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トヨタ・ヴィッツ/パッソ 開発者インタビュー

女心を追い求めるオジサンたち 2014.05.21 試乗記 鈴木 真人 トヨタ自動車
製品企画本部
ZP チーフエンジニア
金森善彦(かなもり よしひこ)さん

女性ユーザーの占める割合が多いトヨタの「ヴィッツ」と「パッソ」。「女心」をつかむためのこだわりを開発者に聞いた。

年齢層より、趣味嗜好

「ヴィッツ」と「パッソ」がほぼ同時に改良されたことで、試乗会も合同で行われた。両方の開発をまとめたのが、チーフエンジニアの金森善彦さんである。それぞれのクルマの主査の方を交え、ヴィッツとパッソの目指す方向について話を伺った。

1週間の差でヴィッツとパッソを発売することができたので、こうして役割分担をわかっていただくことができます。

――この2台は、ユーザー層は重なる部分もありますよね?

どちらも女性ユーザーが多いのは確かですが、求めるものはかなり違います。パッソはいわゆるカワイイ系で、ヴィッツはもう少しオトナでオシャレ系という感じです。

――パッソのほうが年齢層が若いんですか?

そうとも言えなくて、ヴィッツもパッソも若い人からシニアまで幅広いんですよ。40代、50代の方にもパッソのふわっとした優しい感じが好評で、きれいなピンクのボディーカラーを選んでいかれます。実際の年齢というより、趣味とか嗜好(しこう)の問題なんですよね。メカニズムとか歴史に付加価値を求める男性と違って、女性は洋服を選ぶのと同じ感覚なんです。それも2通りあって、自分のファッションとのマッチングを考えて選ぶ方と、“とにかくこれが好き!”という一直線な方がいます。

――女性向けのクルマ開発は、男性向けとはちょっと違う……。

オジサンの考えで作ると、だいたいはハズれますよ(笑)。

<プロフィール>
1982年入社。ボデー設計部、先行車両開発企画室などを経て、2004年に第2トヨタセンター製品企画室にて「オーリス」「ブレイド」のチーフエンジニア(CE)、2007年レクサス本部製品企画で「GS」のCEを担当。2013年より製品企画本部でスモール系車両のCEを務める。
<プロフィール>
    1982年入社。ボデー設計部、先行車両開発企画室などを経て、2004年に第2トヨタセンター製品企画室にて「オーリス」「ブレイド」のチーフエンジニア(CE)、2007年レクサス本部製品企画で「GS」のCEを担当。2013年より製品企画本部でスモール系車両のCEを務める。
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「ヴィッツ」のボディーカラーは17色が用意される。写真は「チェリーパールクリスタルシャイン」。
「ヴィッツ」のボディーカラーは17色が用意される。写真は「チェリーパールクリスタルシャイン」。 拡大

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ヴィッツはメリハリ、パッソは癒やし系

――幅広い女性の好みに合わせるために、どんな工夫を?

バリエーションを増やすことは大切ですね。色は大きなアピールポイントになります。ヴィッツは17色、パッソは15色のボディーカラーをそろえていて、このラインナップはトップクラスだと思います。

――コストアップにつながるのでは?

塗装工場のタンクは通常200リッターぐらいなんですが、ヴィッツを製造している豊田自動織機にはカートリッジタイプの機械があるんですよ。タンクが小さめで、20リッターほどです。4〜5台塗装できる規模ですね。あまり多く出ないボディーカラーも、これで対応できるわけです。

――このクラスでは燃費も大切なファクターです。かなり向上しましたが、クラストップの数字ではありませんね?

燃費に特化したモデルは作りませんでした。エコタイヤを履かせたり燃料タンク容量を小さくしたりすればもっと数字を上げることはできたでしょうけどね。
パッソは軽自動車と競合しますから、今までは「燃費が……」と言われるとつらいところがありました。でも、これで「遜色ないですよね!」と返せるようになったと思います。エンジンが1リッターで余裕がありますし、最近の軽は価格が上昇していますからパッソは十分に対抗できると思いますよ。

――ヴィッツ、パッソともに女性向けのグレードがありますね?

ヴィッツは3代目になってユニセックスなデザインに転換し、これが好評でした。「ジュエラ」は女性を意識した華やかな意匠を取り入れ、メッキが多めでメリハリのある印象です。今回のマイナーチェンジで、さらに押し出し感が強まりました。パッソは「+Hana」というグレードが女性向けです。こちらはふんわりとした癒やし系ですね。ヴィッツのメッキに対し、こちらはパール系のパーツを多用しています。

金森チーフエンジニア(写真右)と「ヴィッツ」担当の橋壁清史製品企画本部ZP主査(写真左)。
金森チーフエンジニア(写真右)と「ヴィッツ」担当の橋壁清史製品企画本部ZP主査(写真左)。
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写真は「ヴィッツU」の1.3リッターモデル。燃費値は25.0km/リッター(JC08モード)を達成している。
写真は「ヴィッツU」の1.3リッターモデル。燃費値は25.0km/リッター(JC08モード)を達成している。 拡大
「パッソ +Hana」(1リッターFFモデル)の燃費値は27.6km/リッター(JC08モード)。
「パッソ +Hana」(1リッターFFモデル)の燃費値は27.6km/リッター(JC08モード)。 拡大

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ショッピングセンターで生の声を聞く

――こういったアイデアは、女性スタッフから提案されるんですか?

開発チームに女性を何人か入れるだけでは、多様な好みを拾い上げるのは難しいでしょう。幅広いマーケットリサーチをしています。

――お金がかかりますね。

そうでもないんですよ。彼は週末になると市場動向を探りに行くんです。

彼というのは、パッソの主査を務めた鈴木敏夫さんだ。この10年ずっと女性比率の高いクルマを作り続けてきた方である。

鈴木:ショッピングセンターには、生の声があふれていますよ。さまざまなクルマで買い物に来ていますから、荷物をどう載せるのかなど、現場の事例を直接見ることができるんです。コンビニに停めてあるクルマを見ても、女の子がどんな使い方をしているかの情報を得られます。渋滞でも、隣に並んだクルマをつい見てしまいますね。まあ、職業病みたいなものです(笑)。

「レクサス」とは違ったクルマ作りをする必要があります。“こうやっていいクルマを作りましたよ”だけではユーザーに届きません。

女性が喜ぶクルマを作るために、オジサンたちは日々努力を怠らないのだ。鈴木さんは、家に帰ってもリサーチを行っている。

鈴木:娘が2人いるので、資料を家に持って帰って見せるんですよ。いろいろキビしい注文を付けられます。

――その結果がクルマに反映されるんですから、娘さんとしてはうれしい話ですね!

鈴木:それが、パッソは好みじゃないと言うんですよ。娘が買ったのはヴィッツでした……。

女心は十人十色。とらえがたい“好み”や“気分”を探るため、オジサンたちの終わりのない戦いが続いていく。

(文=鈴木真人/写真=田村 弥)

「パッソ」の開発を担当した柘植定製品企画本部ZP主幹(写真左)、鈴木敏夫製品企画本部ZP主査(写真中央)、金森チーフエンジニア(写真右)。
「パッソ」の開発を担当した柘植定製品企画本部ZP主幹(写真左)、鈴木敏夫製品企画本部ZP主査(写真中央)、金森チーフエンジニア(写真右)。
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休日にはショッピングセンターに出向き、クルマの使われ方を研究しているという鈴木さん。
休日にはショッピングセンターに出向き、クルマの使われ方を研究しているという鈴木さん。 拡大

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鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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