トヨタ・アルファードハイブリッドG(4WD/CVT)【ブリーフテスト】
トヨタ・アルファードハイブリッドG(4WD/CVT) 2012.04.16 試乗記 ……568万2050円総合評価……★★★
トヨタの“威風堂々ミニバン”「アルファード」にハイブリッドモデルが登場。その走りや乗り心地を、項目別にチェックした。
期待高まるエコ・ミニバン
政治家や芸能人が、高級セダンではなくミニバンで移動するシーンを見ることが、多くなった。セダンにこだわるヨーロッパとも、SUVが幅を利かせるアメリカとも違う。日本が“ミニバン王国”であることを、あらためて教えられる。
悪い傾向だとは思っていない。むしろ日本のクルマ文化の反映だと好意的に受け止めている。
しかし、従来はそういう用途にふさわしい車両がなかった。主として都市内を短距離走行するために、大排気量のガソリンエンジンを回すのは、時代にそぐわない。過給機付き1.4リッターにアイドリングストップ機構を組み合わせた「フォルクスワーゲン・シャラン」のほうが、輸入車なのに適役ではないかと思ってしまう。
「トヨタ・アルファード」のハイブリッド版が、現行型へのモデルチェンジと同時にいったんは消滅しながら、2011年11月のマイナーチェンジで復活したのは、こうした事情が関係しているのではないかと思っている。
ならばと、その最新型「アルファードハイブリッド」を箱根での取材に使いつつ、都内の移動にも活用して、燃費を含めた諸性能をチェックした。
結果については次ページ以降を見ていただくとして、個人的には、VIPの都市内移動に特化した専用車両の登場を望みたくなった。
ニューヨークのタクシーやロンドンの新型2階建てバスを見れば分かるように、世界の大都市はアーバンモビリティーデザインに注力している。それに匹敵する乗り物を、日本が得意とするミニバンというジャンルで実現してほしい。この国のデザイン能力を結集すれば、不可能ではないと思っている。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「アルファードハイブリッド」は、2008年5月に発売された、トヨタの“トップ・オブ・ミニバン”である「アルファード」のハイブリッドバージョン。先代「アルファード」シリーズには存在したものの、現行型へのモデルチェンジと同時にカタログ落ちし、2011年11月に3年半ぶりの“復活”を果たした。
クルマとしての基本構成はガソリンエンジン車の「アルファード」に準ずるが、パワートレインは「エスティマハイブリッド」と同じ「THSII」、すなわち、2.4リッター直列4気筒エンジンに前後2個のモーターを組み合わせた4WDシステムが与えられる。エンジンとフロントモーターを協調制御することで低燃費を実現しながら、必要に応じてリアモーターを駆動。さらなる駆動力と操縦安定性を確保するという。
バッテリーはニッケル水素タイプで、モーターのみでの走行(EV走行)も可能。燃費は、10・15モード燃費で19.0km/リッター、JC08モードで17.0km/リッターを達成する。
また乗車定員については、「アルファード」では2+2+3の7人乗りと2+3+3の8人乗りが選べるが、「アルファードハイブリッド」は7人乗りのみとなる。
(グレード概要)
テスト車のグレード「G」は、「アルファードハイブリッド」のなかで中間に位置するグレード。エントリーグレードの「X」とは異なり、「デュアルパワースライドドア」「AFS付きディスチャージヘッドランプ」「運転席8ウェイパワーシート」「助手席パワーオットマン」などの装備が標準で備わる。カタログ上は、さらに上級とされるグレード「SR」が存在する。
【車内&荷室】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
ガソリン車との最大の違いは、運転席と助手席との間にバッテリーが収まった結果、センターコンソールが増設されたことだ。そのためウオークスルーは不可能になったが、インストゥルメントパネルからセンターコンソールにかけてのデザインは、あとから付け足したとは思えぬほど自然にまとまっている。メーターパネルでは、タコメーターの位置にチャージ/パワーメーターが置かれるのが特徴だ。内装材の質感や色調は、「クラウンのロイヤルサルーン」に似ている。トヨタの最上級ミニバンであることを考えれば、もう少し頑張ってほしいところだ。
(前席)……★★★★
シートサイズは大きめで、ふっかりした座り心地を持つ。形状も適切で、1〜2時間程度のドライブではまったく疲れなかった。サイドサポートがおだやかなのは、クルマの性格を考えれば納得できる。多彩な調節機構を持つので、ドライビングポジションに不満を覚える人はいないだろう。高めの着座位置がもたらす見晴らしの良さは、病み付きになる人もいるだろう。ボディー側面が平面に近いので、大柄な車体でありながら、車両の見切りは良好だった。
(2列目シート)……★★★★
テスト車は7人乗りなので、2列目はキャプテンシートになる。スペースは十分すぎるほどで、最後方までスライドさせると、身長170cmの僕なら足が前にまっすぐ伸ばせるほどだ。シートベルトはシート内蔵タイプなので、オットマンを使うようなくつろいだ姿勢を取っても、ベルトのフィット感に不満はなかった。乗り心地はおおむね前席と同じだが、荒れた路面ではリアサスペンションからのゴツゴツ感が気になることもある。
(3列目シート)……★★
空間そのものは、身長170cmの人間にとって余裕たっぷりだ。ただし座面の傾きが不足気味であるうえに、走りだすと乗り心地やロードノイズの面で、前2列より明らかに劣る。2トンを超える重量級の車体を簡便なトーションビーム式リアサスペンションで支えることの、限界が出てしまっているのかもしれない。
(荷室)……★★
ガソリン車と共通の低いフロアを目にすると、バッテリーを前席間のコンソールに収めたパッケージングの美点が理解できる。ただし3列目を起こした状態では奥行きはミニマム。両側面に手で跳ね上げる方式の折り畳み方法も、古さを感じる。フロアが少し高くなってもいいから、電動で床下に格納する方式のほうが喜ばれるのではないだろうか。
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【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
ハイブリッドシステムは、「エスティマハイブリッド」と基本的に共通だ。しかし遮音材をおごってあるためか、それよりも静かで、なめらかに走る。加速性能も不満なし。これならたしかにV6はいらないと思った。エンジン始動時の音や振動も気づかないほど抑え込まれている。気になる燃費は、3名乗車で東京〜箱根を往復したときが10.2km/リッター、都内を1名乗車で移動した際が13.0km/リッターだった。トヨタのハイブリッドシステムが街中で真価を発揮するタイプであることを再確認した。以前、高速道路メインの試乗で11.7km/リッターをマークした「フォルクスワーゲン・シャラン」とは対照的だ。VIPの都市内移動には適した性能と言えるだろう。
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(乗り心地+ハンドリング)……★★★
乗り心地は街中ではややゴツゴツするが、速度を上げるとむしろソフトに感じられる。高速道路でも完全にフラットにはならず、ゆったりした上下動を伴いながら進んでいく。安楽という言葉がピッタリで、かつての「クラウン」を思わせる感触だった。それでいてステアリングは重めで、車格を考えるとクイックだが、コーナーでアクセルを閉じると揺り戻しに見舞われるなど、無理は禁物だ。2140kgもある車体に対し、タイヤサイズが215/65R16にすぎないのだから仕方がない。都市内移動に徹した足と言えるかもしれない。
(写真=河野敦樹)
【テストデータ】
報告者:森口将之
テスト日:2012年2月22日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2012年
テスト車の走行距離:3380km
タイヤ:(前)215/65R16(後)同じ(いずれも、トーヨー・トランパスR30)
オプション装備:ボディーカラー<ホワイトパールクリスタルシャイン>(3万1500円)/プリクラッシュセーフティシステム+レーダークルーズコントロール+レーンキーピングアシスト(32万8650円)/パノラミックビューモニター(10万5000円)/パワーバックドア(5万2500円)/ツインムーンルーフ(11万250円)/G-BOOK mx Pro専用DCM(6万6150円)/HDDナビゲーションシステム&トヨタプレミアムサウンドシステム(58万8000円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(7):山岳路(1)
テスト距離:255.2km
使用燃料:27.5リッター
参考燃費:9.3km/リッター

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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