第252回:目指したのは毎日乗れるスーパーカー
ランボルギーニの社長が語る「ウラカン」の魅力
2014.08.12
エディターから一言
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ランボルギーニは去る7月、「ガヤルド」の後継モデルとなる新型スポーツカー「ウラカンLP610-4」を日本で発表した。発表に伴い来日した同社のステファン・ヴィンケルマン社長兼CEOに、ウラカンの見どころや同社のビジョンなどを聞いた。
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すでに全世界で2500台の受注
「ウラカンは全世界で高い評価をいただいています」 ランボルギーニのヴィンケルマン社長はインタビューの冒頭でそう言い放った。
「それは日本でもまったく同じで、すでにたくさんのご予約をいただきました。ただ、ご注文いただいたお客さまの多くはウラカンをまだ試乗しておらず、ご覧になっただけです。私たちは以前、ウラカンに魅力的なデザインを与えると申し上げましたが、現在の好調ぶりは私たちの約束が果たされたことを示すものといえます」
もっとも、ヴィンケルマン社長がランボルギーニファンとかわした約束はデザインだけではなかった。
「皆さんとお約束したことの2点目は運転のしやすさです。新しいウラカンは運転しやすく、日常使いにも適しています。それでいてサーキットで走らせても非常に速い。これらについては今後お客さまに試乗していただいて、ぜひともご体感いただきたいと思います。そうすれば、(ウラカンの注文が増える)第2の波がやってくるでしょう。私自身は、これらの点がウラカンの強みであり、(メディアなどで)高い評価を得ている理由だと考えています」
では、ウラカンにはこれまでに、いったいどのくらいの受注が入ったのだろうか? 「全世界で2500台です」とヴィンケルマン社長。ちなみにランボルギーニの2013年の販売台数は2121台。これを超える数の受注がサンターガタのランボルギーニ本社に舞い込んできたとは驚くしかない。ウラカンの生産が軌道に乗ると思われる2015年以降、毎年どの程度のウラカンが販売されると見込んでいるのだろうか?
「2015年の販売台数は2000台を超すと予想しています。なお、ガヤルドは最盛期の2008年に年間1850台を売り上げました。したがってウラカンはこの記録を凌(しの)ぐことになります」
顧客は同時に快適性も望んでいる
ヴィンケルマン社長がすでに述べたように、ウラカンの特徴は運転のしやすさ、日常的な快適性などを非常に高いレベルで実現していることにある。言い換えれば、よりユーザーフレンドリーに生まれ変わったわけだが、こうした方向性を選択した理由はなんだったのか?
「ランボルギーニオーナーを対象としたリサーチなど、さまざまな市場調査を行った結果、このような結論に達しました」とヴィンケルマン社長。「スーパースポーツカーを購入するお客さまは、スーパースポーツカーが本来持っているべき性能がすべて備わっていることを期待しています。そのいっぽうで、高い快適性も期待されています。例えば、扱いやすさ、(クルマへの)アクセスのしやすさなどで落胆したくないと考えているのです」
「いうまでもなく、ランボルギーニの各モデルはライバルに比べて(外寸が)より大きく、より低くなっています。そのいっぽうでパフォーマンスは傑出して高い。つまり、このパフォーマンスの高さと扱いやすさを両立しなければいけないわけですが、これは非常に困難な課題です。そこで私たちはウラカンの開発当初から、この問題と積極的に取り組んできました。ランボルギーニに関心を抱くお客さまの数は確実に増えていますが、必要とあらば毎日運転できるクルマであることを多くの方々が望んでいらっしゃいます。私たちは、そういった期待に応えるために、ウラカンをユーザーフレンドリーなスーパースポーツカーに仕上げました」
今後、ウラカンがランボルギーニの主力モデルとなることは間違いない。ただし、その務めを果たすには、いずれバリエーションの追加が必要となることは明らか。そこでウラカンのバリエーション追加に関する計画について尋ねてみた。
「まずは(ワンメイクレース用の)スーパートロフェオ・バージョンが2014年の夏に発表されます。けれども、それ以外のモデルが登場するタイミングについては、まだお話しすることはできません。いまはクーペを登場させたばかりなので、時期尚早というべきでしょう。また、発表のタイミングは生産キャパシティーとも密接な関係があります。ただし、私たちにはたくさんのアイデアがあります。そのなかには、皆さんがあっと驚くようなモデルも含まれているはずです」
年産5000台を視野に
2012年、ランボルギーニは北京モーターショーでSUVのコンセプトカー「ウルス」を発表し、世界的に話題を呼んだ。これに関連して、合同インタビューのある参加者は「フェラーリやポルシェはSUVを発売しているが、ランボルギーニはどのように対応するのか?」と質問した。これに対し、ヴィンケルマン社長は「フェラーリはまだSUVを発売していません」とくぎを刺すような発言を最初にした。
「いっぽう、ポルシェが『カイエン』を発売したのは10年以上も前のことです。したがって、ラグジュアリーブランドのなかでSUVがブームになっているとはいえません。私たちは、(ウルスをリリースすることが)ランボルギーニにとって正しいことだと考えて、これを決断しました。ランボルギーニはこれまでにも2ドア・スーパースポーツカー以外のセグメントに参入することを考えていました。そしてさまざまな可能性を検討するなかで、製品として最もエモーショナルで、ランボルギーニというブランドに最もフィットするのがSUVであるという結論に達しました。私たちはその開発を現在進めているところですが、何度も申し上げているとおり、まだ(フォルクスワーゲン)グループとしての最終的なゴーサインは得ていません。また、仮にゴーサインが得られたとしても、2017年末より前に発売されることはないでしょう」
2013年、ランボルギーニは1001台の「アヴェンタドール」を販売し、V12モデルの年間販売台数としては同社のこれまでの最高記録を更新した。仮にこの勢いが続くとすれば、年間2000台のセールスが期待されるウラカンとあわせ、今後ランボルギーニは3000台規模の年間生産台数を実現することになる。これにくわえてウルスが発売されれば、年産4000台はおろか、5000台も視野に入ってくるだろう。
「ランボルギーニの年間生産台数は現在2000台ほどです」とヴィンケルマン社長。「けれども、世界中の路上を走っているランボルギーニの印象としては2000台でも3000台でも変わりません。仮に第3のモデルが発売されたとしても5000台ほどでしょう。この程度の数であれば、ランボルギーニのブランドバリューは決して損なわれないと思います。私たちは、常に市場の要求より少ない台数を販売してきました。これはラグジュアリーブランドにとって非常に重要な戦略です。ランボルギーニは、今後も最もエクスクルーシブなスーパースポーツカーメーカーであり続けるでしょう」
(インタビューと文=大谷達也<Little Wing>/写真=webCG、ランボルギーニ)

大谷 達也
自動車ライター。大学卒業後、電機メーカーの研究所にエンジニアとして勤務。1990年に自動車雑誌『CAR GRAPHIC』の編集部員へと転身。同誌副編集長に就任した後、2010年に退職し、フリーランスの自動車ライターとなる。現在はラグジュアリーカーを中心に軽自動車まで幅広く取材。先端技術やモータースポーツ関連の原稿執筆も数多く手がける。2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考員、日本自動車ジャーナリスト協会会員、日本モータースポーツ記者会会員。
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