メルセデス・ベンツGL63 AMG(4WD/7AT)
頂点のそのまたテッペン 2013.07.23 試乗記 “地上の頂点に立つ”とのキャッチコピーで登場した、メルセデス・ベンツのフルサイズSUV「GLシリーズ」。そのトップモデル「GL63 AMG」の迫力を味わった。“ファーストクラス”かつ“地上の頂点”
初めて「メルセデス・ベンツGLクラス」の実車を前にした人は、まず間違いなく同じ感想を抱くはずだ。
「デッカイなぁ……」
「ML」改め「Mクラス」の上位車種にして、スリーポインテッドスターの大型SUV。全長5145mm、全幅1980mmだから、GLクラスの落とす影に、あのいかつい「Gクラス」がすっぽり入ってしまう計算だ。ただし、全高はGクラスの方が1950mmと、1850mmのGLクラスを凌駕(りょうが)する。“軍用車の民生版”なんて冗談が、マニア間の褒め言葉として使われるGクラスに対し、GLクラスの狙いは「地上の頂点に立つ、ファーストクラスSUV」。そうカタログに書いてある。“ファーストクラス”だけでは飽きたらず、“地上の頂点に立つ”と前に付けちゃうあたり、メルセデスの「どうだあぁぁぁ!」というベタな自慢ぶりが感じられて、ちょっとおかしい。
頂点に立つGLクラスのそのまたテッペンが、「GL63 AMG」である。日本に入るノーマル(!?)GLたる「GL550 4MATIC」が、ツインターボで強力過給される4.7リッターV8を積み、最高出力435ps/5250rpm、最大トルク71.4kgm/1800-3500rpm。すでに「これで何の不満がありましょう?」なアウトプットなのに、AMG仕様は排気量をさらに5.5リッターにアップ。122psも高い最高出力557ps/5250-5750rpmと、6.1kgm太い最大トルク77.5kgm/2000-5000rpmを発生する。車重は2500kgから2620kgに増えているが、63 AMGの強心臓にとっては、吹いて飛ぶような増加でしょう。
ちなみにGL550 4MATICと比較して、カタログ燃費(JC08モード)は、7.9から7.4km/リッターに低下する。ガソリン代を気にするような人は、購入を考えないということか。車両本体価格は、GL550 4MATICが、1290万円。GL63 AMGが1750万円となる。
“デカい方がエライ”が自然界のルール
GL63 AMGとの合流地点へ向かう途中、車内で、『webCG』スタッフとGLクラスについて話していた。「どうせ1000万円超のお金を払うなら、Gクラスの方がイバリが効いていいのでは?」「クルマに興味ない人なら、700万円台のMクラスと間違えちゃうかも……」
ヌッと姿を現したGL63 AMGを前にすると、「Mクラスとの混同はないな」と反省した。“デカい方がエライ”という自然界のルールをそのまま適用した、身もふたもないサイズ感。ちょうど、ロールス・ロイスやベントレーが、3ボックスのシルエットはそのままに、ただボディーを大きくするのと同じ手法である。
もっとも北米のベストセラーにしてフォードの中堅モデル「エクスプローラー」は、5020mmの全長に2000mmの全幅を持つ。SUVの本場アメリカでは、プレミアムブランドといえども、絶対的なサイズがないと過酷な生存競争を戦えないのかもしれない。「シボレー・サバーバン」とか「GMCユーコンXL」といった恐竜が闊歩(かっぽ)している世界だから。
さて、メルセデス・ベンツGL63 AMGが醸す威圧感は、ボディーの大きさだけに頼ったものではない。メッシュを多用したアグレッシブなフロントバンパー、21インチホイールを収めるために張り出された前後のオーバーフェンダー、レースカーを思わせるリアスカート、そうしたAMGならではのパーツが、このクルマのスペシャル感をいや増している。シルバーのサイドステップは、63 AMGでは標準だ。タイヤサイズは、295/40R21。「これはタイヤ代もバカにならない……」と感じる人は、購入を考えないということか。
ドアを開けて運転席へ。高い視点。ガッシリしたぜいたくなつくりの革シート。前を横切るウッドパネルは、渋いブラウンアッシュ。同じマットな素材があしらわれたステアリングホイールを握ると、自分がにわかに偉くなったような気がするので、困る。実際は、ファーストクラスのお客さまを運ぶ、パイロットなわけですが。
大型SUVらしからぬ運動神経
メルセデス・ベンツGLクラスの隠れた(!?)魅力が、3列シートの7人乗り、ということである。セカンドシートは、3:2の分割可倒式。膝前、頭上とも、十二分なスペースが確保されるが、日本車のミニバンのようにダラけた……否、過度にリラックスした雰囲気にならないのは、椅子然としたシートのつくりゆえか。生真面目なジャーマンメーカーの柄にもなく(!?)前席ヘッドレスト背面に液晶画面を設ける「リアエンターテインメントシステム」がオプションで用意されるが、時間つぶしに地上波のバラエティー番組を見る、ではなく、名作劇場を鑑賞するのが正しい使い方だろう。
2列目シートバックレストのボタンを押すと、背もたれが前に倒れた上で、座面ごと前に跳ね上げられる。3列目シートへのイージーエントリーシステムだ。サードシートも手抜きのないもので、3点式シートベルトはもちろん、頼りがいのあるヘッドレストが、乗員の頭部を守ってくれる。座面こそやや低いが、“緊急用”の枠を超えた、大人でも実用的な空間を持つ。GLクラスは、“ピープルムーバー”として使っても、活躍するはずだ。
GL63 AMGのドライブフィールは、まさに重量物を余裕ある動力で動かす感覚そのもので、乗り心地に変換すると、車格相応の重厚感があって大変よろしい。「AIRマティックサスペンション」ことGLクラスのエアサスは、AMG専用のスポーツチューンが施される。コーナリング時にスタイビライザーの利きを自動調整する「ACTIVE CURVEシステム」と相まって、車高の高さを感じさせない、落ち着いたロールで、運転者を安心させる。
いざアクセルペダルを踏み込めば、7段ATが瞬時にギアを落として、怒濤(どとう)の加速を見せる。パドルシフトを駆使して走らせると、エンジンはうなり、ときに見事なブリッピングを披露して、SUVらしからぬ運動神経を発揮する。AMGバージョンは、前後の駆動力配分が5:5から4:6に変更されている。ハンドルを握っていると、次第に大型車に乗っていることを忘れ去り……ということは、しかし、ない。
ハイスペックなエンジンに合わせてブレーキも強化されているが(フロントは6ピストン!)、常に重量物を走らせていることが頭の隅にある。トバすと、小心者には、ちょっとおっかない。「ここまで速くなくとも……」「オフロードモードを使う機会があるのだろうか?」「もしかして、Mクラスで十分?」と、そんなことを考える人は、このクルマの購入を考えない。「最近、Gクラスも増えちゃってさ」とご不満の貴方。きっと、GL63 AMGの潜在オーナーです。
(文=青木禎之/写真=田村弥)
テスト車のデータ
メルセデス・ベンツGL63 AMG
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5145×1980×1850mm
ホイールベース:3075mm
車重:2620kg
駆動方式:4WD
エンジン:5.5リッターV8 DOHC 32バルブターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:557ps(410kW)/5250-5750rpm
最大トルク:77.5kgm(760Nm)/2000-5000rpm
タイヤ:(前)295/40ZR21 111Y/(後)295/40ZR21 111Y (コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5)
燃費:7.4km/リッター(JC08モード)
価格:1750万円/テスト車=1820万円
オプション装備:AMG専用オーディオ&ビジュアルパッケージ(70万円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:3721km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(7)/山岳路(2)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター(満タン法)/--km/リッター(車載燃費計計測値)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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