スバル・レガシィB4(4WD/CVT)/レガシィアウトバック リミテッド(4WD/CVT)
“変わった”のは確か 2014.11.13 試乗記 商品ラインナップから見直された、6代目の「スバル・レガシィ」。その仕上がりは……? セダン「B4」とクロスオーバー「アウトバック」の2モデルで確かめた。ドイツの御三家も視野に
先代の5代目レガシィは、75%がアメリカで売れたそうだ。日本はたった5~6%で、そのうち6割を「ツーリングワゴン」が占めていたが、その座は「レヴォーグ」に継いでもらうことにして、日本市場もB4とアウトバック2本立ての世界戦略に合わせることにした。というのが、ツーリングワゴンのない新型レガシィの布陣である。
一番売れるマーケットに合わせたクルマづくりをするのは理の当然で、6代目はまた少しボディーが大きくなった。特にB4は全幅が6cm広がり、アウトバックとともに1840mmに育った。
試乗会に先立つプレゼンテーションで、開発リーダーの内田雅之氏は、全幅1840mmをミドルサイズカーとして「グローバルなサイズ」と表現していた。しかも全幅の拡大は、室内寸法ではなく、彫りの深い彫刻的なデザインのために充てたという。アメリカで「メルセデス・ベンツCクラス」や「BMW 3シリーズ」や「アウディA4」らと戦うには、これくらいの大きさがスペックとして必要という判断なのだろう。
大きくなったボディーは品質感の向上も図られ、B4で旧型比48%、アウトバックで67%の剛性アップを果たしたという。
エンジンはポート噴射の2.5リッター水平対向4気筒のみ。つまりFB25に一本化された。トルクは変わらず、パワーが2ps上がっただけだが、クランクシャフト、コンロッド、オイルパンなどを除いて、8割のパーツを新設計したという。
正常進化で、やや鈍化?
70分の試乗枠で最初に乗ったのはB4。17インチを履く標準グレードである。
乗り込んで室内をざっと見まわし、エンジンをスタートさせてしばらく走ると、第一印象は、先代の正常進化だと思った。見ても、乗っても、旧型よりしっとり感が増した。いわゆる“熟成”が一歩進んだように感じた。突然デッカくなっちゃった先代も、決して嫌いなクルマではなかったが、なんというかもっとカサカサした印象だった。
リニアトロニックが改良された。主眼はCVTっぽさを消すことである。アクセルを踏み込むと、まず回転だけがワーッと上がり、あとから速度上昇がついてくる、CVT特有の振る舞いを矯正したという。
たしかにその点ではよくなったが、今度は回転が上がらなすぎる。50~60km/hからフルスロットルにしても、なかなか4000rpm以上に上がってくれないのだ。そのため追い越しのパンチがない。SI-DRIVEをスポーティーなS♯にしても変わらない。次に乗ったアウトバックもそうだった。
試乗後、実験部のスタッフにそう報告すると、そんなはずはないとのことで、議論はかみ合わなかったが、いずれにしても、新型レガシィは特別パワフルなクルマではない。B4と聞くと、ポルシェデザインが一丁噛みした初代B4を思い出し、「レガシィとっておきの高性能セダン」という先入観が拭えないのだが、今のB4はすっかりそういうB4ではなくなった。
モデルで“味”は違ってくる
アウトバックは18インチを履く「リミテッド」に乗った。
B4よりも最低地上高が5cm高い。そのため、そばに近づいただけでもデッカく感じる。運転席に座れば、アイポイントも歴然と高い。そういうところはSUV的なのに、ボディーはステーションワゴン。日本車にライバルを持たないのがアウトバックである。
リミテッドの足まわりにはスタブレックス・ライドと呼ばれるKYB製のスペシャルダンパーが標準装備される。効能を聞いていると、要はKYBが作ったビルシュタインでしょ、と思ったが、操縦安定性と乗り心地を高い次元で両立させた油圧ダンパーだという。
ノーマルダンパーとの違いを確認したかったが、考えてみるとB4との比較では、どこまでがダンパーの寄与なのかが判然としない。アウトバック リミテッドはB4標準グレードより50kg重く、実際、よりドッシリ重量車然とした乗り味である。リフトアップした高さは感じるが、そのわりに悪路でも鋭い突き上げがこないのは、やはりスタブレックス・ライドが効いているのだろうか。
ツーリングワゴンの受け皿は……?
5代目の途中からB4とアウトバックの2本立てに整理したアメリカ市場では、アウトバックがB4の2倍売れていたという。そこまでいかなくても、今度のモデルチェンジで日本でもアウトバックのシェアが伸びるような気がする。ここまで大きくなったスバルのセダンに乗りたいという人が、そんなに多くいるとは思えないからだ。
レガシィからツーリングワゴンが消えたので、レヴォーグにするか、はたまたちょっとがんばって新型アウトバックにするか、迷っているレガシイストがいたら、背中を押す情報を伝えたい。
アウトバックは旧型より全長で25mm、全幅で20mm大きくなった。レヴォーグと比べたら、125mm長く、60mm幅広い。
だが、新型アウトバックの荷室をメジャー片手にチェックしたところ、なんとレヴォーグのほうが使い勝手がよさそうなのである。アウトバックの荷室はほぼスクエア。一方、レヴォーグにはホイールハウスの蹴りがあるが、その狭い部分がアウトバックの荷室幅と同じなのだ。奥行きはレヴォーグが1cmほど勝る。フロアの地上高はアウトバックより10cm近く低いから、重量物の積み下ろしも断然ラクだ。荷車としてはレヴォーグのほうが優秀である。
なんて、いつのまにかレヴォーグの推薦インプレッションになってしまった。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=峰 昌宏)
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テスト車のデータ
スバル・レガシィB4
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4795×1840×1500mm
ホイールベース:2750mm
車重:1550kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター水平対向4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:175ps(129kW)/5800rpm
最大トルク:24.0kgm(235Nm)/4000rpm
タイヤ:(前)225/55R17 97V/(後)225/55R17 97V(ダンロップSP SPORT MAXX 050)
燃費:14.6km/リッター(JC08モード)
価格:286万2000円/テスト車=316万4400円
オプション装備:ハーマンカードンサウンドシステム&SDナビゲーション<CD/DVDプレーヤー&AM/FMチューナー>+専用12スピーカー<センタースピーカー、サブウーファー付き>(30万2400円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:905km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
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スバル・レガシィアウトバック リミテッド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4815×1840×1605mm
ホイールベース:2750mm
車重:1550kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター水平対向4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:175ps(129kW)/5800rpm
最大トルク:24.0kgm(235Nm)/4000rpm
タイヤ:(前)225/60R18 100V/(後)225/60R18 100V(ブリヂストン・デューラーH/Pスポーツ)
燃費:14.6km/リッター(JC08モード)
価格:340万2000円/テスト車=381万2400円
オプション装備:ハーマンカードンサウンドシステム&SDナビゲーション<CD/DVDプレーヤー&AM/FMチューナー>+専用12スピーカー<センタースピーカー、サブウーファー付き>+サンルーフ(41万400円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:1512km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。