ボルボV60 T4 SE(FF/6AT)/XC60 T6 AWD(4WD/6AT)
納得の進化 2013.09.24 試乗記 2014年モデルで大幅なフェイスリフトを実施、よりスタイリッシュな方向へとかじを切ったボルボの主力モデル「60シリーズ」。「V60」と「XC60」で、その進化の度合いを確かめた。変えるにもほどがある!?
2013年を振り返るにはまだ早いけれど、今年一番目立った輸入車ブランドはボルボではないかと思う。ここ数年、ボルボのウリである先進の安全性に加えて、よりスタイリッシュになったエクステリアや上質なインテリア、運転が楽しい走りなど、以前のイメージを一新するほど、いいクルマに進化していた。
あとはきっかけだけ……と思っていたら、エントリーモデルの「V40」が火をつけた。デザイン、性能、そして価格のどれをとっても魅力的。これまでボルボに振り向かなかった人やボルボの存在を忘れていた人が、ぞくぞくとディーラーに足を運んでいるらしい。90年代の“「850」ブーム”を上回る人気だそうで、日本のボルボにとって、まちがいなく今年は復活の年、V40さまさまという状況である。
その一方で、V40が販売台数のほぼ半分を占めているという状況には満足していないようで、あくまで主力モデルは「60シリーズ」というボルボとしては、この勢いに乗って60シリーズの販売を伸ばしたいところ。それでこそ、真の復活だといえよう。そこで、モデルイヤーが切り替わるのを機に、「S60」「V60」「XC60」をフェイスリフト。また、上級モデルの「V70」「XC70」「S80」にも同時に変更を実施してきた。
その変更箇所は、6モデルあわせてなんと4000カ所以上! よくもイッキにできたものだと思ったら、2010年から準備をしていたというから、まさに満を持して登場した2014年モデルである。
それだけに、主な変更点を挙げていたら、いつ試乗記に到達できるかわからないので、まずは「ボルボ2014年モデルの概要」をご覧いただくとして、今回はイメージチェンジした60シリーズのなかから、V60とXC60を選び、試乗することにした。まずはV60のキーを受け取ったが、あまりの変わりように驚くと同時に、ボルボ初の装備を発見し、試乗前から気をよくする筆者である。その装備とは……。
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ついに(やっと?)パドルシフトが!
新しいV60は、これまでとは明らかに違う雰囲気に仕上がっている。わかりやすいのがその顔つき。フロントグリルにクロムの水平バーを配し、フロントバンパーの開口部を横に広げたのが効いているのか、ワイドで精悍(せいかん)なイメージが強まっているのだ。高級感も増し、V40の上位モデルであることが一目瞭然になった。
室内は、あいかわらずクリーンで高い質感のダッシュボードが印象的。ボルボならではのモダンな雰囲気が味わえるというだけでも、このクルマを選ぶ価値がある。注目は新デザインのメーター。V40同様、デジタル液晶メーターが採用されたのだ。好みによって、「Elegance」「Eco」「Performance」が切り替えられるところもV40に準じているが、クロムのベゼルにブラックの塗装を組み合わせることで、高級感を演出したところに、60シリーズの意地が感じられた。
このデジタル液晶メーターを初めてV40で見たときは正直戸惑ったが、見慣れるにつれ、むしろ好ましく思えてきたのは意外である。個人的には、クロムのベゼルがアナログメーターっぽい雰囲気をもたらしているのが気に入っている。たまに試乗する程度だと、「モードの切り替えはどうするんだっけ?」とか「オドメーターはどうやって見るの?」とか迷うこともあるが、使い慣れればそんな悩みはなくなるのだろう。
ところで、最初に試乗した「V60 T4 SE」は、新たに設定されたグレードで、その名前からわかるように、4気筒エンジン搭載の「V60 T4」をベースに、装備を充実させたものだ。追加装備としては、運転席パワーシートやフロントシートヒーター、HDDナビゲーションシステムなどがあり、これで30万円アップというのはなかなか魅力的である。さらに、装備リストを見ると、なぜかこれまで用意されていなかったパドルシフトがあるではないか! このV60 T4 SEをはじめ、最上位グレードの「V60 T6 AWD」、さらに、V40以外の各モデルには、ついにパドルシフトがつくようになったのだ(一部グレード除く)。
積極的なドライビングを楽しみたい人には、パドルシフトは欠かせないアイテム。もちろん、走りが楽しいクルマであればの話だが、果たしてV60は期待に応えてくれるだろうか?
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見えないところも着実に
さっそく走りだすと、1.6リッター直噴ターボとデュアルクラッチ式の6段「パワーシフト」トランスミッションのマナーがさらにスムーズになったことに気づく。もともとボルボのデュアルクラッチトランスミッションは、シフト時のショックが小さかったが、さらに磨きをかけた印象である。
1.6リッターエンジンは、低回転からトルク十分。パドルシフトを操ってエンジンを高回転まで引っ張れば、5000rpmを超えてもなお力強い加速を見せてくれる。しなやかな動きを見せるサスペンションも手伝い、ワインディングロードがこれまで以上に楽しい。もちろん、快適な乗り心地と優れたスタビリティーのおかげで、長距離をのんびりドライブするのも得意である。“主な変更点”として挙げられてはいないが、エンジン、トランスミッション、サスペンションといった部分にも改良の手が加えられているのは確かだろう。
続いてXC60は最上級グレードの「XC60 T6 AWD」を試乗。V60同様、従来モデルに比べて精悍なイメージを強めているが、さらにこのXC60は、エクステリアのボディー同色化を図り、都会的な雰囲気を高めたのが見どころである。インテリアも、デジタル液晶メーターの採用などで印象を一新していて、SUVならではの良好な視界や上質なシートとあいまって、心地よい空間に仕立て上げられているのがうれしいところだ。
走りに関しても、以前にも増して乗り心地が快適になり、また、ワインディングロードなどでも比較的落ち着いた動きを見せるのが好印象。横置きの3リッター直6ターボエンジンは相変わらず力強く、スムーズに吹け上がるのをいいことに、ついついパドルシフトを多用して、その魅力を堪能してしまった。燃費(JC08モード)が9.0km/リッターといまどきのクルマとしては大食らいなのが玉にきずだが、それを差し引いても、このクルマを選ぶ理由はある。
ということで、V60とXC60を試乗したが、いずれも広いキャビンと広いラゲッジスペースを備えながら、気持ちのいい走りが楽しめるのが大きな魅力。V40もいいけれど、アクティブなライフスタイルの持ち主には、むしろ60シリーズのほうが心に響くはずである。
(文=生方 聡/写真=高橋信宏)
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テスト車のデータ
ボルボV60 T4 SE
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4635×1845×1480mm
ホイールベース:2775mm
車重:1560kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:180ps(132kW)/5700rpm
最大トルク:24.5kgm(240Nm)/1600-5000rpm
タイヤ:(前)215/50R17/(後)215/50R17(ピレリ・チントゥラートP7)
燃費:13.6km/リッター(JC08モード)
価格:429万円/テスト車=506万円
オプション装備:メタリックペイント<エレクトリックシルバーメタリック>(8万円)/本革スポーツシート(10万円)/自動防眩機能付きドアミラー(3万円)/ステアリングホイール・ヒーター(2万5000円)/パークアシストカメラ<リア>(6万円)/ETC車載器<音声ガイダンス機能付き>(2万5000円)/セーフティー・パッケージ(20万円)/レザーパッケージ(25万円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:3865km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(1)/山岳路(8)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--
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ボルボXC60 T6 AWD
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4645×1890×1715mm
ホイールベース:2775mm
車重:1930kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:304ps(224kW)/5600rpm
最大トルク:44.9kgm(440Nm)/2100-4200rpm
タイヤ:(前)235/55R19/(後)235/55R19(コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5)
燃費:9.0km/リッター(JC08モード)
価格:629万円/テスト車=705万円
オプション装備:メタリックペイント<リッチジャバメタリック>(8万円)/電動ガラスサンルーフ(20万円)/本革スポーツシート(10万円)/自動防眩機能付きドアミラー(3万円)/ステアリングホイール・ヒーター(2万5000円)/パークアシストカメラ<リア>(6万円)/ETC車載器<音声ガイダンス機能付き>(2万5000円)/セーフティー・パッケージ(20万円)/ファミリーパッケージ(4万円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:4447km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(1)/山岳路(8)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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