クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック

アウディRS 4アバント(4WD/7AT)

飾らない実力者 2013.06.25 試乗記 下野 康史 アウディのハイパフォーマンスワゴン「RS 4アバント」がモデルチェンジ。さらなるパワーアップを果たした最新型の走りや、いかに?
【webCG】クルマを高く手軽に売りたいですか? 車一括査定サービスのおすすめランキングを紹介!

走る前から別格

「A4」のワゴンボディーに450psの自然吸気4.2リッターV8を載せたのが、新しい「RS 4 アバント」である。RS 4としては3世代目。エンジンは「RS 5」に搭載されているものと基本的に同じだが、2006年に登場した先代RS 4よりさらに30psのパワーアップを果たし、環境性能も進化した。

“A4のワゴンボディー”といっても、新型RS 4アバントの押し出しは相当なものである。日本仕様は、本国だとオプションの20インチホイールが標準装備。265/30ZR20の「ミシュラン・パイロットスポーツ」を収めるホイールハウスはブリスターフェンダーで膨らみ、最低地上高もノーマルの「A4アバント」より20mmローダウンしている。

“RS 4の下”の「S4」は、1年前にA4とともに国内デビューした。当時、アウディ ジャパンでその「S4アバント」を借り、スタートした直後、間違ってA4を借り出してしまったか!? とアセって確認の電話を入れたことがある。それくらい、333psの3リッターV6スーパーチャージャーを積むS4はふだんのマナーがおしとやかだった。
その点、RS 4はさすが“アール”である。鍛造のピストンやクランクシャフトやコンロッドを組み込んだV8エンジンのタダならぬ存在感はアイドリング中でも隠しきれない。そもそもS4と違ってアイドリングストップ機構は付いていない。ドライブセレクトで「ダイナミック」を選ぶと、デュアルエキゾーストシステムのステンレス製テールパイプに内蔵されたフラップが開いて、コクピットに届く排気音は圧力さえ感じさせる重低音に変わる。

RSモデルは、言うまでもなくアウディのトップガンである。日本のオフィシャルサイトではS4とともにA4シリーズの一員だが、ドイツ本国のサイトではRSシリーズとして別格扱いされている。


アウディRS 4アバント(4WD/7AT)【試乗記】の画像 拡大
アルミホイールのサイズは20インチ。比較的軽量な、花弁型のブレーキディスクが組み合わされる。
アルミホイールのサイズは20インチ。比較的軽量な、花弁型のブレーキディスクが組み合わされる。
    拡大
サイドサポートの豊かな、スポーツタイプのフロントシート。表皮は高級レザー「ファインナッパ」で、シートヒーターも与えられる。
サイドサポートの豊かな、スポーツタイプのフロントシート。表皮は高級レザー「ファインナッパ」で、シートヒーターも与えられる。
    拡大

フロントに縦置きされる4.2リッターV8は、先代モデルよりも30ps増しの450psを発生。43.8kgmの最大トルクは値こそ変わらないが、その発生ポイントは5500rpmから4000rpmへと下げられた。


    フロントに縦置きされる4.2リッターV8は、先代モデルよりも30ps増しの450psを発生。43.8kgmの最大トルクは値こそ変わらないが、その発生ポイントは5500rpmから4000rpmへと下げられた。
    拡大
アウディ RS 4アバント の中古車webCG中古車検索

脱いだら本気なアスリート

ガラスサンルーフを装着した試乗車の車重は1880kg。S4アバントより50kg重いが、パワーのアドバンテージは「フォルクスワーゲン・ゴルフ」が1台動く117psである。「脱ぐとスゴイんです」とばかり、踏めばすばらしく速いS4よりさらに速いのは当然だ。メーカー発表の0-100km/h加速は、5秒の壁を破る4.7秒。「M3」や「C63 AMG」と肩を並べる、スーパーカーパフォーマンスのワゴンである。

試乗期間の後半は雨だった。それもかなりの大雨のなか目的地まで急ぐと、RS 4アバントはその真価を見せてくれた。通常時の前後トルク配分は前40:後ろ60。セルフロッキングセンターデフを備える最新バージョンのクワトロシステムは、前輪が滑るとリアに最大85%、後輪が滑るとフロントに最大70%の駆動力を送る。ウエット路面での盤石な安心感は、2WDのライバルでは得られない付加価値である。

クルマの走行キャラクターを変えられる「ドライブセレクト」はアウディおなじみの装備だが、RS 4にはアクセルの“つき”をノロくしたりするエフィシェントモードはない。潔いと思う。一番“らしい”のはもちろんダイナミックモードで、これを選ぶと、エンジンも7段Sトロニックも足まわりもステアリングも、いわばラップタイム追求型に変わる。99本、99時間まで採れるラップタイマーも標準装備だ。
ダイナミックモードの楽しさが最も強く味わえるのはコーナリングである。スポーツディファレンシャルの恩恵で、コーナー脱出時は、後輪がムリムリっと外側にはらみながら路面を蹴る。そのダイナミックさはパワフルなFR車さながらだ。

ハニカム形状のフロントグリルと、両サイドの大きなエアインテークが、走りのパフォーマンスを暗示する。
ハニカム形状のフロントグリルと、両サイドの大きなエアインテークが、走りのパフォーマンスを暗示する。
    拡大
0-100km/h加速の所要時間は、4.7秒。ローンチコントロール機能も備わる。
0-100km/h加速の所要時間は、4.7秒。ローンチコントロール機能も備わる。
    拡大
「アウディドライブセレクト」の画面。ドライバーは、簡単なスイッチ操作で車両の走行モードを変更できる。
「アウディドライブセレクト」の画面。ドライバーは、簡単なスイッチ操作で車両の走行モードを変更できる。
    拡大
ワゴン「RS 4アバント」の荷室容量は490リッター。後席を倒せば、最大1430リッターにまで拡大できる。オプションで「オートマチックテールゲート」も選べる。
ワゴン「RS 4アバント」の荷室容量は490リッター。後席を倒せば、最大1430リッターにまで拡大できる。オプションで「オートマチックテールゲート」も選べる。
    拡大

願わくば、乗り心地も……

ナッパレザーのスポーツシートが備わるキャビンは、上等だが派手ではない。ステアリングホイールに「RS 4」の赤いレタリングが入り、センターコンソールの一部にカーボンパネルが使われることを除くと、トップガンの主張も控えめだ。

トータルで約520kmを走り、燃費は満タン法で6.8km/リッターを記録する。以前乗ったS4アバントは8km/リッター台後半だったから、高性能の大盛りもタダではない。ただ、450psの4.2リッターV8も高速巡航で燃費を巻き返すタイプには違いなく、2100rpmまで下がる7速トップで100km/hクルーズを続けると、車載コンピューターの平均燃費は10km/リッター台まで向上した。

ひとつ気になったのは、乗り心地がS4ほどよくないこと。ダイナミックモードでは我慢もするが、オートやコンフォートでもタイヤの突き上げが消えない。1200万円級のハイエンド・ステーションワゴンなら、乗り心地にもう少し高い洗練度がほしい。

個人的には、0-100km/h=5.1秒のS4だって十分すぎる。3リッターV6スーパーチャージャーの、上までツーンと怜悧(れいり)に回る回転フィールも捨て難いが、世の中には常に最上を求める人がいる。A4のアバントより押し出しは強烈だが、かといって高価と顔に書いてあるような派手さはない。本当のクルマ好きが選ぶぜいたくなワゴンである。

(文=下野康史<かばたやすし>/写真=峰昌宏)

「A4」と共通のデザインは、カーボンのパネルなどで特別感が演出される。ハンドル位置は、左右いずれも選択可能。
「A4」と共通のデザインは、カーボンのパネルなどで特別感が演出される。ハンドル位置は、左右いずれも選択可能。
    拡大

メーターは、オーソドックスな2眼式を採用。回転計のレッドゾーンは、8000rpmを超えたところから始まる。


    メーターは、オーソドックスな2眼式を採用。回転計のレッドゾーンは、8000rpmを超えたところから始まる。
    拡大
分割可倒式のリアシート。中央席にはトランクスルー機構も備わる。
分割可倒式のリアシート。中央席にはトランクスルー機構も備わる。
    拡大
ボディーカラーは、テスト車の「ミサノレッド」を含む全8色が用意される。
ボディーカラーは、テスト車の「ミサノレッド」を含む全8色が用意される。
    拡大

テスト車のデータ

アウディRS 4 アバント

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4720×1850×1435mm
ホイールベース:2810mm
車重:1880kg
駆動方式:4WD
エンジン:4.2リッターV8 DOHC 32バルブ
トランスミッション:7段AT
最高出力:450ps(331kW)/8250rpm
最大トルク:43.8kgm(430Nm)/4000-6000rpm
タイヤ:(前)265/30ZR20/(後)265/30ZR20(ミシュラン・パイロットスポーツ)
燃費:8.0km/リッター(JC08モード)
価格:1195万円/テスト車=1266万円
オプション装備:電動パノラマサンルーフ(24万円)/オートマチックテールゲート(9万円)/アウディサイドアシスト+アクティブレーンアシスト(38万円)

テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:1557km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:516.8km
使用燃料:75.7リッター
参考燃費:6.8km/リッター(満タン法)

下野 康史

下野 康史

自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。

試乗記の新着記事
  • スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
  • ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
  • スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
  • トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
  • BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
試乗記の記事をもっとみる
アウディ RS 4アバント の中古車webCG中古車検索
関連キーワード
関連サービス(価格.com)
新着記事
新着記事をもっとみる
車買取・中古車査定 - 価格.com

メルマガでしか読めないコラムや更新情報、次週の予告などを受け取る。

ご登録いただいた情報は、メールマガジン配信のほか、『webCG』のサービス向上やプロモーション活動などに使い、その他の利用は行いません。

ご登録ありがとうございました。

webCGの最新記事の通知を受け取りませんか?

詳しくはこちら

表示されたお知らせの「許可」または「はい」ボタンを押してください。