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アルファ・ロメオ・ジュリエッタ スプリント(FF/6AT)

アルファはアルファの道を行く 2014.07.09 試乗記 森口 将之 マイナーチェンジを受けた「アルファ・ロメオ・ジュリエッタ」に試乗。強豪ひしめくCセグメント市場で際立つ、ラテン系ハッチバックの魅力に触れた。
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様変わりする勢力図

「アルファ・ロメオ・ジュリエッタ」が属するCセグメントほど、ここ2~3年でガラッと状況が変わったクラスはないんじゃなかろうか。
ジュリエッタが日本で発売されたのは2012年だが、翌年「メルセデス・ベンツAクラス」がモデルチェンジしてスポーティー路線に転換し、北欧からは「ボルボV40」が参入すると、ベンチマークといわれる「フォルクスワーゲン・ゴルフ」は第7世代にスイッチして、圧倒的なレベルアップを図った。国産車では「マツダ・アクセラ」が、スカイアクティブ・テクノロジーを擁して欧州勢にガチンコ勝負を挑んできた。

正確にはゴルフとアクセラ以外はプレミアムブランドであり、アルファもこちらに属するわけだが、その枠内でもライバルが2台も増えたとなれば、なんらかの手を打つ必要ありと考えて当然だろう。ジュリエッタは今年5月にマイナーチェンジを実施した。
内容は内外装の変更とラインナップの刷新が中心。後者については1.4リッター直列4気筒ターボエンジンと6段デュアルクラッチ・トランスミッションを組み合わせた「スプリント」と「スポルティーバ」の2グレードとなった。

その中から今回はベーシックなスプリントに乗ったのだが、実車に対面して、どこが変わったのか分からなかった。新旧ジュリエッタの写真を見比べれば、フロントの盾のバーが太くなって存在感を増し、フォグランプのベゼルがクロム仕上げになったことで判別できるのだが、言われなければ気づかないかもしれない。
見方を変えれば、変えなくてもよかったということになる。数あるCセグメントの中で群を抜いてエモーショナルかつエレガントなスタイリングの持ち主だけに、スポーティーなライバルが出てきたからといって、地位が揺らぐわけじゃない。持って生まれた自慢のプロポーションを維持できていればOKじゃないかという気がしたのだ。
ところがドアを開けると、その奥に広がるインテリアはかなり変わっていた。

「ジュリエッタ」の現行モデルは2010年のジュネーブショーで世界初公開され、日本では2012年に販売が開始された。


    「ジュリエッタ」の現行モデルは2010年のジュネーブショーで世界初公開され、日本では2012年に販売が開始された。
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エントリーグレード「スプリント」のインテリア。シートはスプリントがファブリック、「スポルティーバ」がレザーとアルカンターラのコンビタイプとなる。
エントリーグレード「スプリント」のインテリア。シートはスプリントがファブリック、「スポルティーバ」がレザーとアルカンターラのコンビタイプとなる。
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シートカラーは「スプリント」がグレー、「スポルティーバ」がブラックの組み合わせ。後者にはオプションで「レッド」「ナチュラル(茶)」「ブラック」の、3色のレザーシートも用意される。
シートカラーは「スプリント」がグレー、「スポルティーバ」がブラックの組み合わせ。後者にはオプションで「レッド」「ナチュラル(茶)」「ブラック」の、3色のレザーシートも用意される。 拡大
リアシートの中央には、トレーやドリンクホルダーなどを備えたアームレストを装備。
リアシートの中央には、トレーやドリンクホルダーなどを備えたアームレストを装備。
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今回のマイナーチェンジでは、エクステリアデザインの一部を変更。新デザインのフロントグリルや、クロムメッキのフォグランプベゼルを採用した。
今回のマイナーチェンジでは、エクステリアデザインの一部を変更。新デザインのフロントグリルや、クロムメッキのフォグランプベゼルを採用した。
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細部に宿るアイデンティティー

いままでのスプリントのインパネは赤や白などのボディーカラーを反映していて、ちょうど60年前に生まれた初代ジュリエッタを彷彿(ほうふつ)とさせた。それがつやを抑えたチャコールグレーになった。ドアのグリップ部にも同じ色があしらわれる。プレミアムブランドに求められる上質感は格段に向上したし、安直にシルバーに頼らないところが粋だ。
スプリントのシートはグレーのファブリックのみ。スポルティーバに用意されるレザーが気になる人もいるだろうが、ファブリックならではの優しい掛け心地も魅力だ。イタリア車らしいタイトなシェイプは、大柄な人を想定したドイツやスウェーデンのクルマより、日本人にはフィットすると思った。

ドライビングポジションを決めて前を向くと、新型のステアリングホイールにはアルファの盾が仕込まれていた。その奥のメーターの表記は相変わらず、ベンジーナ(燃料計)とかアックア(水温計)とかイタリア語を多用している。細かいディテールまでアイデンティティーにこだわるからこそ、ドライバーはいつもアルファを感じていられるのだ。

最高出力170ps、最大トルク23.5kgmを発生するエンジンは旧型と基本的に同じ。JC08モードはアイドリングストップ効果もあって15.6km/リッターと、このクラスの輸入車としては悪くない。エマージェンシーブレーキの類いは備わらないものの、それ以外はひととおり最新のトレンドを押さえてある。
昔のアルファと比べれば、エンジンは静かだしトランスミッションはスムーズだけれど、ひさしぶりに乗ると2000rpmちょっとの100km/h巡航でボーッという排気音を響かせるなど、意外にアルファっぽいなと再評価することになった。他国のライバルが増えたおかげで、逆にラテン系ならではの感覚性能が強調されたようだ。似たような印象は他の部分からも感じ取れた。

そのひとつがドアミラーに映り込むボディー。リアフェンダーの盛り上がりが色っぽい。一部の競合車でも似たような景色は望めるけれど、それは単にフェンダーが張り出しているのであって、エロスは感じない。

インテリアではインストゥルメントパネルを中心に、各種スイッチのレイアウトなどを変更。新デザインのステアリングホイールも特徴となっている。
インテリアではインストゥルメントパネルを中心に、各種スイッチのレイアウトなどを変更。新デザインのステアリングホイールも特徴となっている。
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メーターには赤い単色表示のマルチファンクションディスプレイを装備。
メーターには赤い単色表示のマルチファンクションディスプレイを装備。
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今回のマイナーチェンジで、日本仕様のエンジンは1.4リッター直4マルチエアターボに一本化。上級グレード向けの1.75リッターターボはカタログ落ちした。
今回のマイナーチェンジで、日本仕様のエンジンは1.4リッター直4マルチエアターボに一本化。上級グレード向けの1.75リッターターボはカタログ落ちした。
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ラゲッジルームは、後席を起こした状態で350リッター、倒した状態で1045リッターの容量を確保している。(写真をクリックすると、シートの倒れる様子が見られます)
ラゲッジルームは、後席を起こした状態で350リッター、倒した状態で1045リッターの容量を確保している。(写真をクリックすると、シートの倒れる様子が見られます)
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「ジュリエッタ」のカタログ燃費は15.6km/リッター(JC08モード)。「フォルクスワーゲン・ゴルフ」や「マツダ・アクセラ」には及ばないものの、「メルセデス・ベンツAクラス」とはほぼ同等の値となっている。
「ジュリエッタ」のカタログ燃費は15.6km/リッター(JC08モード)。「フォルクスワーゲン・ゴルフ」や「マツダ・アクセラ」には及ばないものの、「メルセデス・ベンツAクラス」とはほぼ同等の値となっている。
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“アルファらしさ”を忘れていない

タイヤサイズは225/45R17で、マイナーチェンジ前の中間グレードだったコンペティツィオーネが履いていたものと同寸だ。にもかかわらず、乗り心地は16インチにとどめていた旧型スプリントのまろやかさを継承していた。足まわりの熟成が進んだのだろう。
それでも完全にフラットになりきらないところがイタリア車らしいけれど、それがまた人懐っこいと思えてしまう。高速道路では安定した直進性をもたらすステアリングは、コーナーでは相変わらずの鋭さを見せつけるものの、その後の車体の動きはしっとりしていて、アルファの良き伝統である適度なロールを見せつつコーナーを抜けていく。

たまに現れるウエット路面での接地感は今ひとつなれど、それさえ受け入れれば気持ち良い走りが堪能できる。反応の鋭さが楽しいのではなく、人の心に響く動きが楽しいのだということを、アルファはやっぱり分かっているようだ。

消費税アップにもかかわらず、価格が税込みで下がったこともジュリエッタのニュース。スプリントで言えば318万円から311万400円になった。プラットフォームが「ダッジ・ダート」や「ジープ・チェロキー」にも使われたことでコストダウンが実現できたためかもしれないし、300万円以下で買えるライバル車をにらんだ結果かもしれない。

でもここまで書いてきたように、それ以外の部分はライバルに擦り寄ろうという気配はさらさらなかった。スマホやタブレットなどの最新モバイル端末を使いこなしつつ、見た目やふるまいは相変わらず色っぽく艶(あで)やかなお姉さんのようだった。
「アタシはアタシなの」という声が聞こえてきそうなほど、自分らしさにブレがない。ライバルがスポーティーに、エモーショナルになりたいと頑張れば頑張るほど、むしろジュリエッタの個性が引き立つような気がした。

(文=森口将之/写真=郡大二郎)

ボディーカラーは赤や白、黒、グレーなど、全6色が用意される。
ボディーカラーは赤や白、黒、グレーなど、全6色が用意される。
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マイナーチェンジにより、「スプリント」では16インチから17インチにホイールのサイズをアップ。タイヤサイズは225/45R17となった。
マイナーチェンジにより、「スプリント」では16インチから17インチにホイールのサイズをアップ。タイヤサイズは225/45R17となった。
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トランスミッションには「アルファTCT」と呼ばれるデュアルクラッチ式ATを採用。シフトセレクターの前方には、走行モード切り替え機能「D.N.A.」システムのスイッチが備わる。
トランスミッションには「アルファTCT」と呼ばれるデュアルクラッチ式ATを採用。シフトセレクターの前方には、走行モード切り替え機能「D.N.A.」システムのスイッチが備わる。
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テスト車のデータ

アルファ・ロメオ・ジュリエッタ スプリント

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4350×1800×1460mm
ホイールベース:2635mm
車重:1400kg
駆動方式:FF
エンジン:1.4リッター直4 SOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:170ps(125kW)/5500rpm
最大トルク:25.5kgm(250Nm)/2500rpm
タイヤ:(前)225/45R17 91W/(後)225/45R17 91W(ブリヂストン・トランザER300)
燃費:15.6km/リッター(JC08モード)
価格:311万400円/テスト車=338万1960円(販売店装着オプション含む)
オプション装備:なし/※以下、販売店装着オプション ETC車載器(1万2960円)/カーナビゲーションシステム<パイオニア・サイバーナビ AVIC-ZH0077>(25万8600円)

テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:804km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:236.9km
使用燃料:21.8リッター
参考燃費:10.9km/リッター(満タン法)/9.8km/リッター(車載燃費計計測値)
 

アルファ・ロメオ・ジュリエッタ スプリント
アルファ・ロメオ・ジュリエッタ スプリント
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森口 将之

森口 将之

モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。

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