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【スペック】24G:全長×全幅×全高=4535×1820×1685mm/ホイールベース=2620mm/車重=1540kg/駆動方式=4WD/2.4リッター直4DOHC16バルブ(190ps/7000rpm、22.6kgm/4400rpm)/価格=275万円(テスト車=310万円/Hondaインターナビ+リンクアップフリー+センターディスプレイ+ETC車載器=35万円)

ホンダCR-V 24G(4WD/5AT)/20G(FF/CVT)【試乗記】

帰国子女の逆襲 2011.12.15 試乗記 鈴木 真人 ホンダCR-V 24G(4WD/5AT)/20G(FF/CVT)
……310万円/325万円

フルモデルチェンジを受け、4代目に生まれ変わった「CR-V」。2.4リッターモデルに加え、日本仕様のみに2リッターモデルが追加された。新型はどんな進化を遂げたのか。

世界で売れるのに、日本では売れない

正直なのはとてもいいことだけれど、新車の説明でいきなり売れていないことを強調されるのには戸惑った。知らなかったのだが、「ホンダCR-V」は売れていないんだそうだ。月にたった300台だというから、これは深刻だ。「日産エクストレイル」や「トヨタ・ヴァンガード」に圧倒的に負けている。CR-Vはこのジャンルの代表選手のようなものだと思っていたのだけれど、これが実情である。「特別仕様車を投入しても売れないんです」とさらに追い打ちをかけるような説明までして、自虐的にもほどがある。

わざわざ販売不調を力説したのには、理由がある。世界に目を広げれば、しっかり売れているのだ。160カ国で年間50万台以上の販売実績がある。日本だけが、特殊な状況らしい。原因のひとつとして考えられるのが、エコカー減税の対象になっていないことだ。ライバルたちがしっかり認定を受けているから、これは明白な弱点となる。

だから、新型では燃費が大きなテーマになったことは確かだ。空力性能向上、軽量化、エンジンのフリクション低減技術の投入などで、2010年基準を15%上回る数値を達成した。技術的側面だけでなく、モデル構成の変更も貢献している。
新型には2つのグレードがあり、「24G」は2.4リッターエンジンにATと4WDの組み合わせで、「20G」は2リッターエンジンにCVTのFFモデルである。先代は2.4リッターエンジンに統一されていたが、2代目まであった2リッターを復活させたのだ。この仕様は、日本だけで販売される。

新型「CR-V」はファブリックシートを標準とし、オプションで本革シートが選べる。
新型「CR-V」はファブリックシートを標準とし、オプションで本革シートが選べる。 拡大
新しい4WDシステムは、電子制御化され、走破性と燃費性能が高められたという。燃費は、JC08モードで11.6km/リッター、10.15モードで12.2km/リッターを達成した。
新しい4WDシステムは、電子制御化され、走破性と燃費性能が高められたという。燃費は、JC08モードで11.6km/リッター、10.15モードで12.2km/リッターを達成した。 拡大
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ホンダ CR-V の中古車

小さくなったが見た目は立派

努力の結果、JC08モードで24Gがリッター11.6km、20Gが14.4kmの数値を得た。悪くはないが、正直なところインパクトがあるとも思えない。燃費向上のためにはアイドリングストップ機構なども有効だが、CR-Vの“プレミアム感”を優先して採用しなかったそうだ。ハイブリッドモデルがないのも、同様の理由からである。

初代CR-Vは「シビック」をベースにし、手頃なサイズでスタイリッシュな都会派SUVという位置づけだった。2代目ではそのスタイルが踏襲されたが、3代目で大きくかじを切った。ボディーが大型化するとともにデザインもボリューム感を強調し、手軽さよりもプレミアム性を前に押し出したのだ。ただ、その後欧米から大きくてパワフルで豪華という圧倒的な存在感を持ったプレミアムSUVが怒濤(どとう)のごとく流入してきたから、少々中途半端な印象をもたれてしまった感は否めない。

2代目が「モアCR-V」、3代目が「ネクストCR-V」で、今回のキャッチは、「スーパーCR-V」だそうだ。なんともベタなフレーズだが、これは「超えていく」ことを表しているのだという。CR-Vを超えるのはCR-Vだけ、というわけだ。初代の「ホンダ買うボーイ」からずいぶん遠くにきてしまった。グローバルモデルになって、すっかりハイカラな気分が身についたのだ。開発陣は、それを「帰国子女」という言葉で表現していた。

全長、全高が30ミリずつ小さくなったというが、見た目は立派になった印象だ。特に正面からの顔は威圧感がある。リアエンド上部はコブダイのようにおでこが飛び出して、力感があふれる。収納力強化にも効いていそうだ。 凝った造形のランプ類は、今の流行を反映していて派手な彩りを添える。

日本のみに設定される150psの2リッターエンジン。燃費は、JC08モードで14.4km/リッター、10.15モードで15.4km/リッター。
日本のみに設定される150psの2リッターエンジン。燃費は、JC08モードで14.4km/リッター、10.15モードで15.4km/リッター。 拡大
オプションの本革シートは単体での設定がなく、Hondaインターナビ、電動ガラスサンルーフ、サイドエアバッグ&サイドカーテンエアバッグシステムのセットオプションとなる。価格は77万円。
オプションの本革シートは単体での設定がなく、Hondaインターナビ、電動ガラスサンルーフ、サイドエアバッグ&サイドカーテンエアバッグシステムのセットオプションとなる。価格は77万円。 拡大
ホンダCR-V 24G(4WD/5AT)/20G(FF/CVT)【試乗記】の画像 拡大
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プレミアムだけど使い勝手も上々

室内の意匠は明確に方向を転換している。ダッシュボードとセンターコンソールが、初めて完全につながった。前後ウォークスルーがウリだった初代から3度のモデルチェンジを経て、ごく普通のしつらえになった。カーナビモニターの上には別の液晶画面があり、燃費やオーディオなどの情報を表示する。運転席からの眺めは、このジャンルにしてはAピラーがことのほか細めで、視界をむやみに遮らないのがうれしい。

間違いなく便利なのが、リアシートを一発で折りたたむ機構だ。テールゲートを開けて側面にあるレバーを引くと、背もたれがパタパタと倒れてフラットな空間が出現する。片手に荷物を持ったまま操作できるのだ。プレミアム志向であろうとも、細かい使い勝手に意を配るのが日本車の良き伝統である。

東京モーターショー開催中で混雑するお台場での限られた試乗時間だったが、質感ははっきりと伝わった。これ見よがしにゴージャスさを訴えかけてくるものではないが、大人がしみじみと感じる種類の、いいモノ感がある。静粛性、乗り心地は十分なレベルと言えるだろう。

ただし、24Gと20Gでは、小さいとは言えない差があった。20Gも、動力性能に不満はない。発進加速で、もたつくようなことはないし、力強いと言っても差し支えない。しかし、24Gと比べてしまうと、物足りなさを感じてしまうのだ。エンジンパワーの違いだけでなく、ATと組み合わされた柔らかな力感が、一段上の乗り物に思わせてしまう。余裕からくる優雅さが、24Gには感じられる。27万円という価格差以上に、印象の違いがあった。

CR-Vのターゲットは、ものすごく単純にまとめてしまうと、ソコソコの金持ちでセンスのいい層ということになるだろう。商品説明では、開発の背景にリーマンショック以降の「社会生活の抑制の必要性」があるという話があった。しかし、プレミアムSUVはあくまでも高級感を追求しなくてはならない。折り合いをつけるのは難しい。

新型CR-Vは、効率と機能性、信頼性の3つの要素をバランスよく進化させたのだという。たしかに、その成果は出ている。しかし、昨今の地方選挙を見ればわかる通り、人は突出したものにしか引かれないようなのだ。思えば、初代CR-Vはとんがった存在だった。

(文=鈴木真人/写真=峰昌宏)

「24G」の室内。「20G」との違いは、シルバー塗装のインストゥルメントパネルガーニッシュがメタリックフィルムになるほか、ステアリングホイールにシフトパドルなどが備わる。
「24G」の室内。「20G」との違いは、シルバー塗装のインストゥルメントパネルガーニッシュがメタリックフィルムになるほか、ステアリングホイールにシフトパドルなどが備わる。 拡大
Hondaインターナビを選ぶと設定されるセンターディスプレイ。オーディオ情報をはじめ、ナビのルート案内を補足する右左折情報、燃費、時計などを表示する。ステアリングホイールに備わるスイッチで操作が可能。
Hondaインターナビを選ぶと設定されるセンターディスプレイ。オーディオ情報をはじめ、ナビのルート案内を補足する右左折情報、燃費、時計などを表示する。ステアリングホイールに備わるスイッチで操作が可能。 拡大
5名乗車時の荷室容量は、先代モデルより65リッターアップの589リッターを確保。リアシートを倒すことで最大1146リッターまで拡大することができる。6:4分割可倒式リアシートは、座面の両サイドにあるストラップまたは、荷室の左右にあるレバー操作で簡単に倒すことができる。(写真をクリックするとリアシートのシートアレンジが見られます)
5名乗車時の荷室容量は、先代モデルより65リッターアップの589リッターを確保。リアシートを倒すことで最大1146リッターまで拡大することができる。6:4分割可倒式リアシートは、座面の両サイドにあるストラップまたは、荷室の左右にあるレバー操作で簡単に倒すことができる。(写真をクリックするとリアシートのシートアレンジが見られます) 拡大
【スペック】20G:全長×全幅×全高=4535×1820×1685mm/ホイールベース=2620mm/車重=1460kg/駆動方式=FF/2リッター直4SOHC16バルブ(150ps/6200rpm、19.5kgm/4300rpm)/価格=248万円(テスト車=325万円/前席シートヒーター付き本革シート+運転席8ウェイパワーシート+運転席ランバーサポート&Hondaインターナビ+リンクアップフリー+センターディスプレイ+ETC車載器&チルトアップ機構付き電動スモークドガラスサンルーフ&前席用i-サイドエアバッグシステム+サイドカーテンエアバッグシステム=77万円)
【スペック】20G:全長×全幅×全高=4535×1820×1685mm/ホイールベース=2620mm/車重=1460kg/駆動方式=FF/2リッター直4SOHC16バルブ(150ps/6200rpm、19.5kgm/4300rpm)/価格=248万円(テスト車=325万円/前席シートヒーター付き本革シート+運転席8ウェイパワーシート+運転席ランバーサポート&Hondaインターナビ+リンクアップフリー+センターディスプレイ+ETC車載器&チルトアップ機構付き電動スモークドガラスサンルーフ&前席用i-サイドエアバッグシステム+サイドカーテンエアバッグシステム=77万円) 拡大
鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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