トヨタ・アルファード スペーシャスラウンジ プラグインハイブリッド(4WD/CVT)
新種の都市移動体 2025.07.02 試乗記 後席の定員をぜいたくにも2人としたショーファードリブン仕様「トヨタ・アルファード スペーシャスラウンジ」のPHEVに試乗し、ドライバーと後席ゲストの立場で味わったそれぞれの印象を報告。さらに、同じ後席2人乗り仕様である「レクサスLM」とのちがいも確かめた。コンセプトカーをほぼそのまま市販化
2024年末のアルファードと「ヴェルファイア」(以下、アルヴェル)の一部改良に合わせて、注目のバリエーションが2つ追加された。
ひとつはプラグインハイブリッド車(PHEV)だ。2.5リッター直4エンジン、メインのフロントモーターと4WD用のリアモーター、18.1kWhという総電力量のリチウムイオン電池といったパワートレイン構成は、出力やトルクともども「クラウン スポーツ」や「クラウン エステート」と共通である。もっとも、「メインは都市部での移動、待機時間も長い」といったVIPの移動用途に照らすと、アルヴェルでこそPHEVのメリットは大きい。
もうひとつはアルファードに用意されたスペーシャスラウンジである。通常は2列4~6人用の座席が置かれる間に超豪華な2席だけを配置したショーファードリブン特化型のバリエーションだ。そのアイデアが最初に披露されたのは、アルヴェルを製造するトヨタ車体が2023年のジャパンモビリティショーに出展したコンセプトカーである。トヨタ車体は、厳密にはトヨタとは別会社だが、今やアルヴェルの企画開発も担当した「CVカンパニー」にはトヨタ車体も深く組み込まれている。
ショー当時は「反響やニーズがあれば市販化も検討」としていたが、最大の売りである後席形状をはじめ、ウルトラスエードの天井、ハンガー、カーテン、後席足もとにあつらえられたトレーや冷蔵庫……まで、コンセプト時点ですべて備わっていた。また「市販するなら持ち込み登録を想定」という販売手法までが、当時から言及されていた(実際にそうなった)から、すでに発売は確定していたのだろう。あれからほぼ唯一といえる変更点は、ベース車両がアルファードになったことだ。ご記憶の向きもあるかもしれないが、ショーに展示されたコンセプトはヴェルファイアだった。
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レクサスLMとのちがいは?
もっとも、このクルマを見て想起せざるを得ないのが、同様のシートレイアウトをもつレクサスの「LM500h(の“エグゼクティブ”)」である。ただ、近年はトヨタの人に「レクサスはこうなっていますね」と話を振っても、回答は基本的に「知りません」である。それはトヨタとレクサスを逆にしても同じだ。
現在のトヨタとレクサスは社内別会社のような組織体系とはいえ、同じ会社なのだから、実際にまったく知らないわけではないだろう。いっぽうで、各商品の企画開発チームは独立しており、ましてトヨタとレクサスであれば組織は別物。事情通によると「トヨタとレクサスは敵対関係ではないが、とくに国内では互いが最大のライバル。外部が思うほどツーカーの間柄でもない」というのが実態のようだ。
LM500h“エグゼクティブ”のリアシート同様、スペーシャスラウンジのそれもスライド機構はなく固定式である。もっとも、シートやアームレストの形状は異なり、左右一体のLMに対して、スペーシャスラウンジは左右で独立したカタチになっている。このように両車のシートはあくまで別物というあつかいだ。
いっぽうで、技術的なことは公開されていないが、どちらも大きく倒れるリクライニング機構や伸縮式電動オットマン、足もとの空調用「フットダクト」など、シートの基本構造はおそらく共通と思われる。また、スライドドア開口部と後席の関係を見ると、固定されている位置も同じっぽい。
トヨタとレクサスの商品の企画開発チームは別物とはいえ、車体設計やパワートレイン、安全装備などの要素技術の開発担当部署は、当然だが重なっている。商品開発は別々でも、こんなところはつくり分けるほうが逆に無駄ということだろう。ちなみに、生産拠点は、アルヴェルが前記のとおりトヨタ車体のいなべ工場、LMはトヨタの田原工場である。
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印象的なフラット感
スペーシャスラウンジは普通のハイブリッド(の「E-Four」)でも選べるが、試乗車はPHEVだった。まずは運転手として走らせる。感心するのは、運転席を含めた室内空間設計に、PHEV化の影響がほぼないことだ。駆動用電池も床下にきれいにおさまっているので、センターアームレストを引き上げてみても、大容量コンソールボックスもそのままだ。
パワートレインモードもお約束の選択肢があるが、通常モードといえる「オートHV/EV」を選んでも、電池残量があるかぎり、フルに近い加速以外ではエンジンは始動しない。優秀なショーファー運転手を気取って上品な加減速に終始させれば、高速道でも100km/h超までEV状態を普通にキープする。いかんせんリアシートが巨大なので、中央のバックミラー(の通常モード)では視界が約半分も蹴られてしまう。ただし、そもそもアルヴェルは「デジタルインナーミラー」が全車標準なので、まあ困ることはない。
アルヴェルのPHEVは、車重がほぼ2.5tのスーパーヘビー級だが、少なくとも今回の試乗では、重さによるデメリットより、床下電池による低重心化のメリットが上回っているように感じられた。動力性能は通常のハイブリッドよりパワフルだし、街なかから高速、あるいはワインディングロードにいたるまで、ぴたりと重厚でゆったり安定したフラット感は、これまで体験したどのアルヴェルより好印象だった。荒れたワインディングロードではさすがに振動が増えるが、無粋な低級音を上げることもない。昨今のトヨタ車の例にもれず、直進性も高い。
もっとも、このクルマを運転するため(だけ)に入手するユーザーはほぼいないはずだ。そこで、編集担当氏をショーファーに見立てて、筆者は本来のオーナーの居場所である後席におさまる。あらためてナッパレザーのソフトな肌ざわりが心地よい。LMのそれよりシートバックは大型化されて、ヘッドレストにスピーカーが組み込まれるのは、スペーシャスラウンジ独自の部分である。
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後席で快適に過ごすコツは?
巨大モニター付きのパーティションが取り払われているのがレクサスLMとの大きなちがいだが、いずれにしても「こんなに広くなくても……」と思ってしまうほど、レッグルームというか、後席前方の空間はだだっ広い。後席に腰かけたままではパワーウィンドウやサンシェード、スライドなどドアに備わる電動スイッチに手が届かないので、頭上コンソールにも同じスイッチが用意される「おもてなし集中スイッチ」は必須アイテムである。
スペーシャスラウンジの後席の乗り心地は、アルヴェルでベストとはいわない。シートそのもの座り心地、細かい突き上げの丸さ、静粛性はさすがだが、路面の明確な凹凸やうねりでは、どうしても大きく上下してしまうのだ。
その理由はおそらく、後輪のほぼ真上(ヒップポイントだけでいえば、ややリアにオーバーハングしている)というシート位置の影響だろう。クルマの乗り心地とは、やはりホイールベース(のできれば中央寄り)に座るのが、本質的に快適になる。なので、動的な乗り心地では3列仕様(の2列目)のほうが快適なシーンが大半である。これはLMの開発陣にうかがったことだが、このリアシートの固定位置は乗り心地への配慮ではなく、リクライニングとオットマンをフラットにできる位置……という理由で決められたそうだ。
繰り返すが、市街地を低速ではいずるような走りでは快適性に不足はない。ただ、高速やワインディングロードに乗り入れたら、シートバックは寝かせ気味にして、あまり前を凝視せず上下動を感じにくくするのが、スペーシャスラウンジの後席で快適に過ごすコツと思われる。
前席との間にパーティションのないスペーシャスラウンジの後席でもうひとつ気づいたのが、車体剛性の高さだ。通常、こうしたバス型のクルマで室内の後端から運転席を見ていると、自分と運転手の位相ズレ≒車体のねじれを無意識に感じ取ってしまうことも少なくないが、今回はそんな兆候はまったくなかった。なるほど、少なくとも低速では感心できる乗り心地を、電子制御ダンパーも使わずに実現できている背景には、高い車体剛性がかなり貢献しているとみて間違いないと思う。
(文=佐野弘宗/写真=佐藤靖彦/編集=櫻井健一/車両協力=トヨタ自動車)
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テスト車のデータ
トヨタ・アルファード スペーシャスラウンジ プラグインハイブリッド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4995×1850×1945mm
ホイールベース:3000mm
車重:2490kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:177PS(130kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:219N・m(22.3kgf・m)/3600rpm
フロントモーター最高出力:182PS(134kW)
フロントモーター最大トルク:270N・m(27.5kgf・m)
リアモーター最高出力:54PS(40kW)
リアモーター最大トルク:121N・m(12.3kgf・m)
システム最高出力:306PS(225kW)
タイヤ:(前)225/55R19 103H XL/(後)225/55R19 103H XL(ダンロップSP SPORT MAXX 060)
燃費:--km/リッター
価格:1480万円/テスト車=1585万2300円
オプション装備:ペイントプロテクションフィルム(95万円)/ユニバーサルステップ<スライドドア左右・メッキ加飾付き>(6万6000円)/ITSコネクト(2万7500円)/充電ケーブル(8800円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:1510km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(4)/山岳路(4)
テスト距離:345.7km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:16.2km/リッター(車載燃費計計測値)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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