アルピナB7 ビターボ リムジン Allrad(4WD/6AT)【ブリーフテスト】
アルピナB7 ビターボ リムジン Allrad(4WD/6AT) 2011.12.05 試乗記 ……2177万2000円総合評価……★★★★★
「BMW 7シリーズ」をベースに、さらにパフォーマンスに磨きをかけたという「アルピナB7」。BMWでは選べない4WDを駆って、その実力を確かめた。
大人のスーパースポーツ
520psを発生する4.4リッターV8エンジンと6段スポーツATの組み合わせは、重さ2.2トン、全長5mを超す大型セダンを緩急自在に走らせる。
「スペックはさておき、2200万円も出せば、そのパフォーマンスは当然」という考え方もあるが、アルピナというクルマの魅力は「ベースとなる『BMW 7シリーズ』とどこが違うか、どこがどれだけいいか」という比較論で済ませてはいけないと思う。その技術的なかさ上げ分と差額との対比ではなく、1台の高性能車として最高の魅力を持ち合わせているか否かという絶対評価こそが、オーナーの満足につながるのだ。
量産車をバラして再度入念に組み直すということは、ゼロから手作りでクルマを組み上げるより簡単なこともあれば、場合によっては、面倒になることもある。いずれにせよ確かなことは、量産車よりも入念なチェックを経ることで信頼性は確実に上がり、高精度な仕上げのおかげで、緻密かつ繊細な運転感覚が得られるということだ。
今回試乗した「アルピナB7」は、金に糸目をつけず“いいもの”を求める人の期待をたがえない。4ドアセダンの形をしたスーパーカーであるから、ふだんは周りのクルマに紛れて、あまり目立たずに済む。しかし、よく見ればただ者ではないたたずまいを有しており、存在感は主張できる。
また、「7シリーズ」の4WD仕様を求める人にとって、日本ではコレしか買えないという現実もある。「5シリーズ」に見られる、ノーズの動きを速めただけのようなスポーツ性を嫌う人にもオススメ。これは、より落ちついて楽しめる、大人のスーパースポーツだ。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「BMWアルピナ B7 ビターボ リムジン Allrad」は、BMWのフラッグシップセダン「7シリーズ」をベースに、アルピナが独自に仕立てなおしたハイパフォーマンスセダン。「Allrad」(=四輪駆動)の名が示すとおり、御本家BMWが日本市場で販売していない4WDモデルである。
日本での受注は、後輪駆動の「B7 ビターボ リムジン」が発売されて1年半後の、2010年12月から。翌2011年夏にはデリバリーが開始された。
4.4リッターV8ツインターボエンジンは、基本的な構成こそ「BMW 750i」と変わらないものの、ターボをはじめとする補器類やエンジンマネージメントが改められ、「BMW 750i」の407ps、61.2kgmを大きく上回る520ps、72.9kgmを発生する。0-100km/h加速は4.8秒で、最高速度は300km/h。
強化されたパワーに対応するため、サスペンション、ブレーキ、タイヤといった足まわりも専用パーツでリセッティングされる。
(グレード概要)
「アルピナB7 ビターボ」は大きく分けて、ショートホイールベースの「リムジン」(1990万円)と、そのロングホイールベース版「ロング」(2210万円)の二本立て。
テスト車の「Allrad」はショートホイール版をベースに駆動方式を4WDとしたもので、価格は55万円高(オプション扱い)となる。
ハンドル位置は、左のみ。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★★
基本的な部分は、「BMW 7シリーズ」に準じる。ATをマニュアルモードで変速するためのスイッチがステアリングホイールの裏に備わるが、センターコンソール中央のシフトレバーで操作する方が、より「B7」らしい。そのすぐ横にダンパー減衰力の切り替えスイッチ、手前にサイドブレーキのリリースボタンがあるから、ドライバーの右手がこの周辺にあることも多い。
カーナビの画面がメーター類と同じ高さにあるため、視線の移動は少なくて済む。
(前席)……★★★★★
ボンネットの稜線(りょうせん)がちょっと見える前方視界は魅力的だ。シートは、各種の調整機構を完備。座面先端を引き出す調整機能は有効だ。ドアの内側にグリップ形状の引き手はなく、開閉の際はウッドパネル下に設けられた溝を利用することになるのだが、もう少し後方までつかめるようにしてほしい。
長いホイールベースのほぼ真ん中に座るため、ピッチング方向の動きは気にならないが、天地方向の姿勢変化を嫌うならば、ダンパーのセッティングを「スポーツモード」にした方が快適だ。
なお右ハンドル仕様は、この「Allrad」(4WD車)では選べない。
(後席)……★★★★★
「乗り心地」の項目にも記すが、後席に座っていても、荒れた路面からくるボディーの上下動はスポーツモードの方が少ない。フンワリ揺れることが必ずしも乗り心地のよさにつながるわけではなく、上下動をしないことこそ安楽と感じられるのだ、という境遇が得られる。G的なショックは満足できる軽さ。それだけタイヤとホイールのコンプライアンスは大きくとられているから、アーム、ブッシュなど消耗品の管理は重要だ。
(荷室)……★★★★★
4WDゆえデフやドライブシャフトに有効なスペースが浸食されているかといえばそうでもなく、絶対的に広い床面積と奥行きを備える。表面の敷物も高級感のある仕上げがなされている。ちなみに、アルピナにランフラットタイヤは採用されない。トランクリッド裏の工具入れには、今ではファーストエイドキットが納まる。
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【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
重く大きな体格ながら、動力性能的には十分高性能。それでもDレンジでは2速発進となることから生ずる、発進時のエンジン音と加速感とのズレや、動き出しのトルクコンバーターのスリップ感が気になる。コレを嫌うなら、マニュアルモードで1速発進してからDレンジに入れるという操作が必要だ。マニュアルモードのまま過ごしてもよいが、定速走行に移ってからは静かな方が好ましいため、またDに移す。
4WDではあるが、傾斜地で砂利が浮いているような状況では、一瞬ながらホイールスピンを許すこともある。
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(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
「アルピナB7」に求められるものは、ノーマルの「BMW 7シリーズ」とは異なる。21インチのタイヤはロールセンターを上げ、前245/35、後285/30の太さはグリップに貢献。ハンドリングを向上させている。アウトバーンを300km/hでクルーズする時の信頼性は、容易に理解できる。日本の路上では本当の実力を発揮できるチャンスは少ないだろうが、見た目にもオーナーの満足度は高そう。調整可能なダンパーは、コンフォートモードにしておくよりも、常時スポーツモードにしておいた方が、姿勢はフラットで収まりも良い。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2011年11月10日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2011年型
テスト車の走行距離:7503km
タイヤ:(前)245/35ZR21(後)同じ285/30ZR21(いずれも、ミシュラン・パイロットスポーツ)
オプション装備:Alllad 4WDシステム(55万円)/アルピナ・スペシャルペイント(55万円)/トランクリッドオペレーション(9万8000円)/ソフトクローズドア(11万1000円)/クライメートコンフォートガラス(20万5000円)/リアビューカメラ(9万6000円)/ルーフライニング・アルカンタラ・アンソラジット(26万2000円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(6):山岳路(2)
テスト距離:237km
使用燃料:44.3リッター
参考燃費:5.35km/リッター

笹目 二朗
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