スバル・レヴォーグ1.6GT EyeSight(4WD/CVT)/1.6GT-S EyeSight(4WD/CVT)/2.0GT-S EyeSight(4WD/CVT)
その完成度に迷いなし 2014.06.16 試乗記 スバルが満を持して投入したスポーツワゴン「レヴォーグ」に試乗。強力なライバルの中に割って入ろうという、ニューモデルの実力を探る。日本を向いてつくったサイズ
看板車種の「レガシィ」が北米や新興市場といった仕向け地からの要請で拡大化する必要に迫られる一方、それを望まない日本市場との乖離(かいり)は、会社規模の小さなスバルにとって頭の痛い問題だったはずだ。その苦悶(くもん)は現行レガシィの四隅が絶壁化したデザインにも表れている。そこで彼らは、枝を分けるかたちで全長を5ナンバーサイズに抑えたステーションワゴンを企画した。もちろん少数意見を無視してその縛りを解き、サイズ拡大を伴う一本化という道も用意されていたわけだが、改名と引き換えにそれをよしとしない決断に至ったのは、少なくとも日本のユーザーにとって朗報だろう。「レヴォーグ」は現状国内専売とされているが、同様に大きなスバルを望まない欧州市場への導入可能性も考えられる。一方でレガシィは今後D~Eセグメント級の車格をもって、スバルの数的主力を担うことになるわけだ。
レヴォーグのグレード構成はハード的には至って明快だ。エンジンには1.6リッターと2リッターの共に直噴ターボを用意、組み合わされるドライブトレインは、全て4WDおよびスバルがいうところの「リニアトロニック」、すなわちCVTとなる。
両エンジン共にサスペンションセットは2種類あり、標準的仕様の「GT」に対して、「GT-S」はフロント側にピロブッシュを封入した鍛造ロワアームや、ビルシュタインダンパーなど、走りの精度をより高めたパッケージとなっている。つまり基本はエンジン×2、サスセット×2と計4種の仕様が存在することになるが、1.6リッターモデルには「EyeSight ver.3(以下、アイサイト3)」を装備しない最もベーシックな仕様も用意されるため、全部で5グレードの展開となっている。
進化を続ける「ぶつからないクルマ」
その名の通り、3代目となったアイサイトは、ステレオカメラの高解像度化&カラー化と、それに伴う画像処理能力の向上により、対象物や前走車の認識密度を高めている。例えば、ブレーキランプの点灯を感知することで、プリクラッシュブレーキの衝突回避上限速度を50km/hへと引き上げたり、またその情報をアダプティブクルーズコントロールの減速に反映させたりと、全般により緻密な制御が可能となっている。
加えて、電動パワーステアリングの制御により、65km/h以上の速度域では車線逸脱を抑制、同じく65km/h以上の速度域、かつクルーズコントロールがセットされている状態では車線の中央を走るようステアリング操作をアシストする「アクティブレーンキープ」を新たに装備。ここまでくれば、ソナーなりレーダーなりを使っての後ろ側方からの接近警報にも手を打ってほしかった気もするが、ともあれ先進安全デバイスの先駆者として、その名に恥じないバージョンアップを施してきたことは評価に値する。
エクステリアデザインはそれなりに新しいスバルのあり方をうかがわせる一方、インテリアのデザインは凡庸だ。そのぶん、基本インターフェイスには奇をてらったところがない。また、手頃な車格も手伝っての四隅の把握のしやすさや、まずまずの視認性は評価されてしかるべきだろう。強いて言えば、オーディオや各種インフォメーション、ドライブモードやアイサイト3の操作系が、ステアリング左右に類似したスイッチでごっちゃりと並べられているあたりは、再考の余地がある。
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発売間近でも改善をあきらめない
僕はこの2月、ツインリンクもてぎでのプレス向け事前説明会に参加し、本コースや敷地内の外周路などでプリプロダクション版のレヴォーグに乗る機会をいただいている。その際の印象を率直に言えば、悪くないけど古いというものだった。
アシをガチっと締めてロールを殺し、駆動とタイヤの特性を前面に押し出して、グイッと人為的に曲げていく感覚は、どことなくBG(2代目)~BH(3代目)時代の「レガシィGT−B」を思い起こさせる。そのために譲ったであろうストロークを生かせていない乗り心地も、地場票の代替需要を意識したがゆえだろうか。あの頃に比べればずっと洗練された速さではあるものの、今のクルマの乗り味の作り方からすれば、浅いと言わざるを得ない。……と、そんな印象を正直にエンジニアに伝えた。
そんなこともあって、量産版のレヴォーグに対する期待値はあまり高くなかったものだから、まずは転がりはじめからそのライドフィールに驚かされた。以前のそれとは別人のようにフワッと優しいタッチで路面からの細かな入力をいなしていくのは、唯一17インチタイヤを履くレヴォーグのベースグレード「1.6GT」である。聞けば、事前説明会の評価をフィードバックし、ダンパーの設定を全面的に見直したという。もちろん開発の段階でテストしていた別の仕様を基にしているだろうとはいえ、市販ギリギリの段階での方針転換は、それ相応のエネルギーを要するものだ。もちろん早々に予約を入れた方々にはいら立ちもあるだろう。が、仮にユーザーに少しでも利のあるものを届けたいというスバルの姿勢が発売延期の一因にあるとすれば、個人的にはやっぱりそれを責める気にはなれない。
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4車4様のキャラクター
標準車のセットアップの変更は、結果的に18インチを履くGT-Sの存在意義をも高めるものにもなっている。ビルシュタインダンパーが与えられたこちらにも、発売直前のタイミングで微細な仕様変更があったというが、17インチのGTに比べるとそのレスポンスははっきりと引き締められており、ショックの角は努めて丸められているものの、目地の段差や鋭利な凹凸ではそれなりの突き上げが感じられる。が、そのぶん高速域では、抑えられたピッチと適度なロールで姿勢は奇麗なフラット感を保ってくれるようだ。
対すれば17インチのGTは、この領域での車体のフワッとした上下動がやや大きくなる。いいとこどりとはいかないのがやや残念だが、フルタイム四駆ゆえのメカニカルなスタビリティーが確保されていることを鑑みれば、個人的には17インチのGTを多くの人に薦めたい。とかく極端な性能がクローズアップされてきたレガシィ一族の血統がレヴォーグだとすれば、このグレードには素のスバル車が持つ、ある種フランス車にも似た肌触りの柔らかさが宿っている。
GP系の「インプレッサ」をベースとするレヴォーグのシャシー容量は非常に大きく、300psを発生するFA20型2リッターユニットをもってしても、タイトなワインディングロードでまったく破綻の気配をうかがわせず、オン・ザ・レールでギュンギュン曲がる。こうなると、アクセルを踏みこんだ瞬間にどうしても感じられる、ぐにゃりとしたCVTのレスポンスがもどかしくなってもくる。
対すればFB16型1.6リッターは、170psのピークパワーを低回転域からの必要十分なトルクと上手にバランスさせており、CVTの応答遅れも感じさせず1.5トンを若干超える車体を軽快に走らせてくれる。ここでもキャラクターははっきりと分かれるわけだが、多くの荷物と共に高速道路を多用するという向きでなければ、1.6リッターで十分というのが個人的な印象だ。アイドリングストップが備わるうえ、短時間の試乗の参考値ながら高速巡航で15km/リッター前後の燃費も期待できるなど、経済性においても十分期待に応えてくれるはずである。
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高い完成度の背景にあるもの
視認範囲や制御ロジックが大きくリファインされたアイサイト3は、特にアダプティブクルーズコントロールにおいてその効能をしっかり体感できる。左右からの割り込み感知や前車との接近・離脱といった際の加減速のリニアさは前世代より格段の進歩を遂げ、メルセデスやボルボのそれを上回るほどに洗練された。
一方で、アクティブレーンキープに関してはパラメーターがシビアに過ぎるのか、白線の敷設状態やアールの大小、ステアリングの保持などの条件で頻繁にオン・オフを繰り返す傾向がみられた。万一の際の責任所在や監督官庁とのすり合わせなど、エンジニアリングとは別領域でハードルの高い技術であることは承知しているが、世界基準に照らしてみても、もう少し作動の判定を甘くしても問題はないと思う。
サイズ、もしくは価格的にみて、レヴォーグのライバルは日本車においては「マツダ・アテンザ」、輸入車においてはC~Dセグメントのワゴンということになるだろうか。SUVに取って代わられたステーションワゴン市場は、数的には死に筋であっても、商品のレベルは非常に高い。そしてレヴォーグは、そのど真ん中に割って入る総合安全性と動的質感を備えている。その完成度を支えるのは、フラットエンジンとシンメトリカル4WD、そしてアイサイトと、目移りすることなく育て続けてきた自らの技術的個性だ。レヴォーグの背景にあるものは実にシンプルだが、そのぶんだけ密度は非常に高いものになっている。
(文=渡辺敏史/写真=向後一宏)
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テスト車のデータ
スバル・レヴォーグ1.6GT EyeSight
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1780×1485mm
ホイールベース:2650mm
車重:1540kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.6リッター水平対向4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:170ps(125kW)/4800-5600rpm
最大トルク:25.5kgm(250Nm)/1800-4800rpm
タイヤ:(前)215/50R17 91V/(後)215/50R17 91V(ダンロップSP SPORT MAXX 050)
燃費:16.0km/リッター(JC08モード)
価格:277万5600円/テスト車=307万8000円
オプション装備:LED 4灯ロービーム+ハロゲンハイビームランプ+本革シート<アクセスキー対応運転席シートポジションメモリー機能&フロントシートヒーター付き>+ウェルカムライティング&サテンメッキドアミラー+運転席&助手席パワーシート+オールウェザーパック<スーパーUVカットガラス+撥水(はっすい)加工フロントドアガラス+フロントワイパーデアイサー+リアフォグランプ>(30万2400円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:1660km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:----km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
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スバル・レヴォーグ1.6GT-S EyeSight
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1780×1490mm
ホイールベース:2650mm
車重:1550kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.6リッター水平対向4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:170ps(125kW)/4800-5600rpm
最大トルク:25.5kgm(250Nm)/1800-4800rpm
タイヤ:(前)225/45R18 91W/(後)225/45R18 91W(ダンロップSP SPORT MAXX 050)
燃費:16.0km/リッター(JC08モード)
価格:305万6400円/テスト車=319万6800円
オプション装備:本革シート<アクセスキー対応運転席シートポジションメモリー機能&フロントシートヒーター付き>+ウェルカムライティング&サテンメッキドアミラー(14万400円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:3647km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:----km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
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スバル・レヴォーグ2.0GT-S EyeSight
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1780×1490mm
ホイールベース:2650mm
車重:1560kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター水平対向4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:300ps(221kW)/5600rpm
最大トルク:40.8kgm(400Nm)/2000-4800rpm
タイヤ:(前)225/45R18 91W/(後)225/45R18 91W(ダンロップSP SPORT MAXX 050)
燃費:13.2km/リッター(JC08モード)
価格:356万4000円/テスト車=365万400円
オプション装備:本革シート<アクセスキー対応運転席シートポジションメモリー機能&フロントシートヒーター付き>+ウェルカムライティング&サテンメッキドアミラー(8万6400円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:1083km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:----km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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