第251回:新型「デミオ」のここが見どころ/チーフデザイナーが語るこだわりのデザイン
2014.08.01 エディターから一言 拡大 |
「魂動(こどう)」デザインが採用されたマツダの新世代商品の第4弾、新型「デミオ」がいよいよわれわれの目の前に現れた。そのデザインの見どころは? チーフデザイナーに語ってもらった。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ボディーの“動き”を再構築する
新型「デミオ」のデザイン開発を率いたチーフデザイナーの柳澤氏。デザインを決めるにあたり、貫いた志はシンプルで力強いものだった。その志とは「妥協は一切せず、格好良さで突き抜けたい」というもの。
「われわれマツダは(販売規模の面では)スモールプレーヤーです。世の中にはいろいろなBカー(Bセグメントカー)があり、そこから突出しなくてはなりません。そのために、まず“格好良さで突き抜けたい”と考えました」
特に日本のマーケットで主流になっているBセグメントカーは、キャビンが大きい、いかにも室内が広そうなミニバン的なクルマたちだ。新型デミオはその流れは意識していないのだろうか。
「もちろん、そういう流れを意識することは非常に大事だと思います。ただ、われわれがそれをやってしまうと埋没してしまうかもしれない。だからそれとは違った“骨格”を作りたい。他のコンパクトカーとは一線を画す『走りの骨格』というものを作りたい。そういうところで勝負したいと考えました」
その「走りの骨格」とはこういうものだ。Aピラーを従来より後方に引くことによってキャビンをコンパクトに仕立てる/そのキャビンをしっかりとしたロワーボディーの後方に鎮座させる/そうすることでリアタイヤにぐっと荷重がかかったバランスを築く――こうすると見る者に走りを意識させるフォームが出来上がるのだ。この考え方は、実は新しいものではなく、すでに「CX-5」「アテンザ」「アクセラ」といった一連の魂動デザインで試みられている。
「ただアテンザやアクセラとまったく一緒のデザインなのかというと、それはちょっと違います。例えば、アテンザやアクセラのデザインをそのまま小さくするとどうなるか。まるで“チョロQ”のようになってしまう。単純にデザインを縮めるだけだと、“動き”が少し不自然になってしまうのです。そこで“動き”を再構築しなくてはなりません」
チーターの動きで表現するなら、アテンザは「トップスピードのしなやかな動き」、アクセラは「急激な加速感」、そして新型デミオでは「凝縮したエネルギーを解放する爆発的な動き」を表現したという。
リアタイヤの前方にぐっとエネルギーを凝縮させる。そのエネルギーがいまにも飛び出しそうなるがそれをこらえ、しかしある瞬間に爆発的に解放されて前に進んでいく――デミオはそんなイメージなのだそうだ。
“表情作り”にこだわった
続いてエクステリアの細部を見ていこう。新型デミオの顔つきはりりしい。その“目つき”は、アテンザやアクセラより精悍(せいかん)だ。
「表情作りにはかなりこだわりました。そのポイントは“獣の瞳”を表現したヘッドランプです。獣がぐっとにらんで獲物に飛びかかるような表情を作りたかったのです。そのために、LEDのリングを使って瞳の表情を作りました。ヘッドランプユニットの中にはまぶたもあります」「リアコンビネーションランプについても同様です。デミオがこちらに近づいてくるときだけでなく、走り去っていくときにも『あ、デミオだ』と気づいていただきたい。リアにもフロントと同じような表情付けを行いました」
マツダが「シグネチャーウイング」と呼ぶラジエーターグリル周りのクロム装飾も、アテンザやアクセラより太く、くっきりとしたものになった。
「CX-5のころは細い、ピンストライプのようなものでしたが、だんだん“進化”してきて、新型デミオでは非常に力強く、立体感の強いものとしました。(赤いボディーカラーの場合)まるで赤い皮を突き破って、骨格が飛び出してきているかのような印象になっていると思います。さらには、そこからヘッドランプを前後に貫いて、彫りの深い顔かたちを作っているのも特徴です」
凝ったデザインのホイールを履いているおかげで、足元もぐっと引き締まって見える。
「今回は“切削ホイール”を用意しました。これまでマツダのホイールというとシルバーで塗装したものが基本でしたが、金属の本物の輝きを手に入れたいという思いがあって採用しました。スペシャルな雰囲気も出ているし、いいホイールになったのではないかと自負しています」
世界のベンチマークを目指す
エクステリアと同じように、インテリアデザインにも高い志を掲げた。「世界中の自動車メーカーが、このデミオを目指してデザインしたいというくらいのものにしたい」という意気込みで取り組んだそうだ。実は柳澤氏はインテリアデザイン出身のチーフデザイナー。インテリアには人一倍こだわりがある。
「インテリアのテーマはふたつあります。ひとつはドライバーのためのコックピット空間をしっかり作るということ。ふたつめは助手席のための横方向に抜ける空間を作るということ。このふたつによって“前進感”と“間(ま)”というものを表現しています。運転席に座るとすぐに理解していただけると思いますが、(運転席には前後方向に)中心軸がしっかり通っており、その中心軸に対してシンメトリーになるようデザインしました」
その視覚的なポイントになっているのがエアコンの丸い吹き出し口(ルーバー)のレイアウトだ。通常、丸型ルーバーというとダッシュボードの中央にふたつ、両端にふたつの計4つを配置するケースが多い。しかしデミオでは運転席側にふたつ並べ、助手席側では左端のみに配置するというユニークなレイアウトを採っている。
「丸型ルーバーをドライバーに対してシンメトリーに置くことで、“凝縮感を高める”という意図があります。これはかなりうまくいったという自負があります」「助手席用の右側(車体中央側)は薄さ30mmのスリット状のルーバーを使っています。エンジニアのブレークスルーがあったおかげで、性能をまったく犠牲にせずに済みました。“横抜け”の気持ちいい空間ができたと思います」
インテリアでは質感の高さも自慢だ。メーター、ヒーターコントロール、シフトノブ、マツダコネクトのディスプレイとコマンダーコントロールといった部品は、若干違う部分こそあれ、基本的にアクセラと同じ部品を使っている。
「デミオよりひとクラス上のCカー(Cセグメントカー)の部品をそのまま使うことによって、Bカーとは思えないクオリティーを手に入れるというベースをまず作りました。さらに新型デミオのために新しく作った部品もいくつかあります。それらも通常のBカーのレベルを超えた、クオリティーの高いものとしました」
服や靴を選ぶように
デザインと密接な関係にある色のコーディネートにも力を入れた。これまで日本のBセグメントカーというと、“スタイルに奥手”なクルマが多かった。しかし新型デミオでは、服や靴を選ぶときのように、購入者が自分の好みを反映できるような品ぞろえを目指したそうだ。
「インテリアのコーディネーションは黒ベースを3種、白ベースを1種の計4種を投入します。黒をベースにしたものも、ただ真っ黒というのではなく、カラーのアクセントを少しずつ変えたり、違った素材を少しずつ使ったりして、それぞれのスタイルを作っています」「ベーシックなグレード向けのインテリアでもまったく手を抜いておらず、世間の他のBカーからは考えられないぐらいのクオリティーを実現しました」「その上の、量販グレード向けのインテリアでは『シック』『モダン』『飽きのこない』をテーマとしました。少しネイビー調の色を差したり、ファブリックにはエンボスを利かせたりと、通常とは違った手法をとっています」「さらにその上に、黒をベースに赤のアクセントを入れた、スポーティーでクラシックな感じのものを用意しました」「最後はホワイトレザー。テーマは『上質な遊び心』『鮮やかなコントラスト』『エレガント』です。オフホワイトレザーはアテンザやアクセラにもありますが、赤いストライプを入れることで遊び心を表現しました」
一方、ボディーカラーは全部で11色がそろう予定だ。アクセラまでに導入してきたボディーカラーのほかに、Bカーらしいイメージの新色を2色加えるという。
「今回新たにダイナミックブルーマイカとスモーキーローズマイカを追加します。ダイナミックブルーは力強くて明るいビビッドなブルーで、スモーキーローズマイカは女性をターゲットに用意した色です。通常、ピンクからパープルの色域はちょっと甘ったるい感じになるのですが、それだとマツダらしくないと考え、引き締まった上質な色としました」
Bセグメントにおいて、圧倒的な存在感と質感の実現を掲げる新型デミオ。今秋その詳細が明らかになる。
(文=webCG/写真=小林俊樹、webCG、マツダ)

webCG 編集部
1962年創刊の自動車専門誌『CAR GRAPHIC』のインターネットサイトとして、1998年6月にオープンした『webCG』。ニューモデル情報はもちろん、プロフェッショナルによる試乗記やクルマにまつわる読み物など、クルマ好きに向けて日々情報を発信中です。
-
第866回:買った後にもクルマが進化! 「スバル・レヴォーグ」に用意された2つのアップグレードサービスを試す 2026.4.17 スバルのアップグレードサービスで「レヴォーグ」の走りが変わる? 足まわりを強化する「ダイナミックモーションパッケージ」と、静粛性を高める「コンフォートクワイエットパッケージ」の効能を、試乗を通して確かめた。
-
第865回:ブリヂストンが新タイヤブランド「フィネッサ」を発表 どんなクルマに最適なのか? 2026.3.13 ブリヂストンが2026年1月に発表した「FINESSA(フィネッサ)」は、同社最新の商品設計基盤技術「ENLITEN(エンライトン)」を搭載する乗用車用の新タイヤブランドである。高いウエットグリップ性能と快適な車内空間の実現がうたわれるフィネッサの特徴や走行時の印象を報告する。
-
第864回:冬の北海道で「CR-V/ZR-V/ヴェゼル」にイッキ乗り! ホンダ製4WDの実力に迫る 2026.3.9 氷雪に覆われた冬の北海道で、新型「CR-V」をはじめとするホンダのSUV 3兄弟に試乗。かつては実力を疑われたこともあるというホンダ製4WDだが、今日における仕上がりはどれほどのものか? 厳しい環境のもとで、そのコントロール性を確かめた。
-
第863回:3モーター式4WDの実力やいかに!? 「ランボルギーニ・テメラリオ」で雪道を目指す 2026.3.3 電動化に向けて大きく舵を切ったランボルギーニは、「ウラカン」の後継たる「テメラリオ」をプラグインハイブリッド車としてリリースした。前に2基、リアに1基のモーターを積む4WDシステムの実力を試すべく、北の大地へと向かったのだが……。
-
第862回:北極圏の氷上コースでマクラーレンの走りを堪能 「Pure McLaren Arctic Experience」に参加して 2026.2.25 マクラーレンがフィンランド北部で「Pure McLaren Arctic Experience」を開催。ほかでは得られない、北極圏のドライビングエクスペリエンスならではの特別な体験とは? 氷上の広大な特設コースで、スーパースポーツ「アルトゥーラ」の秘めた実力に触れた。
-
NEW
ディフェンダー110 X-DYNAMIC HSE P300e(4WD/8AT)【試乗記】
2026.4.20試乗記本格クロスカントリービークルの「ディフェンダー」にプラグインハイブリッド車の「P300e」が登場。電気の力を借りて2リッターターボとしては格段にパワフルになった一方で、カタログ燃費はなかなか悲観的な数値を示している。果たしてその仕上がりは? -
NEW
ポルシェジャパンのイモー・ブッシュマン社長に聞く 日本での展望とスポーツカーの未来
2026.4.20デイリーコラム2025年8月に着任した、ポルシェジャパンのイモー・ブッシュマン新社長。彼の目に日本はどう映り、またどのような戦略を考えているのか? 難しい局面にあるスポーツカーや電気自動車の在り方に対する考えを含め、日本における新しいリーダーに話を聞いた。 -
スバル・ソルテラET-HS(前編)
2026.4.19ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバル&STIでクルマを鍛えてきた辰己英治さんが、“古巣”スバルの手になる電気自動車「ソルテラ」に試乗。パワートレインの電動化以外にも、さまざまな試みが取り入れられた一台を、ミスター・スバルはどう評価するのか? -
第57回:スズキはなぜインドに賭ける? 変わらず牛が闊歩するインドの最新工場を小沢コージが直撃
2026.4.18小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ小沢コージがインドへ。日本の自動車ファンにとってインドといえばスズキのイメージだが、実はスズキは現在、インドへの大型投資の真っ最中だ。なぜスズキはインドでこれほどまでに愛されるのか。最新工場を見学して考えた。 -
ボルボXC90ウルトラT8 AWDプラグインハイブリッド(4WD/8AT)【試乗記】
2026.4.18試乗記2016年に上陸した2代目となるボルボのフラッグシップSUV「XC90」の最新アップデートモデルに試乗。パワフルなプラグインハイブリッドシステムを採用する3列シートSUVの走りを、先にステアリングを握った「V60」や「XC60」との比較を交えながら報告する。 -
谷口信輝の新車試乗――ディフェンダー・オクタ編
2026.4.17webCG Moviesブーム真っ盛りのSUVのなかで、頂点に位置するモデルのひとつであろう「ディフェンダー・オクタ」。そのステアリングを握ったレーシングドライバー谷口信輝の評価は……? 動画でリポートします。





























