MINIクーパーD ペースマン(FF/6AT)
一族きってのグランドツアラー 2015.02.12 試乗記 ディーゼルエンジンを搭載した「MINIクーパーD ペースマン」に試乗。強力なトルクと、しっかりストロークするサスペンションが織りなす走りに触れた。欧州ではディーゼルが規制の対象に
MINIクーパーD ペースマンの取材は2014年末、先にインプレッションを紹介した「ルノー・ルーテシア ゼン」の試乗会と同じ日に行われた。それはパリ市長が、2020年までに市内へのディーゼルエンジン車の乗り入れを禁止すると表明した翌週だった。
試乗会場でもこの話題が出たけれど、戸惑っている人が多かった。当然だろう。多くのクルマ好きは、ディーゼルは環境に優しいという欧州の主張を支持しており、東京都が1999年から展開した「ディーゼル車NO作戦」に反感を抱いていた。なのに今回はヨーロッパの中でもディーゼル比率が高いフランスがNOを宣言したのだ。
誤解が戸惑いを生んだと個人的には思っている。東京都はすべてのディーゼルがNOとは言っていない。当時は欧州の排出ガス規制に比べて緩かった粒子状物質(PM)を厳しく規制し、クリーンディーゼルエンジンの開発や低硫黄軽油の供給を求めたというのが真実だ。そもそもディーゼルそのものがNOだったら、今回の取材が成立しない。
それにパリの表明以前に、ディーゼル規制を実施した国が欧州に存在する。ドイツだ。2007年からベルリンなど主要都市で「環境ゾーン」を導入。PM排出量の多い古いディーゼルは、DPF(微粒子除去フィルター)を装着しなければゾーン内の通行ができなくなった。東京のルールに近い。『webCG』でもリポートを掲載している。
ディーゼルはガソリンに比べてCO2排出量が少ない。だから欧州では環境に優しいと主張されていたのに対し、日本ではPM排出量が多いことから健康に影響ありと判断された。どちらも正論だ。それが、今日では欧州の都市部で規制という動きが起こり、日本ではクリーンディーゼルが普及しはじめている。クルマにとって追い風とはいえない時代だからこそ、お互いを理解する姿勢が大事だ。
回すもよし、流すもよしのパワーユニット
MINIペースマンとクロスオーバーにクリーンディーゼルが設定されたのは2014年9月。エンジンは同じBMWグループの「BMW 3シリーズ」などにも積まれる、2リッター直列4気筒ディーゼルターボだ。最高出力は112ps/4000rpm、最大トルクは27.5kgm/1500-2500rpm。トランスミッションは6段ATのみだ。
同時にガソリン車も含めたマイナーチェンジも実施された。といっても変更は軽微で、外観はフロントグリルがブラックの横バーになり、内装はメーターがホワイトからブラックになったのが目立つ程度。MINIそのものの顔つきと、同じ英国生まれの「レンジローバー イヴォーク」を思わせるキャビンの組み合わせは、いまなお鮮烈だ。
車両重量は1410㎏で、ガソリン車の「クーパーS」より50㎏ほど重い。でもクーパーSを超える最大トルクを2000rpm以下で出すだけあって、スタートの瞬間から強力な加速を演じる。アクセルを踏み込めばDレンジのままでも5000rpm近くまで引っ張れる反面、流れに乗るならディーゼルならではの低回転トルクを生かし、キックダウンにほとんど頼らずに速度を調節できる。回すもよし、流すもよしだ。
アイドリングの音は外で聞いてもかなり緻密で、ガラガラという響きではない。もともとミニは音を聞かせるタイプなので、走行中はガソリン車に比べると野太く力強いサウンドが耳に届くものの、こちらもディーゼルらしさは希薄で、ちょっとクラシックミニをほうふつとさせた。
ロングクルージングで真価を発揮
乗り心地はMINIとしてはまろやかだ。昨年モデルチェンジしたハッチバックも乗り心地がだいぶ落ち着いたけれど、ひとまわり大きく背が高めのペースマンは、あきらかにサスペンションストロークが豊富で、それが快適性に貢献している。
おかげでコーナーでは4つのタイヤがしっとり接地し、クイックなステアリングを少々乱暴に切っても、グリップが失われたりはしない。2リッターのディーゼルターボを積んでいるのに、ノーズの重さはほとんど感じられず、操舵に対する確実な反応が確認できた。
ただし昔からMINIの走りを象徴する「ゴーカートフィール」は、小柄で背の低いハッチバックのほうが上。ペースマンはロングクルージングで真価を発揮するタイプだった。
そこにディーゼルエンジンならではのキャラクターが重なる。吹け上がりや回転落ちが穏やかになる代わりに、粘り強いトルクを生み出すディーゼルは、ほどほどのペースで遠くを目指す走りに向いているし、実際にそういうシーンで燃費が伸びる。ボディーもエンジンも、MINI一族でもっともGT的と言える。
最初に紹介したパリでの規制については、中心部ではクルマそのものの乗り入れ禁止が検討されている。既存のエンジン技術では大都市の環境を守ることが難しく、都市内の移動は地下鉄や自転車、電気自動車などに任せ、エンジン付きのクルマは郊外で乗るのが望ましいというメッセージが込められているのだろう。
クーパーD ペースマンは、そんなフィールドを駆け抜けるのが似合いそうな、2020年のパリを見越していたかのようなMINIだった。
(文=森口将之/写真=荒川正幸)
テスト車のデータ
MINIクーパーD ペースマン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4120×1785×1520mm
ホイールベース:2595mm
車重:1410kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼルターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:112ps(82kW)/4000rpm
最大トルク:27.5kgm(270Nm)/1500-2500rpm
タイヤ:(前)225/45R18 81V/(後)225/45R18 81V(グッドイヤー・エフィシエントグリップ)
燃費:16.3km/リッター(JC08モード)
価格:341万円/テスト車=469万4000円
オプション装備:ランフラットタイヤ(1万9000円)/18インチアロイホイール・ターボファンスポーク・アンスラサイト(24万9000円)/コンフォートアクセス(8万8000円)/クロームライン・インテリア(2万3000円)/ビジビリティーパッケージ(5万1000円)/ブラックリフレクター・ヘッドライト(2万6000円)/ピアノブラック・エクステリア(3万2000円)/電動ガラスサンルーフ(18万5000円)/ラゲッジコンパートメント・パッケージ(2万6000円)/アームレスト(2万6000円)/スポーツボタン(3万1000円)/アダプティブヘッドライト(4万1000円)/DTC<ダイナミック・トラクションコントロール>(2万9000円)/MINIビジュアル・ブースト(12万3000円)/レザーグラビティーシート(27万8000円)/メタリックペイント<ミッドナイトグレー>(5万7000円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:2851km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(6)/高速道路(4)/山岳路(0)
テスト距離:77km
使用燃料:8.6リッター
参考燃費:9.0km/リッター(満タン法)/9.9km/リッター(車載燃費計計測値)
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森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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