第38回「ポルシェ・ケイマン」&「ポルシェ・パナメーラ」

2014.02.28 水野和敏的視点 水野 和敏

扱いやすさを重視、顧客層の拡大を狙う――ケイマン

今回は、2台のポルシェに試乗します。最もスポーティーなミドシップ2シーター「ケイマン」と、ラグジュアリーな4ドアセダン「パナメーラ」を取り上げました。まずはケイマンから見ていきましょう。

2012年に2代目に進化したケイマンには、2.7リッター(275ps、29.6kgm)と3.4リッター(325ps、37.7kgm)、2種類の水平対向6気筒エンジンが用意されます。テストしたのは前者。PDKことデュアルクラッチ式の7段ATを備えた車両で、車両本体価格は659万円です。

運転席に着いてまず感じたのは、もう少し太くてグリップの柔らかいステアリングホイールのほうがスポーツカーとして扱いやすいし、“らしい”のではないかということ。ハイパフォーマンスカーには、しっかり手のひらを押しつけられるステアリングホイールの方が合っています。なぜなら、手で握らず、手のひらを押し付ける「押し手」の操作ができるからです。実際にケイマンに付いているステアリングは、まるで普通の実用セダンのようなスペックです。

続いて、ケイマンを動かしたとたん、「オレって、こんなに運転が下手だったっけ?」と、ドキッとしてしまいました。微速域では、ステアリング操作に対する反応が、ひどく鈍い。ステアリングを切ってからしばらく待つ、という感じなのです。
「だけど、ちっと待ってよ……。あまり運転に自信のない人が、特に『スポーツカーに乗る』という意識を持たず、気軽に乗ろうとしたら……。これくらい乗用車的に乗れる方が、親しみやすいのかな……」と、このセッティングの狙いがだんだんわかってきました。

つまり、ステアリングホイールの乗用車的な仕様と、その穏やかな応答性、そして後述しますがエンジンの特性などに、それ相応の販売台数をほこるメーカーとしての秘訣(ひけつ)が見え隠れしています。すなわち、日常域で親しみやすく、エントリーユーザーまでもが考慮されたクルマづくりが透けて見える気がするのです。

でも、安心してください! たとえ上記のような狙いで仕様が決められたとしても、やはりケイマンはポルシェがつくった一流のスポーツカーです。普通に走り始めると、40km/hを超えるあたりから、きちんとゲイン(舵<だ>の反応)が合ってきます。思った通りに、スッ、スッと向きを変えてくれて、とても気持ちがいい。クルマとの一体感がある。前後のロールバランスも非常に良好です。


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ポルシェ・ケイマン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4385×1800×1295mm/ホイールベース:2475mm/車重:1390kg/駆動方式:MR/エンジン:2.7リッター水平対向6 DOHC 24バルブ/トランスミッション:7AT/最高出力:275ps/7400rpm/最大トルク:29.6kgm/4500-6500rpm/タイヤ:(前)235/45ZR18 (後)265/45ZR18/価格:659万円
ポルシェ・ケイマン
    ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4385×1800×1295mm/ホイールベース:2475mm/車重:1390kg/駆動方式:MR/エンジン:2.7リッター水平対向6 DOHC 24バルブ/トランスミッション:7AT/最高出力:275ps/7400rpm/最大トルク:29.6kgm/4500-6500rpm/タイヤ:(前)235/45ZR18 (後)265/45ZR18/価格:659万円 拡大
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