トヨタ・ヴェルファイアハイブリッドZR “Gエディション”7人乗り(4WD/CVT)【試乗記】
一点だけ超残念 2012.03.06 試乗記 トヨタ・ヴェルファイアハイブリッドZR “Gエディション”(4WD/CVT)……676万9300円
10・15モードで19.0km/リッターという燃費を達成した「ヴェルファイアハイブリッド」は、実際にはどのくらいの燃費を記録するのか。箱根往復で確かめた。
燃費以外にも長所がある
センターコンソールの「EV MODE」と記されたスイッチを押してスタート、「トヨタ・ヴェルファイアハイブリッド」はモーターの駆動力だけでスルスルと発進する。さすがに2t超のヘビー級だけあって、気を使ってふんわりアクセルを踏んだつもりでも、EV走行はそれほど長続きしない。時と場合によるけれど、だいたい40〜50km/hぐらいでエンジンが始動する。
ただしエンジンが始動したかどうかは、「いまエンジン掛かった? 掛かってない?」とイヂワル目線でチェックしないと気がつかない。
「フロントとリア、2つのモーターで駆動するEV走行」→「フロントのモーターとエンジンで駆動するハイブリッド走行」への移行は、実にスムーズだ。赤信号でストップすると、アイドリングストップ機構が働いてエンジン停止。青信号でアクセルペダルを踏むと、エンジンが始動する。ここでの「エンジン停止」→「再始動」の所作も、イヂワルに耳を澄まさないと気付かないほどスムーズだ。
走行中に静かなことは、加速に余裕があることとあわせて、「THS II」というハイブリッドシステムは燃費をどうこう言う前に、上等なパワートレインだという印象を与えてくれる。
ここで少しモデル解説。2008年のモデルチェンジを機に、「アルファード」にアグレッシブなお面の弟分、「ヴェルファイア」が追加された。ここに「エスティマ/アルファード/ヴェルファイア」という3兄弟が生まれる。同時に、このタイミングでアルファードのハイブリッド仕様は廃止され、エコは長兄のエスティマだけが担当することになった。
そして2011年秋のマイナーチェンジにあたり、ハイブリッド人気の高まりを受けてアルファード/ヴェルファイアにもハイブリッド仕様が設定される。フロントにモーターとエンジンを置き、リアに独立したモーターを配置するシステム構成や、必要に応じてリアのモーターが駆動して四輪駆動になる仕組みは3兄弟共通だ。
市街地では、カーナビ画面を切り替えて表示する燃費計が6〜8km/リッターあたりを表示する。後で給油した時に、この車載燃費計がかなり正確であることがわかった。
80km/h巡航がベスト
市街地で感じたソフトな乗り心地は、首都高速から東名高速へ入っても印象は変わらない。大きな段差を、ほわんと鷹揚(おうよう)に乗り越える。
動きがおおらかなこととトレードオフで、ステアリングホイールを切った瞬間の反応ものんびりしているけれど、個人的には気にならなかった。キュッキュキュッキュ走るために作られたのではなく、人や荷物を満載して、はるかかなたを目指すクルマ。戦闘機だけでなく、旅客機のパイロットにも充実感がある。
東名高速の前後がすき始めたところで燃費テスト。80km/h巡航だと、燃費計は17〜18km/リッターを表示。100km/hだと14〜15km/リッター。東名高速の追い越し車線の流れに乗ると、あと1〜2割ほどスピードが出ちゃって、そうすると10km/リッターちょぼちょぼ。速度によってかなり燃費が変わる印象だ。
燃費を確認してからは追い越し車線の流れに乗って、特に燃費を意識しないで走る。箱根ターンパイクの入り口で、トリップメーターは62.3km、ここまでの平均燃費は11.0km/リッター。
箱根ターンパイクを駆け上がって感心したのは、抜群の安定感。高速道路での印象と同じようにきびきび曲がるわけではないけれど、安定した姿勢で素直に曲がる。荒れた路面を突破するとフロアが一瞬、ブルブルッと振動するのを除けば、ボディーもがっちりしていて静粛性も高い。オプション込みで700万円に迫る値札を思えば当然だけれど、高級車だ。
この区間での燃費は思った以上に悪い。燃費計の棒グラフは3〜4km/リッターのあたり。山道を40kmほど走ると、11km/リッターにまで達した平均燃費は8.8km/リッターに低下する。
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たかがコンセント、されどコンセント
さらに20kmほど山道を走って、帰路に就く。帰りの東名高速は、燃費を意識して100km/h巡航を守る。このくらいの速度域だと静かで乗り心地もよく、何のひっかかりもなく滑るように走る。「ミニバンもこんなに上質になった」「これがいまの時代の高級車」などの思いがよぎる。結局この日の走行距離は276.5km、うち山岳路が約60kmで、一般道が20kmぐらい。平均燃費は10.8km/リッターだった。
往路でもっと燃費に気を配ったり、箱根で抑えて走れば11km/リッター超はカタかったと思われる。しかも燃費だけでなく、快適で動力性能も十二分、トランスポーターとして上出来だ。
いまや軽自動車を除いた乗用車の約3割がミニバン。しかも法人車登録でアルファード/ヴェルファイアはクラウンを超えたという。つまり、エラい人やお客さんをいい気分にさせる役割は高級セダンからミニバンに移ったということ。そんなに威圧的な顔にしなくてもいいとは思うけれど、「ヴェルファイアハイブリッド」は高級車の役割をしっかりこなすクルマだ。ただし、ある一点だけが非常に残念……。
「エスティマハイブリッド」には付いている、AC100V/1500Wのコンセントが付いていないのだ。コンセントなんて大した問題じゃないと思われるかもしれない。
2001年に初代エスティマハイブリッドが登場したときに、開発のまとめ役を務めた松橋繁主査(当時)にお話をうかがって、仰天したのを今でもはっきり思い出す。当時のエスティマハイブリッドも1500Wという、小さな家一軒をまかなう発電能力を備えていた。「キャンプに使えますね」という質問をすると、松橋さんは困った顔をなさった。
「キャンプにも使えますが、本当は赤ちゃん用救急車やお年寄りの入浴車両など、もっとヘビーデューティな使い方を想定しています。ホント言えば、国連に売り込みたいんですよ……」とおっしゃったのだ。
たかがコンセントではあるけれど、コンセントがあればハイブリッド車は困った人を助ける特別なモデルに変身できる。震災の後では、その意味はさらに重い。コンセントさえあれば、お偉いさんがふんぞり返る今までの高級車とは違う、新しい高級車像を確立できるはずだ。そのためにも、一刻も早いコンセントの設置を希望します。
(文=サトータケシ/写真=高橋信宏)
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サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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