ユーノス・ロードスターVスペシャル(FR/5MT)/マツダ・ロードスターRS(FR/6MT)/マツダ・ロードスターRS(FR/6MT)
受け継がれる意思 2014.09.02 試乗記 間近に迫った4代目のデビューを前に、あらためて3世代すべての「マツダ・ロードスター」に試乗。このクルマの魅力と、あるべき姿を考える。ライトウェイトならではの緊張感
(前編からの続き)
久しぶりに座る初代ロードスターのコックピットは、とにかく何もかもが華奢(きゃしゃ)だった。それはウインカーレバーやドアトリムだけでなく、シートフレームやステアリングのコラム芯やペダルステーの肉厚や……と、視覚のみならず触感からも受け取れる印象だ。対すれば、ロールオーバーに対応したAピラーの太さや「Vスペシャル」ならではのシフトノブの形状には若干ながらも違和感を覚える。
無理もない。これは今から四半世紀前のクルマだよ……と言い聞かせつつ、その間にすっかり肥えてしまった自分の身を嘆かざるを得ない。エンジニアがいくらグラム単位の軽量化に腐心しようが、乗る側の不摂生でそれも台無し。ミニマムシェイプのファッションのように、それは容赦なく乗り手にも罪悪感を突きつけてくる。クルマと乗り手とのこういう緊張感もまた、ライトウェイトスポーツの醍醐味(だいごみ)だ。
目の前に据わるウッドリムのナルディクラシックは360φだったと思うが、やたらと大きくみえるのは、それほどまとうものが少なかった時代の名残りとみるべきだろう。現在のステアリングはエアバッグはもとより、インフォテインメントや安全デバイスやパドルシフターやと、さまざまなものがごっちゃりと据えられるぶんスポークも太く、相対的に径も小さく感じられる。当然、操舵(そうだ)感にはイナーシャがまとわりつくわけで、それに慣らされた身には初代のステアリングフィールは目が覚めるほどにすがすがしい。単に軽いというだけでなく、細身の握りが手のひらの力みをうまくいなしてもくれる。この後、マツダとナルディとの関係はしばらく続くことになるわけだが、軽く小さなクルマを繊細に動かすに最適なインターフェイスをこの時点でマツダは見極めていたのだろう。思えば「Sパッケージ」に装着される本革巻きのそれも、リムの径や太さなど、その形状はロードスターの走りのキャラクターに見合ったものだった。