フィアット500S(FF/5MT)/アルファ・ロメオ ジュリエッタ クラシカ(FF/6AT)
軽快感は標準装備 2013.08.12 試乗記 真打ち登場!? MT仕様の「チンクエチェント」と、アルファ・ロメオらしくシックに装った「ジュリエッタ」。“ちょっと違って大いに気になる”2台のイタリア車を試した。“伊米”のブランドが大集合
フィアット、アルファ・ロメオ、アバルトのイタリア系各ブランドとクライスラー、ジープのアメリカ系各ブランドによる合同試乗会が開かれた。目的地は長野県の野尻湖。
親会社同士が一緒になったんだから、そりゃそういう企画もあるだろうと思う人もいるかもしれないが、異なるブランドを混ぜ合わせた試乗会は珍しい。
例えばジャガーとランドローバーや、プジョーとシトロエンもインポーターはそれぞれ1社だが、一緒に試乗会は開かない。レクサスとトヨタだってそう。ブランドイメージをきちんとコントロールするのはメーカー/インポーターのいろはの「い」。したがって、通常、彼らはどちらかというとそれぞれの資本やプロダクトの一部が同じだということを、できるだけ匂わせないよう努力する。
それをあえてやったのは、フィアット・クライスラーの場合、はっきりと一方がプレミアムで他方がベーシックというわけではないし、実態は同じモデルの顔違いというわけでもないので、“混ぜるな危険”度が低い。むしろバラエティーに富んだブランド群という見せ方ができると考えたのかもしれない。
というわけで、往路、われわれには「フィアット500」と「アルファ・ロメオ ジュリエッタ」が割り当てられた。東京都港区から289km先の野尻湖へ、いざ出発。
背伸びしない潔さ
フィアット500は2007年発売(日本は08年発売)。かれこれ6年くらいたったが、最初からテクノロジーの新しさを前面に押し出したモデルではないし、姿かたちは飽きる/飽きないの次元ではなく過去の偉大なアイコンそのままだし、次々と特別仕様車を出すので商品性は衰えない。最も新しい仕様がツインエアエンジンと5段マニュアルトランスミッションを組み合わせた「500S」だ。
ポロポロとキャラクタリスティックな音を立てる直列2気筒ターボエンジンは、最高出力85ps/5500rpm、最大トルク14.8kgm/1900rpmと、過給器付きとはいえ875ccにしては立派だが、一般的には控えめなスペックしか持ち合わせていない。にもかかわらず、すいた上信越道で激走というにふさわしい走りを見せてくれた。5速、80km/hからでも踏めばエンジンはレスポンシブに反応する。音だけでなく実際に結構な勢いで速度も増すので、アウトストラーダなら130~140km/hまでストレスなく出せるはずだ。
一方で、センターパネルにエコボタンというのがあって、押すと最高出力77ps/5500rpm、最大トルク10.2kgm/2000rpmまでパワーが絞られる。これだとちょうどターボ付きの軽自動車と同程度のスペックとなるので、車重1010kgの500Sだとつらいかなと思いきや、意外や意外、それなりに走れるので驚いた。多人数乗車ではもっさりするかもしれないが、1~2人乗車なら、街中はエコボタン押しっぱなしでいいんじゃないか。
このクルマの最大の特徴であるマニュアルトランスミッションの操作性は良好。右ハンドル化に際しても3つのペダルのレイアウトは適切で、インパネから生えたシフトレバーもちょうどいいところにある。世の趨勢(すうせい)は完全にATにあり、快適性はもちろん、運動性能も燃費もATのほうが優れているケースが多いが、主体的なギアチェンジによって限られたパワーをうまくコントロールする運転には楽しさがある。「たまにだから楽しいんだよ」という声を否定するつもりはないし、設定されているとしてもすべてのクルマでマニュアルをオススメするつもりはないが、500はマニュアルで乗る価値のあるクルマだろう。
広くはないが狭くもない居住空間。豪華じゃないが貧相でもないインテリア。むちゃくちゃ便利ではないが、特に不便でもない装備。パワフルじゃないが不足もなく、JC08モード26.6km/リッターと燃費のよいエンジン。そして安楽じゃないが楽しいマニュアルトランスミッションと、500Sには価格に見合った、背伸びしないことによる潔さ、気持ちよさが盛り込まれている。
由緒正しき「ジュリエッタ」
途中、軽井沢で乗り換えたジュリエッタは、「スプリント」をベースにいくつかの特別な装備が盛り込まれた「クラシカ」というモデル。要望の多かったナチュラル(タン)のレザーシートが装備上の最大の売り。エンジンは1.4リッター直4ターボ。6段デュアルクラッチ・トランスミッションと組み合わせられる。足まわりはスプリントと同様のノーマルサスペンション。ソフト過ぎずハード過ぎない。
ここのところ、商品力の高い輸入車が相次いで発売されるCセグメントのハッチバックだが、今回、あらためてジュリエッタに乗ってみて、2010年の登場、12年の日本発売にもかかわらず、いち早く最新世代の要件をあらかた備えて出てきていたんだなと気付かされる。ダウンサイジング+過給器エンジン、アイドリングストップ機構、デュアルクラッチ・トランスミッションを採用していて効率が高い。
JC08モード燃費15.6km/リッターだなんてにわかには信じられない。アルファ・ロメオなのに燃費がよい(!?)からではなく、燃費のためにいろんなことを犠牲にしたような気配がないからだ。500Sのツインエアもそうだが、ジュリエッタの1.4リッターエンジンはマルチエアというユニークなバルブ駆動の機構を備えることで、高い効率と十分なパワーを両立させている。
ただし、車両の周囲をレーダーやカメラで監視して衝突を防ぐ流行には、アルファは若干乗り遅れた。決して万能ではないし、要らないという人はずっと要らないと言い続けるであろうデバイスではあるものの、あったほうが安全なのは確かだし、新しさを味わえる部分でもあるので、フィアットグループもそのうち対応するだろうが、最初に付けたのと最後に付けたのでは結構印象が違うもの。
なんてことを考えながら走るうち、野尻湖畔の奥まったゾーンにひっそりと建つ瀟洒(しょうしゃ)なホテル「エルボスコ」に到着。軽快感というのは、ひとつ500Sとジュリエッタ クラシカに通じる長所だなと思った。
復路に乗ったクライスラーとジープの話はまたあらためて。
(文=塩見 智/写真=小林俊樹)
テスト車のデータ
フィアット500S
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3585×1625×1515mm
ホイールベース:2300mm
車重:1010kg
駆動方式:FF
エンジン:0.9リッター直2 SOHC 8バルブターボ
トランスミッション:5段MT
最高出力:85ps(63kW)/5500rpm
最大トルク:14.8kgm(145Nm)/1900rpm(ECOスイッチON時:10.2kgm<100Nm>/2000rpm)
タイヤ:(前)185/55R15 82H/(後)185/55R15 82H(グッドイヤー・エフィシエントグリップ)
燃費:26.6km/リッター(JC08モード)
価格:225万円/テスト車=230万円
オプション装備:ボディーカラー(グルーヴメタルグレー)(5万円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:649km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:145.1km
使用燃料:--リッター
参考燃費:11.4km/リッター(車載燃費計計測値)
アルファ・ロメオ ジュリエッタ クラシカ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4350×1800×1460mm
ホイールベース:2635mm
車重:1400kg
駆動方式:FF
エンジン:1.4リッター直4 SOHC 16バルブ ツインターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:170ps(125kW)/5500rpm
最大トルク:23.5kgm(230Nm)/2250rpm(NormalおよびALL weatherモード選択時)、25.5kgm(250Nm)/2500rpm(Dynamicモード選択時)
タイヤ:(前)225/45R17 91W/(後)225/45R17 91W(ピレリ・チントゥラートP7)
燃費:15.6km/リッター(JC08モード)
価格:348万円/テスト車=355万円
オプション装備:ボディーカラー(メタリックレッド)(7万円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:1036km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(9)/山岳路(0)
テスト距離:106.9km
使用燃料:--リッター
参考燃費:9.6km/リッター(車載燃費計計測値)

塩見 智
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