第325回:世界にまだない「全バーチャルコンパニオン」で競え?
大矢アキオ流 東京ショー2013追想
2013.12.06
マッキナ あらモーダ!
お楽しみあり、学びあり
第43回東京モーターショーが2013年12月1日に閉幕した。すでに報道されているとおり、前回ショーを7%上回る90万2800人の来場者を記録した。
ボクの関心はプレスデイではなく、一般公開日であった。プロではなく、普通の人々がどんなものに注目しているのか興味があったからである。
そこでボクは、「ゆりかもめ」で東京モーターショー会場の駅からひとつ隣の駅にある、お台場メガウェブで11月28日から29日の2日間開催された「イタリアンカートークショー」に出演させていただいたついでに、一般公開日のショー会場へと足を向けてみた。
エンターテインメント性で抜群だったのは、「ダイハツ・コペン」のパネル取り換えパフォーマンスである。タイムレスというか「Oh、モーレツ!」風なコスチュームのコンパニオン2人がアシスタントたちの手を借りながら、ボディーパネルを次々と張り替えてゆくものであった。
もちろんステージ用なので、難しい接合メカニズムはなく、マグネットである。だが、そのシンプルな視覚的リズムと楽しさは、一般公開日の来場者をおおいに引きつけたようで、毎回ショータイムになると黒山の人だかりができた。その熱気は、かつてGMが米国各地で巡回・展開した新車ショー「モトラマ」をイメージさせた。
いっぽうで、主要乗用車メーカー以外のブースもめぐった。
まず、訪ねたのはシートメーカーである。ここでのボクの素朴な疑問は、「なぜ、欧州車は、日本のように一発でバタンとバックレストが倒れるシートを採用しないのか?」である。
この疑問に対して、対応してくれた担当者の方は「ヨーロッパでは、ダイヤルによって無段階に角度が微妙に調節できるタイプのほうが好まれるのです」と教えてくれた。イタリアでサービスエリアに入ると途端に眠くなるボクとしては、欧州車にも日本式を導入してほしいと、切に願うのだが、そうはいかないらしい。ただし、日本車でもパワーシートは、「簡単に説明すると、欧州車のようなダイヤル式にモーターを付けたものです」とも教えてもらった。
シートといえば、毎回気になるのは、日本製路線バスの内装である。今回見せてもらったのは、「いすゞ・エルガ ハイブリッド ノンステップバス」だ。
残念ながらその内装デザインは、前回と比べて格段にリファインされたとは言い難かった。しかし、説明員の方の話を聞くと、そう簡単なものではないことも判明した。
「バリアフリー法」「ノンステップ認定制度」のふたつをクリアするバスを造るためには、視覚障害をもつ方々を考慮したシート色および出入り口とわかるフロアの色を採用する必要があるという。その解決策として、座席色はシートメーカー主導によるブルー、出入り口付近は鮮やかなイエローが用いられるというのだ。これまで、「欧州の洗練されたバス内装デザインを、日本も見習って」と重ね重ね記してきたボクだが、これは困った。願わくば、欧州メーカーと日本メーカーが競いあい、こうした視覚障害をもつ人々にも優しいデザインを、よりリファインできたらと思ったのであった。

大矢 アキオ
コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。20年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』、『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。
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