ジープ・コンパス リミテッド(4WD/6AT)/クライスラー300C ラグジュアリー(FR/8AT)
攻めに転じるアメリカ勢 2013.08.23 試乗記 経営統合によってフィアット クライスラー ジャパンが設立されてから1年あまり。ディーラーネットワークの拡充計画が発表されるなど、ここにきて同社の周辺がにぎやかになってきた感がある。同社のオールラインナップ試乗会、後編は4WD仕様を加えた「ジープ・コンパス」を中心にリポートする。“伊米一体”で勝負をかける
新車をたくさん売るにはどうすればよいか――。たくさんの要素があるだろう。だが、まず何よりも商品がよくないといけない。速くてもいいし、広くてもいいのだが、とにかく良い商品じゃないと売れない。
ただ、今売ってるクルマはだいたいどれも良い商品だ。(大事なことだが)排ガスと燃費で縛られているので、出せるパフォーマンスがだいたい決まる。すると重さが決まる。するとサイズもだいたい決まる。そうなると価格もだいたい似通う。デザインにも客観的な良しあしはあるだろうが、好き/嫌いの要素のほうが販売を左右するし、そもそも売れたらそれがよいデザインだ。
つまり、どのクルマも悪くない。悪いクルマとメーカーはすでにだいたい淘汰(とうた)されている。ならば、どこで売れる/売れないの差がつくか。販売力で差がつく。iTunes Storeで売っているコンテンツなら需要が増してもどこまでも在庫切れを起こさず売れるが、クルマは生産能力に限界があるし、販売に際しいろいろ手続きが必要なので、ひとりのセールス氏がひと月に販売できる数が決まっている。だから売ってる店舗が多く、セールス氏が多いブランドが勝つ。念のために確認してみると、ほぼきれいに店舗数が多いブランドほど販売台数が多い。売れるからさらに商品が充実し、店も増えるという好循環の結果でもあるが。
じゃあたくさん売るには店を増やせばいいじゃないか? ことはそう簡単ではない。いいセールス氏はだいたい老舗ブランドにとられているし、適切なロケーションにはやっぱりすでに老舗ブランドの店舗が存在するからだ。むやみに増やしても、不便な場所で新人ばかりが売る店になってしまう。売った後も付き合いが続くクルマの場合、これではブランド全体の印象を下げるだけ。
そんななか、それぞれの親会社がくっついたのを機に日本法人も事実上ひとつとなったフィアット クライスラー ジャパンは、再編のタイミングを利用し、店舗を増やす計画を実行中だ。2013末までに、全国でフィアット/アルファ系ディーラーを12増やして86店舗に、クライスラー/ジープ系ディーラーを12増やして69店舗に、アバルトディーラーを16増やして20店舗にするという。
フィアット クライスラー ジャパンが、簡単ではないはずの店舗増加をハイピッチで計画できるのは、フィアットを売ってきたところにクライスラーも、クライスラーを売ってきたところにフィアットも扱うよう推進しているからだ。これならもともと実績のあるディーラーに新たなブランドを託すことができる。
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もう一歩踏み込みたい人の4WD
果たして、2014年以降にフィアット、アルファ・ロメオ、アバルト、クライスラー、ジープが販売台数を増加させられるかどうか気になるところ。前回の試乗記イタリア編(フィアット、アルファ・ロメオ編はこちら)に続き、今回はアメリカ編。「ジープ・コンパス」と「クライスラー300」について報告したい。
ジープ・コンパスは、4WDの、あるいはクロスカントリービークルの代名詞とも言える、ジープの顔をした普通のSUVだ。何しろこれまで日本仕様はFFのみの設定だった。だからといって、カジュアルなSUVを否定するつもりはない。アスファルトの上しか走らないほとんどの人にとって、わざわざ重くして後輪も回して燃費を悪化させる4WD化は無用の長物にすぎないからだ。
今回、そのコンパスに4WD仕様が加わった。といっても、インポーターはコンパスのキャラクターを変更したわけではなく、FFも残す。4WD仕様は純粋に生活に4WDを必要とする人やウインタースポーツの好きな人にも乗ってもらうべく追加した。キャラクターの違いが明確でなかった「パトリオット」(こっちは4WD中心のラインナップだった)の輸入をやめ、コンパスに一本化したという事情もあるのだろう。
4WDといってもオンデマンド式なので、オンロードで走る限り、乗り味がFF仕様から変わるわけではない。FFの「スポーツ」が2リッター直4エンジン(最高出力156ps/6300rpm、最大トルク19.4kgm/5100rpm)を積むのに対し、4WDの「リミテッド」は2.4リッター直4エンジン(同170ps/6000rpm、同22.4kgm/4500rpm)を積む。とはいえ、リミテッドの車両重量は1550kgとスポーツに比べちょうど100kg重いので、パワー・トゥ・ウェイト・レシオもトルク・トゥ・ウェイト・レシオもその差はわずか。同じ6ATが搭載されていることもあって、両者の挙動は似ている。
近頃はターボエンジン車に乗る機会が圧倒的に多い。久しぶりに自然吸気エンジン車に乗ると、ちょっと前まで実用車はほとんどこうだったよなと思い出す。上まで回す爽快感はあるが、ターボ車を上回る部分はそれだけで、燃費、パワーともに物足りない。(このクルマに似合うかどうかは別にして)マルチシリンダーで8000rpmまで回るというなら話は別だが、同じ4気筒なら実利的な過給器付きエンジンが欲しいというのが正直なところ。ただ、多少の燃費の物足りなさはレギュラー仕様ということでいくらか取り戻せる。
ソフトな乗り心地がコンパスの美点と言える。コーナーでは素直にロールし、クッション性の高いシートもあいまって、路面の不整をそれなりに吸収してくれる。四輪独立懸架ということもあって、乗り心地とハンドリングも悪くない。ただ、(エンジンも含め)そういうスペックにはこだわりが少なく、ルックスとユーティリティー、それにいざというときのための4WDを求める人のためには悪くないクルマじゃないだろうか。もう少し安ければと思わないでもないが、それはまあ値引き額次第か。これを薦めたい友達、何人か思い浮かぶなぁ。
アメリカンラグジュアリーの現在形
クライスラー300を好ましいという連中はこの業界にも多く、僕もそのひとり。どうしてか考えてみたのだが、突き詰めると、アメリカ車らしいサイズとルックスということだと思う。
多様なのがアメリカではあるが、ある種の典型的なアメリカ車を、現代的なソリューションで動かしているのが、現行型クライスラー300だ。クルマ好き1000人に聞いたら、多分100人や200人は「アメリカ車って雰囲気あって好きなんだ」と言うはずだ。でも彼らに「実は426キュービックインチ(7リッター)のヘミエンジンを積んだ『プリムスGTX』が格安であるんだよ」と言ったら、食いつく人は急にひとりかふたりになるだろう。
その点、300は先代ほどではないにせよ、マッスルカーの雰囲気が残るルックスにもかかわらず、V6の3.5リッターと8段ATという現代的なパワートレインの、Bluetoothオーディオも横滑り防止装置も付く、さらに上級の「300C」には全車速対応のアクティブクルーズコントロールやブラインドスポットモニターまで付くという、極めて現代的でまじめなクルマだ。そもそも右ハンドルだし。
長いホイールベースとよくできた足まわりによって、快適な乗り心地も得ている。さらにFRなのでステアリングフィールは上々、ハンドリングも素直でよく曲がる。V6にマッスルらしさを期待してはいけないが、上までスムーズに、伸びやかに回り、納得できるだけのパワーもある。ATはZF製の最新型で、変速ショックはほぼ感じない。
現代のクルマでもっともっと“古き佳(よ)き”を感じたい人には、先代より少し排気量を拡大して6.4リッターとなったV8ヘミエンジンを積んだ「SRT8」を選ぶ手もあるが、普通の300でも十分にアメリカ車らしさを味わうことができる。
(文=塩見 智/写真=小林俊樹)
テスト車のデータ
ジープ・コンパス リミテッド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4475×1810×1665mm
ホイールベース:2635mm
車重:1550kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.4リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:5段AT
最高出力:170ps(125kW)/6000rpm
最大トルク:22.4kgm(220Nm)/4500rpm
タイヤ:(前)215/55R18 95H/(後)215/55R18 95H(コンチネンタル・コンチプレミアムコンタクト2)
燃費:10.7km/リッター(JC08モード)
価格:325万円/テスト車=325万円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:1043km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(9)/山岳路(0)
テスト距離:310.7km
使用燃料:--リッター
参考燃費:8.5km/リッター(車載燃費計計測値)
クライスラー300C ラグジュアリー
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5070×1905×1495mm
ホイールベース:3050mm
車重:1900kg
駆動方式:FR
エンジン:3.6リッターV6 DOHC 24バルブ
トランスミッション:8段AT
最高出力:286ps(210kW)/6350rpm
最大トルク:34.7kgm(340Nm)/4650rpm
タイヤ:(前)245/45ZR20 99Y/(後)245/45ZR20 99Y(グッドイヤー・イーグルF1 スーパーカー)
燃費:9.2km/リッター(JC08モード)
価格:538万円/テスト車=538万円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:1万131km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

塩見 智
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