第1回:「V60」で八ヶ岳山ろくを駆ける
ひとときのぜいたく 2014.09.11 最新ボルボで 爽快ドライブ! 美しい風景に、とっておきの食と宿。「ボルボV60ラグジュアリー エディション」で味わった、上質なドライブ旅を紹介する。いざ歴史的リゾートへ
なぜか日本では、避寒という言葉はあまり聞かないのに、避暑は一般的に使われる。どちらも都市生活者の願望から生まれた概念ではあるが、例えば東京から見た避寒の地は南九州や沖縄など、はるかかなたに位置するのに対し、避暑地であれば近場の高原も該当するからだろう。
数字からもそれは立証できる。都道府県別の平均標高を算出すると、1位は長野県の1132m、2位が山梨県の995mで、3位以下を引き離しているのだ。都道府県庁所在地の標高で見ても、最高は長野市の420m、それに続くのが山梨県甲府市の270mとなる。両県が冷涼なリゾートとして多くの人から親しまれる理由は、数字からも明白だ。
たしかに昔の日本人は、「暑さ寒さも彼岸まで」という慣用句が象徴するように、寒暖の差は耐え忍ぶべきものとされていた。旅と言えば伊勢神宮や富士山など、信仰的色彩の強いものだった。そこに観光という概念が盛り込まれたのは、明治維新とともに来日した外国人たちの影響が大きい。
山梨県の清里高原も例外ではない。米国人牧師ポール・ラッシュが、関東大震災直後にキリスト教青年会拠点を立て直すために来日。すっかり日本を気に入った彼は、その後も各地で活動を続けた。そのひとつとして清泉寮の建設があった。日米開戦によりやむなく帰国するものの、戦後再来日すると、清里の開発に全精力を注ぎ、酪農や野菜栽培の指導、学校や病院の開設など、牧師の枠を超えた活動を続けた。
その後、清里はリゾートとしても注目されるようになり、今や一年中観光客が絶えることがない。でも漂う空気がただ澄んでいるだけでなく、どこかハイセンスでラグジュアリーな匂いに包まれているのは、こうした歴史がなせる業ではないかと思うのだ。
今回、「ボルボV60ラグジュアリー エディション」でまず目指したのが、この清里だった。清里へは、中央自動車道小淵沢インターチェンジを降り、八ヶ岳高原ラインを通るルートが一般的だ。しかし今回は長坂インターチェンジで降り、清里高原道路を使った。
理由は長さ490m、高さ110mというスケールを誇る八ヶ岳高原大橋を目にしたかったから。この日は霧に包まれていたが、晴れていれば北に八ヶ岳、南に富士山が見えるという。景観に配慮した設計というとおり、周囲の自然に違和感なく溶け込んでいるところも好ましい。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
“こだわりのもてなし”にため息
清里駅近くで清里高原道路を降り、八ヶ岳高原ラインに入る。間もなく赤い屋根の建造物が見えてきた。清泉寮だ。ソフトクリームが有名な観光名所というのが一般的なイメージかもしれない。だが前述の歴史を振り返れば、大人が訪れるにふさわしい場所であることが分かろう。
ランチは小淵沢インターチェンジ近くにある北欧料理のレストラン「メーラレン」にうかがった。メーラレンとはボルボの生まれ故郷でもあるスウェーデンの、湖の名。スウェーデンや日本の北欧料理店で働いた経験を持つ女性オーナーが、2007年にオープンした。
長く厳しい冬に対処すべく、魚の燻製や酢漬け、生クリームを多く使うのが北欧料理の特徴とのこと。この日のランチでもニシンのディルマリネや帆立のグラタンなどを堪能できた。建物はスウェーデン郊外の住宅をモチーフとしており、木の質感を生かした店内ともども、味覚以外でも北欧気分に浸れる場所だった。
再び八ヶ岳高原ラインをドライブしながら、牧場ののどかな情景を眺めたり、ショッピングを楽しんだりしているうちに、夕暮れが近づいたので、1日3組限定のオーベルジュ「ヒュッテ・エミール」へとノーズを向けた。
創業は1987年。名前はジャン・ジャック・ルソーの教育論「エミール」から取ったという。ドイツ風の木造2階建てで、窓などの建材はドイツから輸入。1階に暖炉を備えたダイニング、2階に客室を配し、横浜クラシック家具の名門「ダニエル」が製作した家具の上には、「リヤドロ」のポーセリンアートがさりげなく置かれる。
食事は地元の野菜や肉を用いながら、新しい世界をも探求。夕食はフランス料理フルコースで、ワインは100種類以上を用意する。派手さを追わず、真に質の高い時間を提供するという姿勢は、ボルボに通じるものだった。
走りが旅を盛り上げる
八ヶ岳周辺のドライブと言えば、長野県も忘れてはならない。そこで翌日は山の反対側を目指した。再び中央自動車道に乗って諏訪インターチェンジで降り、ビーナスラインを縦走するというプランだ。レストランやオーベルジュが主役だった前日が「静」なら、この日は「動」と言えるだろうか。
まずは白樺湖へと、ボルボV60を走らせる。湖畔でクルマを降りると、風の涼しさとともに、高原ならではの太陽の近さを、日差しの強さとして実感する。諏訪インターチェンジでは950mだった標高は、白樺湖では1400mにもなっている。
でもここが終着点ではない。再び運転席に乗り込み、1700mの霧ヶ峰高原へと登っていく。過給機付きとはいえ、1.6リッターとは思えないほどの実力に驚かされる。2000rpmあたりを保ったまま、スルスルと坂を登っていくのだから頼もしい。
距離を重ねていくにつれ、木立が消え、岩肌と草原に変わっていく。9月初めなのに黄金色のススキがなびいている。約1時間で1000m近くも登ってきたのだから当然だ。そんな変化を快適な移動の中で体感できるのもまた、ドライブの醍醐味(だいごみ)だろう。
ビーナスラインは常に曲がりくねっているわけではなく、直線とカーブを適度に織り交ぜてある。早い場所では1960年代に供用を開始した観光道路なので、路面が荒れている部分も多い。だからこそ、しっとりした乗り心地と自然な身のこなしを兼ね備えたボルボV60が似合う。ストレートでは景色を、コーナーでは走りを楽しめる。
体を優しく包み込むようなシートに身を委ねながら、ふと左を見ると、諏訪盆地の向こうに富士山が望めた。窓を開けると、爽やかな風が流れ込んできた。都会では得られないぜいたくな瞬間。このまま高原を走り続けていたいという思いを胸にしまい、諏訪湖へ向け山を下っていくことにした。
(文=森口将之/写真=郡大二郎/取材協力=北欧料理 メーラレン、ヒュッテ・エミール)
今回のドライブで出会ったそのほかの風景写真はこちらから
→第2回:八ヶ岳のドライブシーンを写真で紹介
ボルボV60ラグジュアリー エディションのスペック
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4635×1865×1480mm
ホイールベース:2775mm
車重:1590kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:180ps(132kW)/5700rpm
最大トルク:24.5kgm(240Nm)/1600-5000rpm
タイヤ:(前)215/50R17/(後)215/50R17
燃費:13.6km/リッター(JC08モード)
車両本体価格:419万円
→「ボルボV60」のオフィシャルサイトはこちら

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車は「シトロエンGS」と「ルノー・アヴァンタイム」。