第207回:テーマはモダンラグジュアリー
メルセデス・ベンツのチーフデザイナーが語る新型「Sクラス」の見どころ
2013.10.09
エディターから一言
拡大 |
「メルセデス・ベンツSクラス」の日本での販売が開始されるにあたり、メルセデス・ベンツのチーフデザイナー、ゴードン・ワグナー氏が来日した。ニューモデル発表会の後に行われたグループインタビューでは、新型Sクラスのデザインだけでなく、メルセデス・ベンツ全体のデザインにまで話が広がった。
いかに削(そ)ぎ落とすかが重要
――新しいメルセデス・ベンツSクラスのデザインでは、全体として何を表現したかったのですか? どのようなコンセプトを持ってデザインしたのですか?
「デザインするにあたっては『モダンラグジュアリー』というものを明確に再定義しようと考えました。キーワードは『センシュアル・ピュアリティー』(官能的な純粋さ)です。Sクラスほどのボディーサイズがある場合、いかに削(そ)ぎ落としていってピュアにするか、が大事です。これが『Aクラス』のようなコンパクトなモデルになると、進歩的な側面を強調する必要が出てきます。ただし、具体的な手法は異なりますが、メルセデス・ベンツのクルマとして、同じ言語でデザインしています」
――あなたは以前、「過去と未来をつなぐ。それが狙いだ」といった主旨の発言をされました。「過去と未来」は何を指しますか?
「メルセデス・ベンツは特別なブランドです。長い伝統があります。私の役割としては、良い部分をしっかり維持すること。より大きな役割として、前の世代、父親の世代の良いものをそのまま継承するのではなく、未来の世代、子供の世代へとつなげる必要があります。そこで、モダンラグジュアリーという考え方が大事なのです。デザインするにあたって『モダンであること』を重視し、『現代的であれ』と強く言っています。
新型Sクラスは、ラグジュアリーなクルマですが、実車を見ていただければ、エモーショナルな部分に引きつけられるはずです。そのうえ『本当にモダンだ!』という感想を抱いていただけるでしょう。『今までなかったものが入っている』『しかもハイテクだ!』と感じていただけることでしょう」
「パズル」が2016年に完成する
――伝統的であることは、時に古さにつながります。例えばアウディと比較して、メルセデス・ベンツのモダンさを強化しよう、と考えましたか?
「われわれが競合メーカーに引っ張られることはありません。メルセデスは、自身の道を進んでいるのです。アウディが、本当にラグジュアリーブランドと認識されたのは、いつからでしょうか? 一方、メルセデスは、ラグジュアリーブランドとして、100年の伝統があります。
人間は性(さが)として、常に新しいものを欲しがるものです。変わったものや変化、違いなどを求めるものです。そのおかげで、デザイナーは新しいものを作り出し、デザインしていけるわけですが……。
アウディやBMWと比べて、メルセデス・ベンツにはデザインの多面性があると思います。非常に立体的で、複雑。ひとつのブランドに、さまざまな要素が含まれます。大から小まで、メルセデス・ベンツのクルマとしての共通性はあるけれど、それぞれが同じではなく、違いがあり、複雑さがある。それが、まさに『ラグジュアリーブランドの証し』であると考えています」
――ゴードンさんがメルセデスの新しいチーフデザイナーになったことで、メルセデス・ベンツは新しい時代に入った。そう考えられますか?
「そうですね、前任者のペーター・ファイファー氏とは、世代が違いますからね! 私がデザインを統括するようになって最初に手がけたのは『デザインフィロソフィーを完全なものにする』ということでした。
メルセデス・ベンツというブランドを世に伝える大使は、いうまでもなく、クルマそのものです。クルマを開発し、デザインするにあたって、まずモデルラインナップ全体を見わたし、あたかもチェスボードのように考えました。ブランドとしての全体像を考える。『10年後には、こういうカタチにしよう』という大きな構図を描いたのです。
そのマスタープラン(基本計画)に沿って、個々のクルマを開発し、デザインしていきます。『Aクラスだったら、ココ』と、あたかもパズルのピースように考えます。3年後、5年後、次々と新しいモデルが世に出て、2016年にはパズル全体が完成する。そういう感じです」
次期「Cクラス」でも新たな基準を打ち立てる
――メルセデス・ベンツの将来のデザインは、どういう方向に進んでいくのですか?
「クルマのカテゴリーごとにデザインの方向性を示したサークルを紹介したことがあります。『トラディション』『エモーション』『プログレッション』と3つに分けました。Sクラスはトラディション。スポーツタイプだったら、エモーション。Aクラスならプログレッションというわけです。
そして、トラディションとエモーションの間に入るのが『CLクラス』であり、エモーションとプログレッションの間に入るのが『CLAクラス』や『CLSクラス』、そしてトラディションとプログレッションの間には『GLAクラス』が入ります。それぞれにぴったりフィットする場というものがあるわけです。
デザインするに当たって、使う言語は同じだけれど、クルマのキャラクターを『どのように表すか』で違いが出ます。AクラスやCLAクラスではラインを多用して表現を強調し、Sクラスの場合は、いわばブランドの署名にあたるキャラクターラインを引くにとどめて、ボディーをスムーズにする。表現の仕方は異なるけれど、でも『皆たしかにメルセデスだね』とわかるようにします」
――2016年にデザインストラクチャーが完成するということですが、具体的には次の「Cクラス」の登場が節目ですか?
「2016年には、全部ではありませんが、新しいデザインへの移行がほぼ完了するはずです。
新しいCクラスに関しては、今回のSクラスが成し遂げたように『クラスを再定義する存在』になるでしょう。新しいスタンダード、他社にとっては、新たなベンチマークになります。
もちろん、注目のクルマはCクラスだけではありません。今回お披露目したSクラスの次にはSクラスクーペも控えています。デザイン面での大きな構図が完成するまで、まだまだおもしろいクルマが出てきますよ!」
(インタビューとまとめ=青木禎之/写真=DA)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
第866回:買った後にもクルマが進化! 「スバル・レヴォーグ」に用意された2つのアップグレードサービスを試す 2026.4.17 スバルのアップグレードサービスで「レヴォーグ」の走りが変わる? 足まわりを強化する「ダイナミックモーションパッケージ」と、静粛性を高める「コンフォートクワイエットパッケージ」の効能を、試乗を通して確かめた。
-
第865回:ブリヂストンが新タイヤブランド「フィネッサ」を発表 どんなクルマに最適なのか? 2026.3.13 ブリヂストンが2026年1月に発表した「FINESSA(フィネッサ)」は、同社最新の商品設計基盤技術「ENLITEN(エンライトン)」を搭載する乗用車用の新タイヤブランドである。高いウエットグリップ性能と快適な車内空間の実現がうたわれるフィネッサの特徴や走行時の印象を報告する。
-
第864回:冬の北海道で「CR-V/ZR-V/ヴェゼル」にイッキ乗り! ホンダ製4WDの実力に迫る 2026.3.9 氷雪に覆われた冬の北海道で、新型「CR-V」をはじめとするホンダのSUV 3兄弟に試乗。かつては実力を疑われたこともあるというホンダ製4WDだが、今日における仕上がりはどれほどのものか? 厳しい環境のもとで、そのコントロール性を確かめた。
-
第863回:3モーター式4WDの実力やいかに!? 「ランボルギーニ・テメラリオ」で雪道を目指す 2026.3.3 電動化に向けて大きく舵を切ったランボルギーニは、「ウラカン」の後継たる「テメラリオ」をプラグインハイブリッド車としてリリースした。前に2基、リアに1基のモーターを積む4WDシステムの実力を試すべく、北の大地へと向かったのだが……。
-
第862回:北極圏の氷上コースでマクラーレンの走りを堪能 「Pure McLaren Arctic Experience」に参加して 2026.2.25 マクラーレンがフィンランド北部で「Pure McLaren Arctic Experience」を開催。ほかでは得られない、北極圏のドライビングエクスペリエンスならではの特別な体験とは? 氷上の広大な特設コースで、スーパースポーツ「アルトゥーラ」の秘めた実力に触れた。
-
NEW
第57回:スズキはなぜインドに賭ける? 変わらず牛が闊歩するインドの最新工場を小沢コージが直撃
2026.4.18小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ小沢コージがインドへ。日本の自動車ファンにとってインドといえばスズキのイメージだが、実はスズキは現在、インドへの大型投資の真っ最中だ。なぜスズキはインドでこれほどまでに愛されるのか。最新工場を見学して考えた。 -
NEW
ボルボXC90ウルトラT8 AWDプラグインハイブリッド(4WD/8AT)【試乗記】
2026.4.18試乗記2016年に上陸した2代目となるボルボのフラッグシップSUV「XC90」の最新アップデートモデルに試乗。パワフルなプラグインハイブリッドシステムを採用する3列シートSUVの走りを、先にステアリングを握った「V60」や「XC60」との比較を交えながら報告する。 -
谷口信輝の新車試乗――ディフェンダー・オクタ編
2026.4.17webCG Moviesブーム真っ盛りのSUVのなかで、頂点に位置するモデルのひとつであろう「ディフェンダー・オクタ」。そのステアリングを握ったレーシングドライバー谷口信輝の評価は……? 動画でリポートします。 -
第866回:買った後にもクルマが進化! 「スバル・レヴォーグ」に用意された2つのアップグレードサービスを試す
2026.4.17エディターから一言スバルのアップグレードサービスで「レヴォーグ」の走りが変わる? 足まわりを強化する「ダイナミックモーションパッケージ」と、静粛性を高める「コンフォートクワイエットパッケージ」の効能を、試乗を通して確かめた。 -
ハーレーダビッドソン・パン アメリカ1250リミテッド(6MT)【レビュー】
2026.4.17試乗記アメリカの大地が鍛えたアドベンチャーモデル「ハーレーダビッドソン・パン アメリカ1250」に、充実装備の上級モデル「リミテッド」が登場! 試乗して感じられた、日欧のライバルに勝るとも劣らない魅力と、どうしても気になるポイントを報告する。 -
毎日でもフェラーリに乗りたい! 「アマルフィ スパイダー」にみる新時代の“跳ね馬”オーナー像
2026.4.17デイリーコラム車庫にしまっておくなんてナンセンス! 新型車「アマルフィ スパイダー」にみる、新時代のフェラーリオーナーの要望とは? 過去のオーナーとは違う、新しい顧客層のセンスと、彼らの期待に応えるための取り組みを、フェラーリ本社&日本法人のキーマンが語る。





























