シボレー・コルベット コンバーチブルZ51(FR/6AT)
ナイス・ガイ 2014.10.01 試乗記 “史上最強”とうたわれる、7世代目の「コルベット」。実際に乗ってみたらどうなのか? オープンの上級モデル「コンバーチブルZ51」で、その実力を確かめた。開けて感心
コルベットはオープンよ、という人のコルベットが、コンバーチブルである。コルベットのイメージリーダーはクーペだろうが、1953年生まれの初代モデルはオープンボディーのみだった。
7代目コンバーチブルは、今回の試乗車Z51で1159万円。クーペのZ51と比べた“屋根開き代”は60万円である。
たとえソフトトップでも、上を閉めたときのほうが剛性感がアップするのはこのオープンコルベットも同じだが、だからといってトップレス時のアルミフレームにヤワな印象はない。
この電動ソフトトップですごいのは、50km/h以下なら走行中でも開閉できること。ゲリラ豪雨対応型だ。試乗日は夕方から小雨が降ったりやんだりし始めたので、実際、40km/h弱で開け閉めしてみた。それくらいになると風圧も相当なはずだが、問題なく作動した。「ダイハツ・コペン」なんか、停車してサイドブレーキまで引かないと開閉できない。このへんはモノの違いというよりも、ポリシーの違いだろう。つまり、こういう校則のユルさもアメリカンの魅力といえる。
もうひとつC7コンバーチブルで感心するのは、車重(1590kg)がクーペより10kgしか重くないことである。0-60mph(96km/h)=3.8秒の加速データ(メーカー公表値)もクーペと変わらない。世界最速クラスのオープンカーである。
洗練された走りに驚く
7代目コルベット(C7)のテーマは“プレシジョン”である。「正確さ」とか「精度」とかいった単語をまさかアメリカンマッスルカーが口に出すとは思わなかったが、しかし乗ってみると、うたい文句はウソじゃない。
6153ccのV8 OHV。1気筒で770ccの大仕事をするエンジンは、信号で止まると、オイラ、好きで休んでんじゃないぜ という、ハーレーのビッグツインにも通じるちょっと不満げにバラついたアイドリングを聴かせる。しかし、普段づかいでみせる豪快さといったらそのときくらいだ。あとはエンジン、足まわり、ステアリングから細かいスイッチの感触に至るまで、この最新コルベットに“アメ車”的大味さを感じることはなかった。
潤滑系をドライサンプにして、サスペンションやブレーキをよりレーシング・コンシャスにしたのがZ51だが、荒々しさはない。ドライブモードを“エコ”や“ツーリング”にしておけば、スルスル軽く走る。“スポーツ”に替えると、アイドリング時から排気音が勇ましくなり、6段ATの変速スピードは速くなり、シフトダウン時のブリッピングも派手になる。でも、やり過ぎではない。
0-100km/hを4秒そこそこで走るクルマだから、速いのは当然だが、6600rpmまでよどみなく回るV8に昔のズロズロ感はない。試乗を通じて一番感心したのは、マッスルカー的豪快さではなく、クルマ全体の高い洗練度である。
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カートのような軽やかさ
行きは高速道路でドーンと足を延ばしても、帰りは山越えで戻ってきたくなるのが今のコルベットだ。
特に電子制御LSD標準装備のZ51は、よく曲がり、身のこなしも軽い。6.2リッターエンジンが詰まっているとは信じられないほど、ノーズも軽い。ロールしないのは、いつからかコルベットの伝統だ。屋根を開けて走っていると、大型高級レーシングカート、という感じである。
スポーツモードでも、直径36cmのステアリングホイールはちょっと重くなるだけ。電動パワステは基本、軽い。といっても、路面からのインフォメーションはちゃんと伝わってくる。
計器類はデジタルとアナログが混在している。C6から装備された横Gメーターを、ヘッドアップディスプレイで見られるようにしたのは“good job!”である。横G発生中ほどよそ見したくないシチュエーションはないからだ。
でも、こんなのが付いていると、ついつい横Gチャレンジに走っちゃうよなと自戒しながら峠道を上っていると、突然、「トランスミッションオイル高温」というメッセージが出て、スローダウンを促す警告音が鳴り始めた。標高400mの麓から1500mの峠へ向かうワインディングロードの終盤、標高1300mあたりである。言われた通り、ペースを落として峠をクリア、下り始めると程なくメッセージも警告音も消えて、正常に戻ったが。
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気持ちよく付き合える
約230km走って、燃費は5.0km/リッターだった。試乗距離がいつもより短いうえに、高速道路の比率も少なかった。帰りも上を走ってV4運転時間を延ばせば、もうちょっとよくなったと思う。
低負荷時の気筒休止システムは、GMが80年代初頭から製品化してきた。C7はエコとツーリングモードで作動し、計器盤に“V4”のグリーンサインがつく。一般道でアクセルを踏んでいるとつかない。V4運転に入るのはスロットルを戻したときだけである。作動も解除も体感はできない。
C7コンバーチブルは、なかなか楽しいクルマだった。四捨五入すれば500馬力の、後ろ2輪駆動のスポーツカーなのに、むやみに人を緊張させないキャラクターは、やっぱりアメリカンである。
コンバーチブルだから、上を開ければ広さは無限大だが、その場合でもコックピットには心地よい包まれ感がある。メーターナセルから助手席に向けて、斜めに下がるパーティションで運転席スペースを囲んだ造形がきいている。
1000万円を超すオープンカーなんて、気恥ずかしいし、気も重いし、実は一刻も早く返却したいと思いながら乗っていることが多いのだが、C7コンバーチブルは、もっと乗っていたいと思った。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=田村 弥)
テスト車のデータ
シボレー・コルベット コンバーチブルZ51
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4510×1880×1230mm
ホイールベース:2710mm
車重:1590kg
駆動方式:FR
エンジン:6.2リッターV8 OHV 16バルブ
トランスミッション:6段AT
最高出力:466ps(343kW)/6000rpm
最大トルク:64.2kgm(630Nm)/4600rpm
タイヤ:(前)245/35ZR19 89Y/(後)285/30ZR20 95Y(ミシュラン・パイロットスーパースポーツ)
燃費:シティー=6.8km/リッター、ハイウェイ=11.9km/リッター、総合=8.5km/リッター(標準グレード、米国EPA値)
価格:1159万円/テスト車=1198万1000円
オプション装備:MyLink統合制御ナビゲーションシステム(35万円)/フロアマット(4万1000円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:6716km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(4)/山岳路(3)
テスト距離:227.9km
使用燃料:45.5リッター
参考燃費:5.0km/リッター(満タン法)/5.4km/リッター(車載燃費計計測値)

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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