BMW X5 xDrive50i(4WD/8AT)/X5 xDrive30d(4WD/8AT)
キーワードは洗練 2013.09.26 試乗記 プレミアムSUVのパイオニア的存在である「BMW X5」が、3世代目となる新型に移行した。さらなる高級感を演出し、より効率的なドライビングプレジャーを実現したとうたわれる新型の走りはいかに? カナダはバンクーバーで試乗した。流麗路線へアップデート
通算3世代目となる新しい「X5」のテストドライブの舞台としてBMWが用意したのはカナダのバンクーバーだった。高層ビルが立ち並ぶ一方、すぐまわりを海や山に囲まれていることもあり、どこか穏やかな雰囲気のこの街は、2010年に冬季オリンピックが開催された場所でもある。SUV界きっての都会派であり、また優れたアスリートであるX5にとって、まさにお似合いの街といっていい。
この新型X5、率直な話をすれば内容はコンサバで、スペックにしても装備にしても目を見張る何かがあるわけではない。例えばボディーサイズを見ると、ホイールベースは変わらず全長が29mm伸ばされただけ。オプションで3列シート7人乗りまで用意するパッケージングにも大きな変更はない。
メカニズムの面でも、今回の試乗車であるガソリンの「xDrive50i」と、ディーゼルの「xDrive30d」(日本では「xDrive35d」)のパワートレインはいずれも従来の進化版。新鮮味には乏しい。
では見どころは? というと、まずはそのスタイリングということになる。まず目線が行くのは「3シリーズ」と同様、ワイド化されたキドニーグリルとつなげられたヘッドライト。しかも、そのグリルが備わるノーズは往年のBMWよろしく逆スラント形状とされ、ボンネットを長く見せている。また、全長の延長分はほとんどがリアエンドに充てられ、14mm低くなったルーフと相まって、こちらも長さを強調。ややゴツい印象だった先代に対して、流麗な雰囲気を醸し出すことに成功している。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ディーゼル比率がさらに高まりそう
インテリアは基本レイアウトこそ踏襲しているが、iDriveのモニターを独立させたことでダッシュボードが低く抑えられ、柔らかな面が採り入れられたことも相まって、一層の広がりを感じさせる。また、クオリティーの向上も目覚ましく、ダッシュボードを覆うレザーや繊細なステッチも上質感をアピールしている。
もちろん、話はそこだけには終わらない。何よりうれしくさせられたのは、走りの面でも、市街地を抜け、北方のウィスラーまで延々と山岳地帯を走り、オリンピック競技場でのオフロード走行までこなした試乗の中で、そんな内外装の雰囲気に負けない快適性を実感できたことである。
最初に乗ったxDrive30dの第一印象は、静かになったということに尽きる。アイドリング中や加速時の、いかにもディーゼルらしいガラガラという音や振動がほぼ完璧に封じ込まれていて、気持ちの良い成分だけが抽出されて耳に届くのだ。
おかげで走りっぷりは、重々しさから解消された印象。実際、車重が最大90kg軽くなったこともあり、豊かなトルクに浸りながら爽快な加速を味わうことができる。
もちろん、xDrive50iの、回すほどに活気づく味わいも魅力的だ。しかしながら、これだけの洗練ぶりからすれば、現在でも7割以上というディーゼル比率はさらに高まりそう。ちなみに燃費はxDrive30dの場合で6.2リッター/100km(約16.1km/リッター)と、従来比16%向上している。これには軽量化、空力の改善のほか、アクセルオフ時にクラッチを切り惰性走行を行うことなどにより燃費を向上させる「ECO-PRO」モードの設定も貢献しているはずである。
1台で2つの表情
乗り心地も、非常にしなやか。実は先代だって、スポーティーな身のこなしの一方で、SUVらしいゆったりした部分も持ち合わせた、なかなかの乗り味を実現していたと評価しているのだが、新型はそれに拍車がかかっている。特に2列目の快適性の高さは歓迎されるだろう。
それでも実はフットワークには最初、物足りなさを感じていた。肝心の走りがその快適さの犠牲になっているように思えたのだ。
しかし、それは単なる早とちりだったようである。「ドライビング・パフォーマンス・コントロール」を“COMFORT”から“SPORT”に切り替えると、ステアリングやスロットルなどの反応が切れ味を増し、さらには試乗車に装着されていたダイナミック・ダンパー・コントロールがサスペンションの動きをすかさず引き締め、がぜんスポーティーな振る舞いを見せるようになったのだ。サイズを忘れて飛ばせるフットワークは、まさにBMW、まさにX5。要するに新型では1台で、違った2つの表情を持つようになったわけである。
そう、冒頭ではコンサバという言葉を使ったが、新型X5は、好評なところはそのままに、不得手を解消した、まさしく正常進化版と言うことができるだろう。日本上陸は年内の予定。遅れて登場する3リッターガソリンの「xDrive35i」も設定されるはずだ。
(文=島下泰久/写真=BMW)
テスト車のデータ
BMW X5 xDrive50i(4WD/8AT)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4886×1938×1762mm
ホイールベース:2933mm
車重:2175kg(DIN)
駆動方式:4WD
エンジン:4.4リッターV8 DOHC 32バルブ ツインターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:450ps(330kW)/5500rpm
最大トルク:66.3kgm(650Nm)/2000-4500rpm
タイヤ:(前)255/50R19/(後)255/50R19
燃費:10.4リッター/100km(約9.6km/リッター、EUテストサイクル複合モード)
価格:--万円/テスト車=--万円
オプション装備:--
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
BMW X5 xDrive30d(4WD/8AT)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4886×1938×1762mm
ホイールベース:2933mm
車重:2070kg(DIN)
駆動方式:4WD
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:258ps(190kW)/4000rpm
最大トルク:57.1kgm(560Nm)/1500-3000rpm
タイヤ:(前)255/55R18/(後)255/55R18
燃費:6.2リッター/100km(約16.1km/リッター、EUテストサイクル複合モード)
価格:--万円/テスト車=--万円
オプション装備:--
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.3.3 「GRヤリス」の新仕様として設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」装着車に試乗。レースフィールドでの知見を交え開発したというエアロパーツの空力・冷却性能は、リアルワールドでも体感可能なのか。高速道路を経由し、郊外のワインディングロードを目指した。
-
ドゥカティ・モンスター(6MT)【海外試乗記】 2026.3.2 ドゥカティのネイキッドスポーツ「モンスター」が5代目にモデルチェンジ。無駄をそぎ、必要なものを突き詰めてきた歴代モデルの哲学は、この新型にも受け継がれているのか? 「パニガーレV2」ゆずりのエンジンで175kgの車体を走らせる、ピュアな一台の魅力に触れた。
-
フォルクスワーゲンID.4プロ(RWD)【試乗記】 2026.2.28 フォルクスワーゲンのミッドサイズ電気自動車(BEV)「ID.4」の一部仕様変更モデルが上陸。初期導入モデルのオーナーでもあるリポーターは、その改良メニューをマイナーチェンジに匹敵するほどの内容と評価する。果たしてアップデートされた走りやいかに。
-
スズキ・キャリイKX(4WD/5MT)【試乗記】 2026.2.27 今日も日本の津々浦々で活躍する軽トラック「スズキ・キャリイ」。私たちにとって、最も身近な“働くクルマ”は、実際にはどれほどの実力を秘めているのか? タフが身上の5段MT+4WD仕様を借り出し、そのパフォーマンスを解き放ってみた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.2.26 日本で久々の復活を遂げた「ホンダCR-V」の新型に、北海道のテストコースで試乗。雪上・氷上での“ひとクラス上”の振る舞いに感嘆しつつも、筆者がドン! と太鼓判を押せなかった理由とは? デビューから30年をむかえたCR-Vの、実力と課題を報告する。
-
NEW
「ジープ・アベンジャー4xeハイブリッド」発表会の会場から
2026.3.5画像・写真ジープブランドのコンパクトSUV「アベンジャー」に、4WDのハイブリッドバージョン「アベンジャー4xeハイブリッド」が追加された。その発表会(2026年3月5日開催)の場に展示された同モデルの外装・内装を写真で紹介する。 -
NEW
スバル・トレイルシーカーET-HS プロトタイプ(4WD)【試乗記】
2026.3.5試乗記スバルから本格的な電気自動車の第2弾となる「トレイルシーカー」が登場。前後のモーターから繰り出すシステム最高出力はドーンと380PS。ただし、それをひけらかすような設定にはしていないのがスバルらしいところだ。スノードライブの印象をお届けする。 -
NEW
ホンダ・インサイト
2026.3.5画像・写真4代目はまさかの電気自動車(BEV)! ハイブリッドからBEVへ、4ドアセダンからSUVへと変身して、「ホンダ・インサイト」が復活を遂げた。ドアトリム/ダッシュボードヒーターにアロマディフューザーと、新たな快適装備を満載したその姿を、写真で紹介する。 -
NEW
BYDシーライオン7 AWD(4WD)
2026.3.5JAIA輸入車試乗会2026堂々たるスタイルにライバルの上をいくパワーと一充電走行距離、そしてざっくり2割はお得なプライスを武器とする電気自動車「BYDシーライオン7」。日本市場への上陸から1年がたち、少しずつ存在感が増してきた電動クーペSUVの走りやいかに。 -
NEW
ついにハードウエアの更新も実現 進化した「スバルアップグレードサービス」の特徴を探る
2026.3.5デイリーコラムスバルが車両の機能や性能の向上を目的とした「スバルアップグレードサービス」の第3弾を開始する。初めてハードウエアの更新も組み込まれた最新サービスの特徴や内容を、スバル車に乗る玉川ニコがオーナー目線で解説する。 -
NEW
第951回:日本が誇る名車を再解釈 「ホンダNSXトリビュートby Italdesign」の開発担当者に聞く
2026.3.5マッキナ あらモーダ!2026年の「東京オートサロン」で来場者の目をくぎ付けにした「ホンダNSXトリビュートby Italdesign」。イタルデザインの手になる「ホンダNSX」の“再解釈”モデルは、いかにして誕生したのか? イタリア在住の大矢アキオが、開発関係者の熱い思いを聞いた。





























