メルセデス・ベンツGL350ブルーテック4MATIC(4WD/7AT)
佳き時代のメルセデス 2015.07.03 試乗記 クリーンディーゼルエンジンを搭載したメルセデス・ベンツの3列7人乗りSUV「GL350ブルーテック4MATIC」に試乗。同門のSUVである「Mクラス」や「Gクラス」とは違う、このクルマならではの魅力に触れた。「M」や「G」に埋もれがち?
現状の日本市場におけるメルセデスのラインナップで、3列7シーターモデルといえばまず思い浮かぶのは「Vクラス」だろう。しかしこちらはそれなりの目的意識がなければ、パーソナルカーとして選択しづらくもある。
となると、残るは「GLクラス」だ。3列目の着座環境はこの手のクルマのご多分に漏れずオケージョナルながら、大きな図体(ずうたい)を生かして足元空間はそれなりに確保できているので、帰省時に祖父母と連れだって食事に出掛けるというような使い方には、十分に対応できる。普段はそのシートを床下に格納しておくことで、3列目までを大きな荷室として使うこともできるし、さらに2列目まで倒せば、前後長1900mm以上という広いスペースをほぼフラットな状態で用いることも可能だ。ちなみに3列目シートの折り畳みは完全電動式を標準とするなど、GLはメルセデスのSUVらしく快適装備も充実している。
……と、ちょっと説明めいたことを書いてみたのには2つの理由がある。ひとつは間もなく「GLE」と改名する「Mクラス」に対して、GLクラスの機能的差異が広く理解されていなさそうなこと。もうひとつはアイコンたるGクラスに対して、GLクラスのプライオリティーがいまいちであること、だ。いずれも個人的感想というやつだが、あながち的外れな話でもないと思う。
そんなGLクラスに先ごろ追加されたモデルが、350ブルーテック4MATIC。MクラスやGクラスなどにすでに展開しているディーゼルユニットの搭載は既定路線ながら、3列シートの4WDでディーゼルという組み合わせにライバルは少なく、「三菱パジェロ」や「トヨタ・ランドクルーザープラド」といった日本車に限られる。相応にニッチではあるものの、GLクラスの特長が最大限に生かされたグレードとして興味深い。ちなみにお値段ジャスト1000万円と、V8ガソリンモデルの「GL550 4MATIC」より350万円以上も安い。さらに、同じディーゼルを積む「ML350ブルーテック4MATIC」に対しては170万円ほど高いものの、「G350ブルーテック」に対しては若干安く……と価格設定はけっこう絶妙。姿形やタッチにほれてGクラスを求めたくも、どうしても後ろ髪を引かれる好敵手……というのが個人的な印象だ。
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燃費性能に見るディーゼルの恩恵
GLクラスが搭載する3リッターV6ディーゼルは、コモンレール直噴ターボという点でGクラスのそれと同じではあるものの、低圧縮比化を筆頭に中身は別物となっており、出力は47ps高い258ps、トルクは8.1kgm高い63.2kgmを発生する。アイドリングストップ機能も備わるGLクラスでの燃費はJC08モードで11.4km/リッター。一方のGクラスはGLクラスとほぼ変わらない車重にして8.5km/リッターと、その差は歴然。つまり日常遣いでの総合的な効率においては、別物と考えた方がいい。
実際、GL350ブルーテック4MATICは、流れのいい首都高の速い車線でディストロニックプラスに加減速を任せつつ走れば、12km/リッターを軽くオーバーする燃費をマークする。以前、同様の乗り方でG350ブルーテックは10km/リッターに届くかどうかだったことを考えれば、限定的なシチュエーションとはいえ、やはり額面なりの差はあるといえるだろう。それにしても、2.5トンの重量の四駆がこれほどの燃費を記録すると知れば、やはりディーゼルの恩恵はあらたかだ。ちなみにGLクラスの燃料タンク容量は100リッターだから、1000km無給油走は十分現実的な話となる。
5125mmという全長は同門でいえば「Sクラス」とほぼ同等、1935mmという全幅はそれよりさらに大きいのだが、その最小回転半径は5.7mと、さすがのメルセデススペック。高さを除いた市中での取り回しは、Sクラスとさほど変わらないということだ。運転感覚が体になじむのが早い感じがするのは、そのせいかもしれない。乗り始めはそのマスにげんなりするも、10分もたてばサイズを意識することなくスラスラと走らせている。
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Sクラスに比肩する乗り心地
と、ここでSクラスの話が出たところで、GLクラスの最大の美点であるライドフィールが、実は場面によってはランフラットタイヤを標準で履くSクラスより勝っていると言えば驚かれる方もいらっしゃるだろう。確かにそこには、ストロークの長いエアサスを用いて路面との距離が稼げている、つまりロードノイズの遮断や鋭い凹凸の突き上げに柔軟であることや、2.5トンの“物量”によるピッチングの抑えこみといった要素もある。が、それらを差し引いてもGLクラスのフットワークは見事なもので、オンロードでの乗り心地はこのクラスの範である「レンジローバー」にも肉薄するものだ。時にはアジリティーという言葉とは無縁だった頃のメルセデスを思い出させるほどの鷹揚(おうよう)さは、実は“旧き佳き時代”を知る人にこそ味わってもらいたいとも思う。
そして、“旧き佳き時代のメルセデス”といえばGクラスである。購入を決めた少なからぬユーザーは、“精錬”の果てにたどり着いた機能美やドアの開け閉めだけでほれ込む堅牢(けんろう)感に思いをはせてそのクルマを選んだのではないかと思う。対すればGLクラスはマスプロダクションのひとつであり、マーケティングマターでもあるからして、さほどの興味も抱かれないかもしれない。ただし、現実的シチュエーションでのユーティリティーやコンフォートにおいては、GLの方が格段に優れているのも確かである。
ディーゼルというキーワード、その値札でこの両車は期せずして近しいものとなってしまった。「じゃあお前はどっちを選ぶのか」と問われれば迷わずGと答えてしまう変態の自分だが、もし悩める皆さまにアドバイスが届けられるとすれば、歯を食いしばってでも真冬にミニスカとハイヒールをはく娘さんのような根性をクルマ生活で見せたくないのなら、GLクラスをぜひ試してみてくださいということだ。方向性は全く違えど、同等の満足感は得られると思うので。
(文=渡辺敏史/写真=郡大二郎)
テスト車のデータ
メルセデス・ベンツGL350ブルーテック4MATIC
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5125×1935×1850mm
ホイールベース:3075mm
車重:2570kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ ディーゼルターボ
トランスミッション:7段AT
最大出力:258ps(190kW)/3600rpm
最大トルク:63.2kgm(620Nm)/1600-2400rpm
タイヤ:(前)275/50R20 109W(後)275/50R20 109W(ダンロップSP SPORT MAXX)
燃費:11.4km/リッター(JC08モード)
価格:1000万円/テスト車=1071万4000円
オプション装備:レザーエクスクルーシブパッケージ(20インチ5ツインスポークアルミホイール+ステンレス製ランニングボード<ラバースタッド、乗降時LED照明付き>+パノラミックスライディングルーフ<挟み込み防止機能付き>+本革シート<1列目・2列目シートヒーター付き>)+本革巻きウッドステアリング<ナッパレザー>+レザーARTICOインテリア<ダッシュボード、ドア内張り[ステッチ付き]>+パワーベンチレーションウィンドウ<3列目>(71万4000円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:6043km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(6)/山岳路(0)
テスト距離:205.0km
使用燃料:23.0リッター
参考燃費:8.9km/リッター(満タン法)/9.4km/リッター(車載燃費計計測値)
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渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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