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アウディSQ5(4WD/8AT)

スマートに駆れ 2013.12.01 試乗記 熊倉 重春 アウディのミドル級SUV「Q5」に、350psオーバーのハイパフォーマンスモデル「SQ5」が登場。一体、どんな走りを見せるのか? 300kmの道のりをテストした。

バランスのいい高性能

「アウディSQ5」の存在感は独特だ。アウディの「Sモデル」には、520psを振りかざす旗艦「S8」まであるが、もともとノーマルモデルでも性能面で十分以上なのは、誰でも知っている。そのうえで“S”をそろえたのは、アウディからの宣戦布告にほかならない。微に入り細をうがつ技術を駆使して、大御所メルセデス・ベンツとBMWに正面から果たし状をたたきつけ、瞬く間に御三家の一角に食い込んだアウディだけに、「AMG」や「M」などの無遠慮な性能自慢を見過ごすわけにいかないのだ。

そんなSモデルのよろいをまとった最新作がSQ5というのは、高性能SUVがもてはやされる風潮の中で当然といえば当然。クロスオーバーのファンにとって理想の一台かもしれない。いや、SUVとかクロスオーバーという分類は、SQ5に似合わない。セダン、ワゴン、SUV、さらにはGTのどれでもあると同時にどれにも当てはまらないのがクロスオーバー。それだけに多用途性が光るが、思い切ってGTとしての要素を尖(とが)らせたのがSQ5だ。

ベースとなったのは全長4.6m級、全幅1.9mと堂々たる体格なのに無駄に大きすぎもしない、本当に使いこなせるサイズで好評の「Q5」。その上級版「3.0 TFSI クワトロ」(3リッターV6で272ps)と同様にスーパーチャージャーを備えており、さらに強力な354psをたたき出す、というのが最大の違いだ。
それでも、限界を究めたハイチューンではなく、常用域での使いやすさを重視したところに、性能の本質を知り抜いたバランス感覚が見える。2994ccに過給を施した場合、レース界の常識(係数1.7を掛ける)によれば、自然吸気の5089.8ccに相当するから、最大トルクは50.0kgm以上が当たり前。なのに47.9kgm/4000-4500rpmに抑えられている。とはいえ、その大部分を低回転域から出し続けるのだから、どのギアでどこから踏んでも、瞬時にグイ~ッと持って行ってしまう(ノーマル3.0 TFSIは40.9kgm/2150-4780rpm だから、さらに優しい)。

「SQ5」は、SUV「Q5」の高性能バージョン。2012年にディーゼルモデルが発表されたのに続き、2013年1月に、今回のテスト車であるガソリンエンジン搭載モデルがデビューした。
「SQ5」は、SUV「Q5」の高性能バージョン。2012年にディーゼルモデルが発表されたのに続き、2013年1月に、今回のテスト車であるガソリンエンジン搭載モデルがデビューした。
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インテリアの基本デザインは、「Q5」と同じ。ステアリングホイールのまわりには、オーディオの操作スイッチやシフトパドルなどが備わる。
インテリアの基本デザインは、「Q5」と同じ。ステアリングホイールのまわりには、オーディオの操作スイッチやシフトパドルなどが備わる。
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シートの背もたれ上部にも、「SQ5」のロゴが入れられる。
シートの背もたれ上部にも、「SQ5」のロゴが入れられる。
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354psを発生する、スーパーチャージャー付きの3リッターV6エンジン。アイドリングストップ機能も備わっている。JC08モードの燃費値は、10.8km/リッター。
354psを発生する、スーパーチャージャー付きの3リッターV6エンジン。アイドリングストップ機能も備わっている。JC08モードの燃費値は、10.8km/リッター。
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意外な面もそこかしこに

いかに性能があり余っているかは、乗った瞬間グサッと実感できる。軽く踏んだつもりでも、3000rpmに達した途端、まるで目の前のブラックホールに吸い込まれるかのように、めくるめく加速が始まってしまう。高性能メルセデスの筋肉感ともBMW の滑らかな息吹とも違う、隅々まで理論で固められた“無機質感”が特徴。その息吹からは何気筒かの判断も難しい。情緒よりデータで勝負するタイプだ。

8段AT(ティプトロニック)との相性も抜群で、微妙な踏み方の変化を敏感に読み取る。軽~く踏むだけなら各ギアそれぞれ2000rpmほどで自動的なシフトアップが行われてしまう反面、攻める気になるとアワワッ………(汗)となるほどに突進する。まるで「ジキルとハイド」的で、アウディのお上品イメージを裏切られる瞬間も多い。そういえば、始動の瞬間、けっこうドスの利いた排気音を、しかしちょっと遠慮がちに聞かせてみせたりするのは愛嬌(あいきょう)か。

そんなすてきなミスマッチ感覚は、サスペンションからもうかがえる。路面の凹凸をことごとく柳に風と吸い込むのがアウディ流のはず。ところがSQ5は、予想外にガスッと来る。同時にクルマ全体にも上下動が伝わるが、さりとて単純に硬いともいえないのが不思議なところ。さしずめ、柔軟な足首と膝の関節、しなやかにふくらはぎを支える筋肉、そして奥に秘めた、たくましい腱(けん)という組み合わせである。

都内の道を行く「SQ5」。駆動方式はフルタイムの4WDのみ。
都内の道を行く「SQ5」。駆動方式はフルタイムの4WDのみ。
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カーナビ、オーディオ、通信など、多彩な“インフォテインメント”機能も「SQ5」の自慢。写真でシフトレバーの左下に見えるのが、その操作スイッチである。
カーナビ、オーディオ、通信など、多彩な“インフォテインメント”機能も「SQ5」の自慢。写真でシフトレバーの左下に見えるのが、その操作スイッチである。
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こちらは、車両の走行特性を変更できる「アウディドライブセレクト」の選択画面。
こちらは、車両の走行特性を変更できる「アウディドライブセレクト」の選択画面。
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荷室の容量は、5人乗車時で540リッター。後席を前方に倒すことで、最大1560リッターにまで拡大できる。
荷室の容量は、5人乗車時で540リッター。後席を前方に倒すことで、最大1560リッターにまで拡大できる。
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得意の舞台は高速道路?

複雑なのは、走行感覚の評価。こういうサスペンションだからといって、よくある意味でのスポーティーといえるかというと、そうでもない。ドライバーの身動きに間髪をいれずスパッと反応して向きを変えるというわけではなく、飛ばせば飛ばすほど、ステアリングを切り込んでからノーズが動くまで、わずかコンマ何秒だけだが遅れが出る。
だから、ここだと思うポイントより一呼吸の半分ほど早めに切るのがコツかもしれない。これをデヤ~ッと大げさにではなく、スイッと落ちついてやってのけるのがアウディスタイル。全高1625mmから想像できるように、重心も低くはない。ヘアピンカーブなどで攻めすぎると、リアの内側が浮き上がり気味にもなる。
そんな野卑な扱いさえしなければ、徹底してフラットな姿勢を保ち続ける安定志向が目立つ、SQ5。デ~ンとかまえたまま地平のかなたまで超音速で駆け抜けるクルーザーと解釈すべきだろう。お家芸のフルタイム4WD(クワトロシステム)も、悪天候や氷雪路面だけでなく、高速道路での直進性に大きく寄与してくれる。

ぜいたくな本革やファッショナブルなアルカンターラ張りなど、行き届いた内装を紹介するには、いくら文字数があっても足りない。ただ一つ確実に言えるのは、だらしないジャージ姿で乗ったり、汚れた荷物を積んだりする気になれないことだけだ。本体749万円と、ノーマル3.0 TFSIより76万円も高い代価を払えるだけでなく、こういう雰囲気を悠然と使いこなせるかどうかが、オーナーになるための第一条件だ。まず自分で自分に面接してからディーラーに行こう。

(文=熊倉重春/写真=田村 弥)

「SQ5」の0-100km/h加速タイムは、5.4秒。最高速度はリミッターの効く250km/hとなっている。
「SQ5」の0-100km/h加速タイムは、5.4秒。最高速度はリミッターの効く250km/hとなっている。
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メーターは、比較的オーソドックスな2眼タイプ。右の速度計は300km/hまで目盛りが切られる。
メーターは、比較的オーソドックスな2眼タイプ。右の速度計は300km/hまで目盛りが切られる。
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フロントのスポーツシート。背もたれと座面の表皮には、ルナシルバーのアルカンターラが用いられる。
フロントのスポーツシート。背もたれと座面の表皮には、ルナシルバーのアルカンターラが用いられる。
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テスト車のデータ

アウディSQ5

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4645×1910×1625mm
ホイールベース:2810mm
車重:2000kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ スーパーチャージャー付き
トランスミッション:8段AT
最大出力:354ps(260kW)/6000-6500rpm
最大トルク:47.9kgm(470Nm)/4000-4500rpm
タイヤ:(前)255/40R21 102Y(後)255/40R21 102Y(ピレリPゼロ)
燃費:10.8km/リッター(JC08モード)
価格:749万円/テスト車=827万円
オプション装備:ボディーカラー<エストリルブルー>(22万円)/バング&オルフセン サウンドシステム(15万円)/5ツインスポーク・スターデザイン・アルミホイール・チタンルック+255/40R21タイヤ(26万円)/アシスタンスパッケージ(15万円)

テスト車の走行距離:1789km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:301.3km
使用燃料:37.0リッター
参考燃費:8.1km/リッター(満タン法)

アウディSQ5
アウディSQ5
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アルミホイールのサイズは、標準で20インチ。テスト車はオプションの21インチを履く。
アルミホイールのサイズは、標準で20インチ。テスト車はオプションの21インチを履く。
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テスト車の荷室床下には、サウンドシステムの構成パーツであるウーファー(写真)が置かれる。
テスト車の荷室床下には、サウンドシステムの構成パーツであるウーファー(写真)が置かれる。
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