BMW 328i(FR/8AT)【海外試乗記】
定番は迷わない 2011.12.19 試乗記 BMW 328i(FR/8AT)6年ぶりにフルモデルチェンジを受けたBMWの主力モデル「3シリーズ」。スペイン・バルセロナで開かれた国際試乗会でその走りを試した。
立派に見える新型
バルセロナ空港の駐車スペースにずらりと行儀よく並べられた「3シリーズ」をみて、「ん?」と思うことがあった。タイヤのあらぬところが妙にささくれている。走行に影響するほどではないにせよ、公道でいくら飛ばせど、こういう減り方はまず考えられない。運の悪いクルマに当たったのかな……と、左右のクルマをみると、どれも同じように、ショルダー部は戦いの痕跡を残していた。
これって、もしや……。
と気にかけつつも、まずは車内へ。先日の東京モーターショーに展示されていたコンセプトカー「i8」のデザインを見てもおわかりの通り、「レイヤー」がひとつのキーワードになっている最新のBMWのデザイン言語は、車内のそこかしこに見てとれる。
立派になったセンターコンソールは運転席側に傾きながら広がるため、膝まわりは若干圧迫感が強い。対して助手席は、大きめのセンタートンネルも気にならない程度に足の置き場の自由度がある。後席は望外に立派で、50mm延びたホイールベースのぶんだけ、レッグスペースも若干ながら広がったかなという印象だ。
一気に50リッターも容量が増したトランクルームは、その下部に大きめのストレージが設けられている。ここには将来ハイブリッド用のリチウムイオン電池や、アドブルー用のデバイスが収められることは想像に難くない。
日本市場においては、たった10mmかそこらのはみ出しのために、立体駐車場に入れられないという事態を引き起こした先代「E90型」の前期モデル。その教訓を生かしてか、この「F30型」の新型3シリーズは、日本仕様のみ全幅1800mmジャストで導入されるそうだ。そう、新型3シリーズ、意外なことに幅は先代の後期モデルとほぼ同寸がキープされている。対して全長は95mmの延長となったが、これは先述のスペースユーティリティーや衝突要件も織り込んでのものだろう。
それでも新型3シリーズ、一気に立派になったように見える最大の理由は、前37mm、後47mmと拡大されたトレッドによるところが大きい。それらを包み込む造形が特に前側の押し出しを強くみせている。このあたりは先に発表された「ポルシェ911」と同じ道理だ。
並の直4じゃない
発売当初に用意されるエンジンは、ガソリン2本、ディーゼル2本の4本立てとなる。うち、試乗に供されたのは日本市場にも導入される、2リッター直列4気筒直噴ツインスクロールターボの「328i」だ。先に日本仕様の「5シリーズ」がスイッチしたように今後は328iも4気筒となり、BMWのアイコンと化した直列6気筒は「335i」および「3シリーズハイブリッド」などのプレミアムモデルに搭載されることになる。
BMWが展開するこの豪快なダウンサイジング施策については、ネガティブな意見も多いことかと思う。かくいう僕も、あのおいしすぎるエンジンがちょっと頑張れば漏れなくついてくるという特典が失われたことについては、残念な思いがいまだ拭えない。が、世界的な事情をみるに、今までBMWが直6の量販を守り通してこられたことがイレギュラーであるのも確かだ。
そんな思いを抱きながら乗った件(くだん)の直列4気筒は、エンジン屋としてのBMWの仕事の緻密さを感じさせるにふさわしいものだった。わずか1250rpmで発生させるという35.7kgmのトルクは、ゆるりと走っている限り、8段ATのギアがどこに入っているかをまったく気にさせないほど力強く車体を推し進める。
今や過給器ものでは当然となった、ECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)によって描かれる台形トルクバンドを持ち合わせていることはこのフィーリングからも察することができるが、328iの場合、これに伸びやかなパワーカーブを重ねて高回転域へとつながるフィーリングもきっちり作り込まれているところがいい。
ピークの245psへは当然低めの回転域で達するが、パワーのタレる感覚は極力抑えられ、7000rpm手前辺りまではしっかりとパワーが乗っていく感触をドライバーに伝えてくれる。そしてそこから7500rpmのレッドゾーンまでスッと回しきるというこの味付けは、並の直噴ターボユニットではなかなかかなえられないものだ。
一方で、十分実用走行に使える「ECO PROモード」で瞬間燃費計をのぞけば、120km/h程度の高速巡航で13km/リッター辺りの数字を示すのだから、驚くほどではないにせよ効率も相当に高い。ピストンの数は違えど、エンジンを作らせればBMWは普通には済ませない。そう思わせる魅力はある。
軽快感と安定感が両立
そうして一般道での試乗を繰り返しつつ、たどり着いたのはF1の舞台でもあるカタルーニャ・サーキット。ここで先のタイヤの謎が解ける。
今回の試乗会ではサーキット走行用の車両を用意せず、全ての行程を1台の試乗車で済ませるようにセットされていたわけだ。なるほどタイヤもガシガシ減るはずである。と共に、オドメーターから察するに数千キロもそんな使い方をされ続けてきたかと思うと、一般道試乗でみじんもみせなかった疲れのなさにちょっとびっくりさせられた。
既にBMWのモデルではおなじみとなっているドライビング・パフォーマンス・コントロールを、多用してきた「コンフォート」モードから「スポーツ」側のモードに切り替える。それによってサスペンションやアクティブステアリング、ミッションやスロットルのマネジメント等が最適化される仕組みだ。凹凸の目立つパドックをゆるりと走っても不快さはまったく感じられない。減衰性の高い第3世代のランフラットタイヤを履いているとはいえ、新型3シリーズ、乗り心地や静粛性に関しては本当に洗練された印象だ。
F1が走るコースで慣熟走行を2周した後にフリーで5周。それを2セット繰り返した。満足いく走行環境で際立ったのは、軽快感と安定感とが非常に高い次元で両立しているということである。
コーナリングのアプローチは、多少の深い突っ込みからかじを当てても、前側は荷重に負けてねじれることなどなくラインをしっかりトレースする。そしてアペックスに向かうまでは後軸をしっかりと踏ん張り抜かせ、そこからアクセルを踏み込んでも、駆動力をそうやすやすと発散させることはない。そこまで粘り腰でありながら、次のコーナーへと向かう際にはきびすを返したようにスイッと向きを変えて、何事もなかったように安定した旋回姿勢に移る。一連の動作は乗っている限り、まったく無駄のない、デジタライズされたものにも思えてくる。
死角は見当たらない
乗っている側にしっかりインフォメーションがもたらされ、それを豊かに感じさせてくれるところは、従来のBMWのアクティブ系シャシーとは違うところだ。そのロール量は想像以上に少ないが、ドライバーには動きの一つ一つが大きくゆったりと、かつ入力に対してとことん比例した挙動となって受け止められる。実際の車体の動きも極めて比例しているのだが、それを誰もが運転実感として共有できるように柔らかくフィードバックできているのだろう。
先代のE90型ではそんな術(すべ)を身につけるとは思わなかったし、アクティブデバイス満載で登場したE60型「5シリーズ」の印象を思い出せば、まさか同様のソリューションがこんな境地に至るとは思いもよらなかった。とりもなおさず、それは公道走行での快適性と安心感につながり、実際新型3シリーズはスペインの狭い山岳路を正確無比のライントレースで苦もなく走り抜いてくれた。
あらためて新型3シリーズを見る。ライト周辺にうかがえる新しいデザインギミックをスッキリと消化したエクステリアに違和感を持つ人はいないだろう。あらゆるネガをつぶした上で、ドライバーとの対話性をさらに深めた新しい3シリーズの出来に死角は見当たらない。
ちなみに日本市場にはこの328iの他、同様の2リッター直噴ターボをより燃費側にマネジメントした「320i」が導入されるという。すなわち今度の320iは、エントリーにして3リッターNA級のトルクを持つデイリーセダンとして並べられるということだろうか。
後々に追加されるバリエーションも含めて、輸入車市場の台風の目となるようなトピックをたくさん抱えたこのクルマ、来春早々には日本上陸の予定である。
(文=渡辺敏史/写真=BMWジャパン)

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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