ランドローバー・レンジローバー イヴォーク プレステージ(4WD/9AT)
基本ができていればこそ 2014.08.25 試乗記 注目すべきはパワートレインだけにあらず。大幅な進化を遂げた「レンジローバー イヴォーク」の実力を、あらためて検証する。コンパクトでワイドレシオな9段AT
『webCG』編集部によって今回このクルマが借りられた理由。オートマチックトランスミッションが新しくなったから、と考えるのが妥当であろう。えー、ZFの「9HP」。ツァーンラットファブリーク・フリードリッヒスハーフェン=フリードリッヒスハーフェン歯車製造工場(ちなみにツェッペリン・ファウンデーション=ツェッペリン財団の頭文字でもあるそうです)の、9スピードのハイドロリックつまり流体クラッチつきのプラネタリーすなわち遊星ギアを使った変速機。動力伝達機構。
ZF 9HPの特徴はまずコンパクトであること。ギアボックスの中身はパッと見、遊星ギアのセットが3列。でも実はクラッチから一番遠い列が内外二重で、合計4列が従来型6ATと同じ長さ(横置きなので、搭載状態では幅方向)のスペース内に。
9段もあるココロは、レシオ・スプレッドをワイドにしたかった。ZFいわく「ニアリィ・テン」。たしか9.82だったと思うけど、要するに1速のレシオを9速のレシオで割った数字が10近い。9段あるうちの上のほうの4段はステップアップ比がごく小さく、これはさまざまな巡航状況下でエンジンの効率のいいところ、燃費的においしいところを可能なかぎりピンポイント的に使い続けたいから。
あと、トルク伝達効率の高さ徹底重視。内部ロス徹底排除。まず、トルクコンバーターは「starting device」つまり発進のみ用で、走りだしたら原則直結……ということは、使わない。オープン状態のシフトエレメント(クラッチやブレーキ)の数を可能なかぎり少なく抑えたのも特徴。つながったり止まったりしていない、つまりオープンな状態のそれらによって引きずり抵抗が発生することを嫌った(ところ以外も全体に)ロジカルな設計。プレートクラッチやバンドブレーキではないタイプのシフトエレメントを2カ所に使っていることも注目に値する。具体的にはドッグクラッチ。これだと、オープン時の引きずり抵抗を極小に抑えることができる。「あとはエンジンさん、ちゃんと仕事してね」という感じだろうか。
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リッチな気分で運転できる
で、乗った感じは。パワートレインというかトランスミッションに関しては、大筋またはほぼ、おっしゃるとおり。運転しやすい。変速クオリティーふくめ、全体の黒子に徹してる度が100%完璧かというと、そうではないかもしれない。でもそれは、「アウディS8」(ちなみにトランスミッションはZFの「8HP」)のその領域の記憶が強烈すぎたせいで筆者がそのように感じているだけのことかもしれない。
加速が終わってエンジンの回転が落ち着いたところでフと回転計を眺めると、1500rpm。試乗中、そういうことがなんべんもあった。100km/h巡航中のエンジン回転数も、やはりそのあたり。んー。なるほど。自分のための参考用によくやる燃費チェック走行ではリッター14km台の後半、たしか14.7km/リッターを記録した。ハイウェイ巡航だとそのぐらいはフツーに出ますよ、ということでひとつ。
エンジンは、常にガッツリとチカラを出してくれている印象。燃費チェック走行中も、カスカスでケチケチな感じはしなかった。リッチな気分で運転していられた。トランスミッションの適合もふくめて、燃費の奴隷っぽいパワートレインではないといえる。むしろ、その反対。といって無駄に燃料を吹いている感じもなくて、もちろんこれは加点要素。常用域のトルクが細いエンジン+CVTの、いわば「破れ鍋に綴じ蓋(われなべにとじぶた)」的なコンビのパワートレインによるものとは別世界のドライバビリティーがある。でもイマイチ驚けないとしたら、「フォルクスワーゲン・ゴルフR」のエンジンのレスポンスを知ってしまったことがその一因かもしれない。
ビブラムソールの靴で歩く気持ちよさ
乗り心地関係。低速走行中は、路面からのザラゴロやコツやゴツがちょっと強めに伝わってくる。つまり、凹凸その他をテロンテロンにナメてくれるタイプではない。明らかにゴツいほう。ここに関しては、初めて乗って「オヤッ!?」となる人がいても不思議ではない。
でも、それだけのこと……といえるのは、ひとつにはこのクルマ、フロアのガッチリ感がすごく高いから。強くてしなやかで一体感バリバリの構造体が自分の足元にズダーンとあるのが乗っていて明瞭にわかり、それはすごくイイ。快適。低速でザラゴロなどが強めに感じられるのもむしろウエルカムに思えてくるくらい。硬めのラバー素材を使ったビブラムソールの靴で舗装路面を歩くときの気持ちよさ、安心感、過剰スペック感……といったらイメージが伝わるのではないか。小石をガリッと踏みつけるのもまたよし、的な。
特筆点というべきなのか、サスペンション(おそらくダンパー)とハンドルの手応えの印象がずいぶんよくなった……というのは出た当初比。前に運転したときは、そこ2点のデキが正直、ちょっとかもっと終わっていた。ので、「このクルマのことはしばらく忘れていよう」と思ったものだった。久しぶりにまた乗って、これならもう、忘れていなくても全然いい。それどころか、大いによさを喧伝(けんでん)したいくらいの気持ちにいまはなっている。
とはいえ、EPS(電動パワステ)であることはすぐわかる。独特の、“N”のなさ。NはニュートラルのN。本来なら、つまりパワーアシストのないナマのハンドルのクルマだったらスカスカのブラブラであるはずの真ん中部分の手応えが、みっちり詰まってしまっている……のだけれど、にもかかわらず、真っすぐおよびほぼ真っすぐのときの進路の管理はものすごくやりやすい。微修正はゼロ、不要、といってもウソにはなるまい。いやあ、真っすぐ走ること!! このラクさ。安心感。うわー……。
運転がうまくなったかのよう
コーナリング関係(笑) 。すぐ上の段落の「うわー……」で終わりにしてもよかったのだけど、流れというかノリというかでワインディングロードへもいってみた。走ってみた。したところ……。
またしても、うわー……。なんと走りやすい!! まるで自分の運転が突然上手になったような。あまりにイイ感じだったので、コーナー4つか5つぐらいでサッサとやめて戻ってきてしまった。
ちょっと専門的っぽくいうと、旋回開始から終了までの間ずっと、ロールの管理がものすごくラク。手間要らず。不思議なくらい、クルマがうまいことやってくれちゃう感じ。ちょっとおおげさにいうと、ドライバー的には、クルマの進路(ライン)と向き(ヨー)の管理だけを気にしていればいい。でまた、そっちに関してもやはり不思議なくらい、ピタッと合う。合ってしまう。で、あまりにもイイ感じだったので、コーナー4つか5つで……という。うわー……。ちょっと絶句。
ドライバビリティーの高さに脱帽
ロールの管理。操作としてはハンドル関係で、直進状態からの傾けはじめと最大ロール角に達したところからの戻しはじめと再び直進状態への戻し終わりのところが特にデリケート。気をつかう。イヴォークの場合、それらの状況下でダンパーが常にキッチリ仕事をしている。タイヤからの力が何らかの事情であらぬほうへ逃げてしまってダンパーが動けない瞬間というのが、簡単にいうと、ない。ストロークが反転した直後の減衰力の抜けも、同じく、ない。なのでロールは、スーッとはじまってジワーっと進行し、フーッと止まってまたジワーっと戻ってスーッと終わる。それだけ。グラッやへコッやユサッがないのでそれらに対処する必要もなく、気持ち的にはそっち方面、クルマまかせでオッケー的な。
車両のロール姿勢そのものもよい。サスペンションアームの角度によるジオメトリー的なロール剛性もちゃんと確保されている印象があり、高いところに座った状態でクルマが傾く場合特有のコワさがない。上屋のペタンコ度が高いことも効いてはいるのだろうけれど、いわゆる「コマンドポジション」な感じはイヴォークにもちゃんとある。で全体としては、シャコタン系の走りの感じの反対。あるいは、逆境に強いタイプ。
というわけで。乗り心地にしろ操縦性や安定にしろ、それらがいいためにはまずボディーというかクルマの骨格がきちんとしていないといけない。そこがちゃんとできているからこその、ある意味アタリマエといえばアタリマエの結果ではあるのだろうけど、しかしオミゴトというほかない。ナ、なんっっじゃこれ!?
(文=森 慶太/写真=河野敦樹)
テスト車のデータ
ランドローバー・レンジローバー イヴォーク プレステージ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4355×1900×1635mm
ホイールベース:2660mm
車重:1790kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:9段AT
最高出力:240ps(177kW)/5500rpm
最大トルク:34.7kgm(340Nm)/1750rpm
タイヤ:(前)235/55R19 105V/(後)235/55R19 105V(ピレリ・スコーピオン ヴェルデ)
燃費:10.6km/リッター(JC08モード)
価格:605万円/テスト車=707万5000円
オプション装備:インテリアトリムフィニッシャー<ボタニカル>(3万1000円)/アダプティブダイナミクス(13万4000円)/ラゲッジスペース・レール(2万1000円)/Prestige/Dynamicテクノロジーパック(29万8000円)/ウェイド・センシング+ブラインドスポットモニターおよびリバーストラフィック・ディテクション(14万3000円)/アドバンスド・パークアシスト(12万7000円)/8型デュアルビュー・タッチスクリーンディスプレイ(8万2000円)/ACC(18万9000円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:2651km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(8)/山岳路(0)
テスト距離:507.5km
使用燃料:54.1リッター
参考燃費:9.4km/リッター(満タン法)/9.8km/リッター(車載燃費計計測値)
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森 慶太
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