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アウディQ3 35 TFSIアドバンスト(FF/7AT)

漂うエースの風格 2020.10.12 試乗記 河村 康彦 フルモデルチェンジで2代目となったアウディのCセグメントSUV「Q3」。ラインナップの中核をなすと目される「Q3 35 TFSIアドバンスト」を郊外に連れ出し、最新のシャシーやパワーユニットの出来栄え、ユーティリティー性をチェックした。

2つのボディースタイル

2005年秋に発表された初代「Q7」、2008年春に発表された初代「Q5」に続いて、Qの文字とひと桁の数字の組み合わせでネーミングされるアウディSUVラインナップの第3弾となったのが、「Q5」よりもひと回り小さいボディーをまとうことで“アウディ初のプレミアムコンパクトSUV”と銘打ちつつ登場した初代Q3だ。

Q5は北京、それから3年遅れとなったQ3は上海でと、お披露目の場はいずれも中国のモーターショーだった。昨今、さまざまなブランドがこぞってSUVに力を入れているのは、世界最大市場となって久しい中国が「特にこの種のモデルを好む」ということも大きな要因と考えられる。

かくして、もはや「ヒットは確実」という状況下で投入された初代のQ3は、兄貴分であるQ5と共に発売早々にしてQシリーズの中核といえる存在へと成長。ここに紹介するのは、そんな初代での成功をステップに初のフルモデルチェンジを行い、2代目となった新型である。

実は、新たな燃費測定モード(WLTP)への対応などもあって、新型Q3の日本導入は、欧州での発表から2年ほどのタイムラグが生じていた。そうした時間が経過するなか、新たなバリエーションとしていわゆる“クーペSUV”といわれるボディー形状のQ3スポーツバックも登場した。

結果として日本では、2020年8月の導入開始時点で、従来型のイメージを強く残したQ3と前出のQ3スポーツバックという2モデルが同時にデビュー。相乗効果が期待できるという点では“結果オーライ”といえるかもしれない。

新型「アウディQ3」は2018年7月に、「Q3スポーツバック」は2019年7月に本国でデビュー。日本では2020年7月7日に2モデル同時に導入が発表された。
新型「アウディQ3」は2018年7月に、「Q3スポーツバック」は2019年7月に本国でデビュー。日本では2020年7月7日に2モデル同時に導入が発表された。拡大
今回試乗したのは「Q3」の中核モデルといえる「35 TFSIアドバンスト」。リアコンビネーションランプは全モデルLEDで、ヘッドランプと対称になる3本のラインをモチーフとしたデザインが採用されている。
今回試乗したのは「Q3」の中核モデルといえる「35 TFSIアドバンスト」。リアコンビネーションランプは全モデルLEDで、ヘッドランプと対称になる3本のラインをモチーフとしたデザインが採用されている。拡大
デイタイムランニングライトやロー/ハイビーム、ポジショニングライト、スタティックコーナリングライト、オールウェザーライトなどを1ユニット化したLEDヘッドランプを搭載。試乗車に装備されていた、夜間走行の状況に合わせ照射範囲を自動制御する「自動ダイナミックヘッドライトレンジコントロール機能」は、「アシスタンスパッケージ」に含まれるオプション。
デイタイムランニングライトやロー/ハイビーム、ポジショニングライト、スタティックコーナリングライト、オールウェザーライトなどを1ユニット化したLEDヘッドランプを搭載。試乗車に装備されていた、夜間走行の状況に合わせ照射範囲を自動制御する「自動ダイナミックヘッドライトレンジコントロール機能」は、「アシスタンスパッケージ」に含まれるオプション。拡大
オクタゴン(八角形)をデザインモチーフとしたという「Q3」のインテリア。インストゥルメントパネルの形状や基本装備は「Q3スポーツバック」と共通となる。
オクタゴン(八角形)をデザインモチーフとしたという「Q3」のインテリア。インストゥルメントパネルの形状や基本装備は「Q3スポーツバック」と共通となる。拡大
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身近に感じるサイズと価格設定

よりスタイリッシュであることを売り物とする新バリエーションの追加を見越して開発されたゆえか、Q3のスタイリングは「従来型のイメージを強く踏襲した、正統的なSUVルック」という雰囲気が強い。Cピラー部分に小窓を食い込ませる特徴的な処理なども従来型と同様である。「代わり映えしない」とまでは言えないものの、安全策を選んだデザインという印象であることは確かだ。

標準グレードで4490mm、専用デザインのバンパーを採用する「Sライン」で4495mmという全長は、従来型比で100mm近く長い。ホイールベースも75mm長くなった一方で、1840mmの全幅はわずか10mmの拡大にとどめられた。いずれにしても、全長が4.7m近く、全幅も1.9mに達するQ5との間には明確なる差が存在する。5.4mという最小回転半径の値も含めて、日本でも何とか“コンパクトSUV”とアピールできそうなディメンションをキープしている。

さらにそのようなボディーサイズに加え、Q5と比べた場合、より身近に感じるのは、210万円以上も低価格というQ3のスターティングプライスの影響でもありそうだ。

実は現在の日本仕様ラインナップでは、アウディが「クワトロ」とうたう4WDモデルを選択できるのは2リッター直4ディーゼルエンジンとの組み合わせのみ。もちろん、本国にはガソリンエンジンと4WDの組み合わせも存在し、日本でもいずれ選択できる可能性は残しているが、1.5リッター直4ガソリンエンジンはFWDのみという現状が、相対的に全車がクワトロとなるQ5に対する割安感を印象づける結果となっていることは間違いない。

今回テストドライブを行ったのは、ガソリンモデルの「35 TFSIアドバンスト」グレードで、464万円というのがその本体価格である。

もっとも、思わずチョイスしたくなってしまうようなオプションが、多数用意されているのはプレミアムブランドの常。今回のテスト車も、よりハイスペックなADAS(先進運転支援システム)やゴージャスなオーディオ、設定があれば絶対欲しくなりそうなパワーテールゲートなど91万円分ものオプションアイテムを加えることで、結果的には総額550万円を超える仕様となっていた。

「Q3 35 TFSIアドバンスト」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4490×1840×1610mm、ホイールベースは2680mm。全長は先代モデルよりも90mm(「Sライン」は95mm)長い。
「Q3 35 TFSIアドバンスト」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4490×1840×1610mm、ホイールベースは2680mm。全長は先代モデルよりも90mm(「Sライン」は95mm)長い。拡大
「35 TFSIアドバンスト」には最高出力150PS、最大トルク250N・mを発生する1.5リッター直4ターボエンジンが搭載される。ガソリンエンジン車はFWDのみの設定。
「35 TFSIアドバンスト」には最高出力150PS、最大トルク250N・mを発生する1.5リッター直4ターボエンジンが搭載される。ガソリンエンジン車はFWDのみの設定。拡大
トランスミッションは「Sトロニック」と呼ばれる7段DCT。今回の試乗車では、手元でギアチェンジが行えるオプションのシフトパドル付きステアリングホイールが選択されていた。
トランスミッションは「Sトロニック」と呼ばれる7段DCT。今回の試乗車では、手元でギアチェンジが行えるオプションのシフトパドル付きステアリングホイールが選択されていた。拡大
試乗車に装備されていたパーシャルレザー表皮のシートは「ラグジュアリーパッケージ」に、前席のヒーターと電動調整機構は「ベーシックパッケージ」にそれぞれ含まれるオプション。
試乗車に装備されていたパーシャルレザー表皮のシートは「ラグジュアリーパッケージ」に、前席のヒーターと電動調整機構は「ベーシックパッケージ」にそれぞれ含まれるオプション。拡大
後席には、130mmの前後スライド機構と7段階のバックレスト角度調整機構が備わり、多彩なシートアレンジが行える。
後席には、130mmの前後スライド機構と7段階のバックレスト角度調整機構が備わり、多彩なシートアレンジが行える。拡大

計算し尽されたパッケージング

前述のように長さ方向にひと回り成長した新型で感心させられたのは、そうした寸法の変化に加えパッケージングにおいてさまざまな工夫がなされていること。「欧州発のSUVならでは」と言えそうなユーティリティー性の高さもこのモデルの特徴だ。

そもそも後席使用状態でも530リッターと、必要にして十分な容量が確保されているのが新型Q3のラゲッジスペース。さらにリアシートに前後130mmのスライド機構や7段階のリクライニング機構、40:20:40の分割可倒機構が加えられていることで、人と荷物が占有するスペースを巧みに融通させることができるようにもつくられているのだ。

例えば、居住スペースが多少窮屈になることを承知で後席を前方にスライドさせると同時にシートバックを垂直近くにまで立てれば、後席を使用しながらも通常時よりはるかに多くの荷物を積み込むことができるし、シートバックの中央部分を前倒しすれば、4人乗りの状態でスキー板などの長尺物をキャビン内に積載することも可能。もちろん2人乗り状態ならば、リアシートすべてをアレンジし最大1525リッターという広大なラゲッジスペースを生み出すこともできる。

一方、そんなユーティリティー性を手に入れるべくリアシートにスライド機構を加えたことで、ホイールハウスとの干渉を回避するためにリアシート幅がわずかに狭められているのは数少ないマイナスポイント。

もっともそれも、現実には大人3人が横並びにでもならない限りは、ほとんど影響を感じない。すなわち、大人4人であれば長時間の連続移動でも十分なゆとりを味わえるキャビン空間を提供してくれるのが、新型Q3の計算し尽されたパッケージングということだ。

初代「Q3」と同様に、新型でも6ライトウィンドウを採用。これは「Q7」や「Q5」といったアウディの上級SUVモデルとも共通の意匠となる。
初代「Q3」と同様に、新型でも6ライトウィンドウを採用。これは「Q7」や「Q5」といったアウディの上級SUVモデルとも共通の意匠となる。拡大
「Q3」の荷室容量は、5人乗車の通常使用時で530リッター。荷室の床下にはパンク修理キットや工具、けん引用フックなどが整然と収められている。
「Q3」の荷室容量は、5人乗車の通常使用時で530リッター。荷室の床下にはパンク修理キットや工具、けん引用フックなどが整然と収められている。拡大
後席シートバックをすべて前方に倒した様子。この状態での荷室容量は1525リッターとなる。試乗車に装備されていた、足の動きで作動する「オートマチックテールゲート」は「ベーシックパッケージ」に含まれるオプション装備。
後席シートバックをすべて前方に倒した様子。この状態での荷室容量は1525リッターとなる。試乗車に装備されていた、足の動きで作動する「オートマチックテールゲート」は「ベーシックパッケージ」に含まれるオプション装備。拡大
往年の「アウディ・クワトロ」をモチーフにしたというブリスター形状の前後フェンダーを採用。バンパー下部に用いられるシルバーの加飾は、「アドバンスト」グレードの専用アイテムとなる。
往年の「アウディ・クワトロ」をモチーフにしたというブリスター形状の前後フェンダーを採用。バンパー下部に用いられるシルバーの加飾は、「アドバンスト」グレードの専用アイテムとなる。拡大

想像以上に軽快でスポーティー

アウディ車ならではといえる上質さとモダンなデザインを兼ね備えたキャビン空間に身を委ね、早速走り始める。と、蹴り出しの瞬間からその加速感は思った以上に軽快だ。

ディーゼルエンジンに4WDシャシーを組み合わせたクワトロに比べれば、車両重量は170kgも軽い。しかも、1.5リッターのガソリンエンジンは、実はその最大トルク値を1500rpmからとディーゼルユニット以上に低い領域から発生させる。加速が軽快なのも「むべなるかな」なのである。

主にエンジン違いがもたらすと思われる前輪荷重の差もあってか、以前テストドライブを行った可変ステアリングギア比を用いる「プログレッシブステアリング」システム搭載のディーゼルモデル「Q3スポーツバック35 TDIクワトロSライン」に対しても、ハンドリングの軽快感はこちらのほうが上。フットワークテイストも同様で、スポーツサスペンションと、より大径の19インチシューズを組み合わせたSラインよりもしなやかで好印象だった。

結果として、「見た目から想像する以上に走りは軽快でスポーティー」というのが、新型Q3のガソリンFWD仕様の評価である。

185mmもの最低地上高があればFWDであっても問題ナシとする声もあれば、もちろんこの先には「ガソリンモデルにもクワトロを設定してほしい」という要望も出てきそうだ。逆に、「高いオフロード性能は必要としないので、ディーゼルのFWD仕様を待っている」というユーザー予備軍も少なくはないだろう。

前述した通りいずれも本国ではすでに存在している仕様だけに、“ないものねだり”には該当しない。そんな将来的な発展性や、同時デビューのスポーツバックのスタイリッシュなデザインの魅力なども踏まえれば、「今後のアウディラインナップにおいて主役となり得るポテンシャルを秘めている」と実感させる新型Q3シリーズなのである。

(文=河村康彦/写真=花村英典/編集=櫻井健一)

全車ディーゼルエンジン仕様となる4WDの「クワトロ」よりも170kg軽量に仕上げられたガソリンエンジンのFF車。走行シチュエーションにかかわらず、軽快な加速感が味わえた。
全車ディーゼルエンジン仕様となる4WDの「クワトロ」よりも170kg軽量に仕上げられたガソリンエンジンのFF車。走行シチュエーションにかかわらず、軽快な加速感が味わえた。拡大
試乗車は235/55R18サイズの「ブリヂストン・アレンザ001」タイヤを装着していた。「35 TFSIアドバンスト」には18インチサイズの「5アームデザイン」アルミホイールが標準装備される。
試乗車は235/55R18サイズの「ブリヂストン・アレンザ001」タイヤを装着していた。「35 TFSIアドバンスト」には18インチサイズの「5アームデザイン」アルミホイールが標準装備される。拡大
10.25インチの液晶ディスプレイを用いたデジタルメータークラスター「アウディバーチャルコックピット」を全車に標準装備。通常の速度/エンジン回転計(写真)のほか、ナビ画面を全面に映し出すなど表示を任意に切り替えられる。
10.25インチの液晶ディスプレイを用いたデジタルメータークラスター「アウディバーチャルコックピット」を全車に標準装備。通常の速度/エンジン回転計(写真)のほか、ナビ画面を全面に映し出すなど表示を任意に切り替えられる。拡大
ステアリングコラムに備わるACCの操作レバー。ACCは「アダプティブクルーズアシスト」(オプション)に含まれる機能で、アクティブレーンアシストと協調して作動する。
ステアリングコラムに備わるACCの操作レバー。ACCは「アダプティブクルーズアシスト」(オプション)に含まれる機能で、アクティブレーンアシストと協調して作動する。拡大
「Q3 35 TFSIアドバンスト」の燃費値はWLTCモードで14.2km/リッター。今回の試乗では281.7km走行し、満タン法で12.5km/リッターを記録した。
「Q3 35 TFSIアドバンスト」の燃費値はWLTCモードで14.2km/リッター。今回の試乗では281.7km走行し、満タン法で12.5km/リッターを記録した。拡大

テスト車のデータ

アウディQ3 35 TFSIアドバンスト

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4490×1840×1610mm
ホイールベース:2680mm
車重:1530kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ  ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:150PS(110kW)/5000-6000rpm
最大トルク:250N・m(25.5kgf・m)/1500-3500rpm
タイヤ:(前)235/55R18 100V/(後)235/55R18 100V(ブリヂストン・アレンザ001)
燃費:14.2km/リッター(WLTCモード)
価格:464万円/テスト車=555万円
オプション装備:ボディーカラー<タンゴレッドメタリック>(8万円)/ステアリングホイール3本スポークレザー マルチファンクションパドルシフト(3万円)/Bang & Olufsen 3Dサウンドシステム(13万円)/アシスタンスパッケージ<アダプティブクルーズアシスト+エマージェンシーアシスト+ハイビームアシスト+サイドアシスト+リアクロストラフィックアシスト>(12万円)/テクノロジーパッケージ<スマートフォンインターフェイス+ワイヤレスチャージング>(12万円)/ラグジュアリーパッケージ<パーシャルレザー+マルチカラーアンビエントライティング+リアアームレスト+ドアアームレストアーティフィシャルレザー>(16万円)/ベーシックパッケージ<フロントシートヒーター+フロントシート電動調整機能+オートマチックテールゲート+アウディホールドアシスト+フロント4wayランバーサポート+アウディドライブセレクト>(27万円)

テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:1576km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(5)/山岳路(1)
テスト距離:281.7km
使用燃料:22.6リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:12.5km/リッター(満タン法)/13.4km/リッター(車載燃費計計測値)

アウディQ3 35 TFSIアドバンスト
アウディQ3 35 TFSIアドバンスト拡大
 
アウディQ3 35 TFSIアドバンスト(FF/7AT)【試乗記】の画像拡大
河村 康彦

河村 康彦

フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。

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