アウディRS Q3(4WD/7AT)
見た目以上の実力車 2014.04.23 試乗記 アウディの最もコンパクトなSUV「Q3」に、“RS”の名を冠するハイパフォーマンスモデルが登場。その走りはどれほどのものなのか? 乗り心地はどうなのか? あわせて燃費も報告する。すごみもあるけど癒やし系
カッコの好みは人それぞれだが、『webCG』の駐車場に止まった「RS Q3」を遠目に初めて見たとき、「コレ、好き!」と思った。
20インチの大径ホイールが、コンパクトなボディーを余計コンパクトに見せる。そのなかで、黒いハニカムグリルがひときわ大きい。テールには太い楕円(だえん)の排気パイプが突き出し、前輪のホイールからは放熱効果をさらに高めるウエーブ形状のベンチレーテッドディスクが顔をのぞかせる。
といった具合に、随所で一生懸命、すごみをきかせているのだが、しかし全体のフォルムはズングリムックリのファニールックだ。そこがイイ。編集部のだれかさんが「蚊取り線香のブタみたいですね」とつぶやいた。ワタシはそこまで言ってないが、とにかく、見た目はRSシリーズ初の癒やし系だと思う。
スタートボタンを押して、エンジンをかける。うるさくはないが、タダモノじゃないよという予感はある。最近のアウディ流儀にのっとって、ステアリングは爽やかに軽い。そのハンドルを左にきって、駐車場から外堀通りに出る。もう夜に近い夕方だったが、このまま行きつけの峠道へ走りに行こう! と思った。RS Q3は動き出した途端、そんな気にさせるSUVである。
高性能は見せつけない
RS Q3はQシリーズ初の“RS”である。先輩の「Q7」「Q5」を差し置いて、真っ先にアウディトップガンの称号をゲットした。しかも“S”を経ない飛び級のウルトラQ3である。
クワトロシステムと組み合わされるエンジンは、5気筒の2.5リッターターボ。「TT RSクーペ」と同じ直噴ユニットをデチューンしたもの、といっても最高出力310psと、ノーマルの2リッター4気筒ターボをひと声100馬力上回る。0-100km/h=5.5秒の加速データは、「ゴルフGTI」(6.5秒)をかるくしのぎ、「ゴルフR」(4.9秒)に近い。
しかし、ユーロ6に適合した欧州製高性能車の例にもれず、RS Q3もまた普通に走っていれば、ハイパフォーマンスをとくべつ誇示するそぶりは見せない。
RS Q3のドライブセレクトは、「コンフォート」「自動」「ダイナミック」の3種類。最もハードなダイナミックを選ぶと、排気音が少し野太くなるが、明らかな違いといえばそれくらいだ。停車時に5気筒の息遣いに耳を澄ませようとしても、止まればさっさとアイドリングストップしてしまうし。むしろもう少しRSっぽさがあってもいいかなと感じたほどである。
変速機は、おなじみ7段Sトロニック。100km/h時も2000rpmチョイ切りまで回転を下げてくれる一方、シフトパドルを連続クリックすれば、100km/hでも3速まで落ちてスクランブル発進に備える。ただし、キックダウンによる自動変速だと、ダイナミックモードでも下のギアにつながるまでややタイムラグがあり、デュアルクラッチのスポーツ変速機らしさに欠けるきらいがあった。
ズングリしてても俊敏
軽量設計をうたうとはいえ、車重は1700kgある。コンパクトに見えても、前車軸にはちょうど1トンの重さが載っている。
だが、操縦感覚はアンコ型の重々しさとは無縁である。コーナーを攻めると、RS Q3はちょっとアイポイントの高いハンドリングカーである。ペースを上げれば上げるほどボディーが小さく感じられるのは、すぐれたスポーティーカーの証拠だ。走れるズングリムックリだ。
ロールは軽微、というか、体感的にはほとんどロールせずにコーナーを抜ける。独特だが、不自然ではない。ステアリングはそんな場面でもすっきり軽く、ノーズヘビーをまったく意識させない。ブレーキは、足の裏にディスクパッドの圧力がイメージできるほどフィードバックがあり、その結果、コントロール性が高い。
夜の真っ暗なワインディングロードで印象的だったのは、ハイビームアシストである。車載カメラで行く手の道路を見て、ヘッドランプのメインとハイビームを自動的に切り替えてくれる機能である。このクルマ初出の装備ではないが、使ったのは初めてだ。左手の指をパドルシフトに専従させることができるため、思った以上にありがたみがあった。
名札と値札にインパクト
SUV(スポーツユーティリティーヴィークル)とはいえ、リフトアップした四駆SUVのなかには、本気でスポーツ走行をすると「そんなキャラじゃないのに……」と思わせるクルマも多いが、RS Q3はたしかに“Q3のRS”である。
300kmあまりを走ったテスト中の燃費は、満タン法で8.8km/リッター。「A3」派生のSUVと考えれば、もう少し走ってもよさそうだが、RSだから仕方ない。
RSだから仕方ないといえば、価格である。実は最後まで値段を知らずに試乗していたのだが、のちに718万円と聞いてびっくりした。3月発売時は698万円だったが、消費税アップでこの新価格になった。ある意味、RS Q3の一番の“性能”は、価格かもしれない。
だが、TTクーペのRSは今や915万円する。RS Q3より50psハイチューンな2.5リッター5気筒エンジンを積むとはいえ、大台が見えてきた。それに比べると、ダートにも入っていけるRS Q3はお買い得、と考えるか。いずれにしても、RSはアウディの高嶺(高値?)の花なのである。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=郡大二郎)
テスト車のデータ
アウディRS Q3
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4410×1840×1595mm
ホイールベース:2605mm
車重:1700kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター直5 DOHC 20バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最大出力:310ps(228kW)/5200-6700rpm
最大トルク:42.8kgm(420Nm)/1500-5200rpm
タイヤ:(前)255/35R20 97Y/(後)255/35R20 97Y(ピレリPゼロ)
燃費:11.5km/リッター(JC08モード)
価格:718万円/テスト車=743万円
オプション装備:ファインナッパレザー ダイヤモンドスティッチング (11万円)/アシスタンスパッケージ (14万円)
※価格はいずれも8%の消費税を含む。
テスト車の年式:2014年型
テスト車の走行距離:4250km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(0)/高速道路(9)/山岳路(1)
テスト距離:308.7km
使用燃料:35.0リッター
参考燃費:8.8km/リッター(満タン法)/9.5km/リッター(車載燃費計計測値)

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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