出しているのだろう。
X1にとっては、やっかいなライバルの登場である。
(文=生方聡/写真=荒川正幸)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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