フォルクスワーゲン・ポロTSIコンフォートライン アップグレードパッケージ(FF/7AT)
世の中をひっくり返す 2014.09.17 試乗記 フォルクスワーゲンのコンパクトハッチバック「ポロ」にマイナーチェンジが施された。外観の変更は少ないながらも、中身は大きく変わったという新型をテストする。「ゴルフ」の安全装備を採用
テニスの全米オープンで錦織 圭選手が1回戦を突破したというニュースを聞いた時、まさかあんな大騒ぎになるとは思わなかった。同じように、「フォルクスワーゲン・ポロ」がマイナーチェンジを受けたと聞いた時は、まさかこんな一大事になるとは夢にも思わなかった。
こう言っちゃなんですが、優等生のポロのマイチェンというのはどちらかといえば地味なニュースだ。「もともとよくできていたし、大冒険もしないだろう」的な。悪くはないだろうけれど、腰を抜かすようなショックも受けないはずだ。
そんなことをつらつらと考えながら試乗会会場に到着、居並ぶ新型ポロを見渡して、デザインが大きく変わっていないことを確認する。現行ポロのデザインは世界的に好評とのことで、ほとんど手が加わっていない。
フロントグリルの地面と水平方向のラインが強調され、ヘッドランプとテールランプの形状に手が加わってやや存在感を増したものの、新旧モデルを並べて「間違いさがし」をしなければ発見できない程度の違いしかない。
ステアリングホイールが兄貴分にあたる「ゴルフ」と同タイプになるなど、インテリアのほうが変化の幅は大きい。メータークラスターも立体的なデザインになったほか、ドアトリムにクロム処理が施されるようになるなど、全体に少し高そうになった。
実は試乗後に、シートのデザインも変わっていると知らされたけれど、恥ずかしながら試乗中は気付かなかった。
日本に導入されるグレードは、とりあえずのところ「ポロTSIコンフォートライン」(223万9000円)と「ポロTSIコンフォートライン アップグレードパッケージ」(249万5000円)の2種類。
トピックはミリ波レーダーを用いる安全装備がどちらのグレードにも標準装備されることだ。衝突回避や被害の軽減が期待できる自動ブレーキ「フロントアシストプラス」、衝突や追突のショックを感知すると自動ブレーキが働いて2次衝突のリスクを下げる「マルチコリジョンブレーキシステム」がそれだ。
さらにアップグレードパッケージには、クルーズコントロールにレーダーセンサーを組み合わせ、先行車両との距離を適切に保ちながら追従する「アダプティブクルーズコントロール」も備わる。
ここまでお読みいただくとわかるように、現行ゴルフに投入した安全テクノロジーをポロにも採用したのだ。
地道な仕事の成果
試乗したのはポロTSIコンフォートライン アップグレードパッケージ。スタートから数十メートルで、滑らかで力強い発進加速にびっくりする。7段DSGの変速がシームレスで、シフトショックをまるで感じさせない。
このご時世、滑らかな発進加速なんてフツーである。マイチェン前のポロだって、十分滑らかだった。それなのに驚くくらいスムーズに感じたということは、格段の進歩を遂げたということだろう。走りの質感が、ひとクラス上がった感じだ。
速度を上げたり、ワインディングロードでシフトを頻繁に行っても、「ひとクラス上の質感」という印象は変わらない。エンジンはスムーズにまわり、トランスミッションは丁寧な仕事を繰り返す。
ちなみに1.2リッターの直噴ターボというエンジン形式はマイチェン前と共通であるけれど、新たに設計されている。新旧のスペックを比べてみると、興味深いことがわかる。
マイチェン後は最高出力90ps/4400-5400rpm、最大トルク16.3kgm/1400-3500rpm。マイチェン前は、最高出力105ps/5000rpm、最大トルク17.8kgm/1500-4100rpm。
つまり、パワー、トルクともにダウンしているのだ。一方でJC08モード燃費は22.2km/リッターと、マイチェン前より約5%向上している。
普通に考えれば燃費優先の改良のはずだけれど、ドライバビリティーもよくなった。走行抵抗の低減やトランスミッションとのマッチングなど、地道な仕事の成果だと考えて間違いないだろう。
優等生ではなく不良?
事前の資料で、電動油圧パワーステアリングが電動パワーステアリングに変更されることは知っていた。「油圧」を外すのはエンジンの負担軽減、つまり燃費対策だ。
ステアリングホイールの手応えが悪くなっていないかを注意して試乗したけれど、結論としてはまったく問題なかった。手応えとしてはやや軽めではあるけれど、路面の状況やタイヤの向きといったインフォメーションは確実に伝えてくれる。この信頼できるフィーリングは、一般的なコンパクトカーのレベルをはるかに超えている。
レベルが違うといえば、乗り心地と操縦性がバランスするポイントも凡百のコンパクトカーとは比べものにならないほど高い。まず感じるのは、フラットな乗り心地だ。コーナーでも、ブレーキングや加速時も、凸凹を乗り越えた時も、すぐにフラットな姿勢に戻る。ふらふら、ぐにゃぐにゃしないから、運転していても頼りがいがある。
かといって足まわりががちがちに固められているというわけでもなく、路面からのショックは巧妙に角が丸められてからドライバーに届く。タイヤと4本の足がしっかりと仕事をこなしている印象だ。
ホットハッチ的にきゅんきゅん向きを変えるタイプではないけれど、絶対に破綻しないという安心感のもとで遊べるハンドリングは、これはこれで楽しい。シャープとは言えないまでも、ドライバーのステアリング操作にナチュラルに反応してくれるから、自分が操っているという手応えは確実に手に入れることができる。
この乗り心地とハンドリング、そして滑らかなパワートレインが200万円台で手に入るのかと思うと、ちょっとぞっとする。なぜって、500万円も600万円もクルマに突っ込む意味が薄れてしまうからだ。ポロみたいなクルマの出現は、クルマ趣味やクルマ業界をピンチに陥れる!
ボディーサイズと排気量が小さいだけで、あとは安全装備でもフィーリングでも負けてはいない。世の中をひっくり返すポロは、優等生ではなく不良なのかもしれない。
(文=サトータケシ/写真=峰 昌宏)
テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・ポロTSIコンフォートライン アップグレードパッケージ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3995x1685x1470mm
ホイールベース:2470mm
車重:1130kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:90ps(66kW)/4400-5400rpm
最大トルク:16.3kgm(160Nm)/1400-3500rpm
タイヤ:(前)185/60R15 84H/(後)185/60R15 84H(コンチネンタル・コンチプレミアムコンタクト2)
燃費:22.2km/リッター(JC08モード)
価格:249万5000円/テスト車=269万4260円
オプション装備:Volkswagen純正ナビゲーションシステム714SDCW(19万9260円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:1012km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
-
スズキ・ジムニーシエラJC(4WD/4AT)【試乗記】 2026.7.3 俺の「ノマド」まだかな? とソワソワしている人が多いかもしれないが、実は既存の「ジムニー/ジムニー シエラ」もひっそりと進化を果たしている。とりわけ大きいのはアダプティブクルーズコントロール(ACC)の搭載だ。シエラの4段AT車でその仕上がりを試した。
-
スバル・レヴォーグ レイバック プレミアムブラックS:HEV EX プロトタイプ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.7.2 スバルのクロスオーバーモデル「レヴォーグ レイバック」に、ハイブリッドユニットを搭載し、車高を20mm落とした「S:HEV」が登場。電動パワートレインと切り詰められた足まわりは、このクルマにどんな走りをもたらすのか? ワインディングロードで確かめた。
-
トヨタGRカローラRZ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.7.1 GAZOO Racingの手になる「トヨタGRカローラ」が、一部改良でさらに進化。強化されたボディー剛性にサウンドコントロールシステムの追加など、従来モデルからの変更点をおさらいしつつ、硬派で辛口なその走りをリポートする。
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD/7AT)【試乗記】 2026.6.30 アウディのコンパクトSUV「Q3」がフルモデルチェンジ。新しくなったのはすっかり押し出しの強くなったフロントマスクだけでなく、内装もすべて新設計。インフォテインメントや灯火類などにも最新のシステムを採用した意欲作だ。「スポーツバック」の4WDモデルの仕上がりをリポートする。
-
マクラーレンW1(MR/8AT)【海外試乗記】 2026.6.29 マクラーレンが、かつての「F1」や「P1」に続く“究極のロードゴーイングカー”として開発した、超高性能モデル「W1」。そのドライブフィールはどのようなものか? イタリアで試乗した西川 淳がリポートする。
-
NEW
プジョー5008 GTハイブリッド アルカンターラパッケージ(後編)
2026.7.5思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「プジョー5008」に試乗。後編ではいよいよパワートレインとシャシーの仕上がりについて深く切り込む。雨のワインディングロードで5008は、レジェンドドライバーにどんな印象を残したのだろうか。 -
スズキ・ハスラー ハイブリッドX(FF/CVT)【試乗記】
2026.7.4試乗記スズキの軽クロスオーバーモデル「ハスラー」のマイナーチェンジモデルが登場。愛らしいフロントマスクにお化粧直しが施されたほか、先進運転支援装備が一段と充実。さらに走行性能の強化も図るなど、そのメニューは盛りだくさんだ。「ハイブリッドX」グレードのFFモデルに試乗した。 -
あの多田哲哉の自動車放談――ホンダN-ONE e:L編
2026.7.3webCG Moviesホンダの軽「N-BOX」を高く評価する、元トヨタのエンジニア、多田哲哉さん。では、軽EVの「ホンダN-ONE e:」は……? 試乗した印象を聞きました。 -
スズキ・ジムニーシエラJC(4WD/4AT)【試乗記】
2026.7.3試乗記俺の「ノマド」まだかな? とソワソワしている人が多いかもしれないが、実は既存の「ジムニー/ジムニー シエラ」もひっそりと進化を果たしている。とりわけ大きいのはアダプティブクルーズコントロール(ACC)の搭載だ。シエラの4段AT車でその仕上がりを試した。 -
あの『ナイトライダー』が現実に!? 開発が進む「パートナーのようなクルマ」の今を知る
2026.7.3デイリーコラム最新の「メルセデス・ベンツSクラス」には、クルマがパートナーのように寄り添うAI技術が盛り込まれているというのだが……その到達点は? 他メーカーの例も交え、先進技術が可能にするクルマの今と近未来を考える。 -
ハーレーダビッドソン・ナイトスター(6MT)
2026.7.3JAIA輸入二輪車試乗会2026ハーレーダビッドソンの水冷Vツインモデル「ナイトスター」に試乗。「X」シリーズのディスコンに空冷「スポーツスター」の復活と、さまざまな情報が飛び交っているハーレーの入門モデル群だが、ナイトスターの未来やいかに? 走りながら考えた。





























