マツダ・アテンザセダンXD(FF/6MT)/アテンザセダンXD Lパッケージ(FF/6AT)
新たな流れの始まり 2013.05.08 試乗記 好調なセールスが伝えられる、3代目「マツダ・アテンザ」。その走りっぷりを、九州・鹿児島のワインディングロードで確かめた。 ![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
大きくてハンサム
鹿児島で「マツダ・アテンザ」のプレス試乗会が開かれた。国内での発売から約3カ月で1万2000台。目標台数の4倍ものセールスを記録したことを受け、アテンザの良さをダメ押し、否、再確認してもらうための、いわば“アンコール”試乗会である。
鹿児島空港そばの駐車場には、セダン、ワゴン、2リッター直4ガソリン、2.5リッター直4ガソリン、2.2リッターディーゼルターボの6ATと6MT――さまざまなアテンザが用意された。
アテンザワゴンもスポーティーでいいが、ことにセダンはハンサムなクルマだ。デザインオリジンは、ご存じの通り、2011年の東京モーターショーで披露されたコンセプトモデル「雄(TAKERI)」。
りゅうとした二枚目なルックスはカッコいいが、車両寸法は、全長4860mm、全幅1840mmと意外に大きい。特に「トヨタ・クラウン」をしのぐ幅の広さは、例えば東京都内の古い住宅地では、少々持てあます。このボディーサイズについて、マツダの開発関係者から、「デザイナーにのびのびと仕事をしてもらったため」という趣旨の説明を受けたが、実際は、主戦場たる中国、北米市場をにらんだ結果だろう。マツダのデザイン陣は、むしろ「この大きさにして、よくぞ間延びさせなかった」と称賛されるべきだ。
さて、今回の試乗コースは、「指宿スカイライン」こと鹿児島県道17号指宿鹿児島インター線。プレス試乗会でよく使われる場所で、適度なアップダウンと気持ちのよいカーブが続く、素晴らしい道である。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
嫌みのないスポーティーさ
今回の試乗車中、「コレだ!」と思ったのが、ディーゼルのオートマ車。2.2リッターディーゼルターボと6段ATを組み合わせた、アテンザXDである。ノーマルより2インチアップの「225/45R19」という薄く大きなタイヤを履いたテスト車で、これがまあ、ハンドリングがいいこと!
ステアリングを切ると、アテンザは、穏やかにボディーを傾けながら素直に曲がっていく。ハンドル操作に対するクルマの反応が、過敏に過ぎず、にぶ過ぎず。運転者をむやみに緊張させず、胸のすくコーナリングを見せる。嫌みのないスポーティーさ。4輪をしっかりと地面に押しつけながら、リニアな走行感覚をもって、次々とカーブをこなす。
助手席の『webCG』スタッフは、桜島が見えないことをしきりに残念がっていたが、ハンドルを握る運転者は馬耳東風。アテンザディーゼルのドライブに没頭していた。
XDに搭載される2.2リッターディーゼル(175ps、42.8kgm)は、NOx(窒素酸化物)やパティキュレート(粒子状物質)の発生を嫌って、14.0:1という、ディーゼルにしては低い圧縮比を採るのが特徴。従来の高圧縮型のディーゼルユニットと比較すると、ブロックを軽量化できるメリットがある。また、燃料噴射を精緻に制御できるコモンレール式直噴機構を採用し、総体として効率を上げたユニットである。カタログには、セダンのAT車で20.0km/リッター、MT車で22.4km/リッターの燃費(JC08モード)が記載される。
ディーゼル人気に納得
アテンザXDがドライバーを夢中にさせるのが、新世代のパワープラントらしい、ディーゼルばなれしたレスポンスのよさ。アクセルペダルを踏むと同時に繰り出されるパンチ力である。最大トルクの42.8kgmを、わずか2000rpmで発生。力強くクルマを引っ張ってくれる。
軽いディーゼル音を発しながら回る2.2リッターターボは、冷静に観察すると、さほど回りたがるエンジンではないし、フルスケールで回しても、アクセルを踏んだ瞬間の、当初のイメージほどは速くない。けれども、小刻みな緩急を繰り返す一般道では、最初の瞬発力こそが大事である。瞬時に湧き出る野太いトルクが、十二分に速い感覚を運転者に与えてくれる。
トランスミッションは、6段ATと6段MTから選べるが、「クラッチペダルを踏んでのギアチェンジ」という行為そのものを楽しむのでなければ、3ペダル式のマニュアルを選ぶ理由は見つからない。堪能する回転域が狭いディーゼルユニットゆえ、トルコン式のオートマでも、アテンザディーゼルのスポーティーさはまったくスポイルされない。
販売開始直後の、アテンザのディーゼル比率は、8割(!)に達するほどだという。
2.2リッターディーゼルのカタログ燃費が20.0km/リッター、2.5リッターガソリン(188ps、25.5kgm)は15.6km/リッター。ガソリン、軽油の価格差を20円/リッター。年間1万km走るとして計算すると、ディーゼル車を購入することによる燃料代の軽減は、3万円程度。「XD Lパッケージ」が340万円、「25S Lパッケージ」が300万円だから、“元を取る”には10年余りかかることになる。それでも、「どちらにしますか?」と聞かれたら、ちゅうちょなくディーゼルを選ぶだろう。クルマと過ごす時間を、より楽しくしたいから。
何かが流行(はや)り始めると、「右へ倣え!」の感がある日本市場。ハイブリッドに続いて、ディーゼルの風が吹くのでありましょうか?
(文=青木禎之/写真=峰昌宏)
テスト車のデータ
マツダ・アテンザセダンXD
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4860×1840×1450mm
ホイールベース:2830mm
車重:1490kg
駆動方式:FF
エンジン:2.2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼルターボ
トランスミッション:6段MT
最大出力:175ps(129kW)/4500rpm
最大トルク:42.8kgm(420Nm)/2000rpm
タイヤ:(前)225/55R17(後)225/55R17(ブリヂストンTURANZA T001)
燃費:20.0km/リッター(JC08モード)
価格:305万7500円/テスト車=326万2250円
オプション装備:セーフティーパッケージ1(15万2250円)/セーフティーパッケージ2(5万2500円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(5)/山岳路(4)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
マツダ・アテンザセダンXD Lパッケージ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4860×1840×1450mm
ホイールベース:2830mm
車重:1510kg
駆動方式:FF
エンジン:2.2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼルターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:175ps(129kW)/4500rpm
最大トルク:42.8kgm(420Nm)/2000rpm
タイヤ:(前)225/45R19(後)225/45R19(ブリヂストンTURANZA T001)
燃費:20.0km/リッター(JC08モード)
価格:345万2000円/テスト車=353万6000円
オプション装備:BOSEサウンドシステム+11スピーカー(8万4000円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(5)/山岳路(4)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。