第349回:【Movie】ポーランド「ちょっと懐かしカー」ウォッチング
2014.05.30 マッキナ あらモーダ!わずか2年で消えた!? 懐かしカー
最近までイタリアのニュースヘッドラインは、毎日のように欧州連合(EU)加盟国でつくる欧州議会選挙で占められていた。
日本でEUというと、いまだにドイツ、イギリス、フランスといったところを真っ先に思い浮かべるが、ポーランドもEU入りしてはや10年を迎える。2011年に本欄で「この街は今が『3丁目の夕日』だ!」と題してポーランドの自動車風景をお伝えした。そしてボクは昨2013年夏ふたたび同地の土を踏んだ。
するとどうだ、わずか2年の間に、ワルシャワの街を走るクルマは立派なモデルが増えていた。知人の若者は「ちょっと小さいクルマなので、窮屈な思いをさせて悪いな」と言いながら「ホンダ・レジェンド」でやってきた。
今回初めて地方へと足を伸ばしたが、西欧諸国もびっくりの広い高速道路が続く。それも無料だ。すべてのクルマには、ナンバープレートのほか、車両認識を容易にするホログラム入りステッカーが貼られている。イタリアも導入しようとしているものの、いまだ実現に至っていない最新システムである。
豊かさの背景は、ポーランドの2013年乗用車生産台数を見ればわかった。その数約55万台。フィアット、フォルクスワーゲン、オペル、フォードといった外国ブランドの生産によるものだが、イタリアの34万台を軽く凌駕(りょうが)しているのだ。
いっぽうで、EU入りして間もない頃から普及したモデルや、それ以前の社会主義時代の面影を残すクルマは、以前よりさらに路上から姿を消しつつある。もっとも印象的だったのは、動画の最後で紹介している、旧東ドイツ車「トラバント」であった。もはや実用車ではなく、限りなくオブジェに近い扱いだ。
そして、往年のポーランド製国民車は、すでにヒストリックコレクションのミニカーとして販売されている。前述の知人は、ボクがコテコテの社会主義時代におけるポーランド製国民車「シレーナ」について言及すると、「古いモノ知ってるな」という顔で爆笑した。
時代は流れる。
間もなく「ちょっと懐かしカー」たちは、永久に見られなくなってしまう。「誰かがそれを、やらねばならぬ」という、『宇宙戦艦ヤマト』の主題歌が頭をうずまいたボクが思わず撮影したのが、今回の動画である。
(文と写真=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>)
大矢アキオのポーランド「ちょっと懐かしカー」ウォッチング
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |

大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、24年間にわたってリポーターを務めている。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
-
第932回:参加者9000人! レトロ自転車イベントが教えてくれるもの 2025.10.16 イタリア・シエナで9000人もの愛好家が集うレトロ自転車の走行会「Eroica(エロイカ)」が開催された。未舗装路も走るこの過酷なイベントが、人々を引きつけてやまない理由とは? 最新のモデルにはないレトロな自転車の魅力とは? 大矢アキオがリポートする。
-
第931回:幻ですカー 主要ブランド製なのにめったに見ないあのクルマ 2025.10.9 確かにラインナップされているはずなのに、路上でほとんど見かけない! そんな不思議な「幻ですカー」を、イタリア在住の大矢アキオ氏が紹介。幻のクルマが誕生する背景を考察しつつ、人気車種にはない風情に思いをはせた。
-
第930回:日本未上陸ブランドも見逃すな! 追報「IAAモビリティー2025」 2025.10.2 コラムニストの大矢アキオが、欧州最大規模の自動車ショー「IAAモビリティー2025」をリポート。そこで感じた、欧州の、世界の自動車マーケットの趨勢(すうせい)とは? 新興の電気自動車メーカーの勢いを肌で感じ、日本の自動車メーカーに警鐘を鳴らす。
-
第929回:販売終了後も大人気! 「あのアルファ・ロメオ」が暗示するもの 2025.9.25 何年も前に生産を終えているのに、今でも人気は健在! ちょっと古い“あのアルファ・ロメオ”が、依然イタリアで愛されている理由とは? ちょっと不思議な人気の理由と、それが暗示する今日のクルマづくりの難しさを、イタリア在住の大矢アキオが考察する。
-
第928回:「IAAモビリティー2025」見聞録 ―新デザイン言語、現実派、そしてチャイナパワー― 2025.9.18 ドイツ・ミュンヘンで開催された「IAAモビリティー」を、コラムニストの大矢アキオが取材。欧州屈指の規模を誇る自動車ショーで感じた、トレンドの変化と新たな潮流とは? 進出を強める中国勢の動向は? 会場で感じた欧州の今をリポートする。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。