ボルボV40 T4 SE(FF/6AT)
充実期を迎えたコンパクトボルボ 2015.02.24 試乗記 先進安全・運転支援システム「IntelliSafe10(インテリセーフ・テン)」を全モデル・全グレードで標準装備とするなど、いつになく“攻め”の姿勢を見せるボルボ。発売から2年が経過したベストセラーモデル「V40」にも、これを機会にいろいろ改良の手が入っている。その洗練度合いを確認するために、あらためて「V40 T4 SE」のステアリングを握った。年が変わるといろいろ変わる
最近では日本車でも導入することが多くなった「イヤーモデル制」。フルモデルチェンジやマイナーチェンジだけでなく、年ごとに改良を加えていくやり方だ。輸入車ではおなじみの儀式で、そのタイミングで仕様や価格を変更することも多いために、導入から2年もたつと走りも装備もコロッと変わっていた……なんてことは日常茶飯事である。
だから、僕たちのようなモータージャーナリストも、新車導入時の試乗会で得た経験でクルマを語るのはとても危険だったりする。マイナーチェンジをしていなくても、最新のモデルに試乗して常に情報をアップデートしておかなくてはならないのだ。ただ、そう思っていても、すべてカバーできないのが悩みのタネなのだが……。
その点、今回の試乗会のように、最新版を確認できる機会はありがたい。カタログに出ていない情報を知ることもできるし……ということでやってきたのがボルボV40の2015年モデル試乗会だ。2013年2月に日本に導入されるや、すぐに日本市場で最も売れているボルボになったV40。僕自身も何度も試乗していてそのキャラクターは理解しているつもりだが、導入から2年でこれだけ変わると、チェックしないわけにはいかないだろう。
いろいろ変わった売れ筋グレード
ご存じのように、V40にはエントリーモデルの「V40 T4」および「V40 T4 SE」と、スポーティーな「V40 R-DESIGN」、そして、クロスオーバーの「V40クロスカントリー」があるが、今回試乗したのはV40 T4 SE。1.6リッター直噴ターボエンジンとデュアルクラッチの6段“パワーシフト”トランスミッションを搭載。V40 T4と比べると装備が充実していて、見た目もスタイリッシュな売れ筋グレードだ。
まずは外観を確認。一見、何も変わっていないようだが、フロントバンパーの両端、ヘッドライトの下の方にLEDライトが付いたのだとボルボのスタッフが教えてくれた。これまではクロムメッキのバーだったが、ヨーロッパで設定されているデイタイムライトを、ヘッドライトと同時点灯するドライビングライトに変更することで、日本市場に対応したそうだ。僕を含めてLEDライト好きにはうれしい変更である。
うれしいといえば、アルミホイールの変更も見逃せないところ。2014年モデルでは7.5J×17インチアルミホイールと225/45R17タイヤの組み合わせだったが、2015年モデルでは7J×17と205/50R17にそれぞれ変更となった。これには理由があって、16インチを履くV40 T4の最小回転半径が5.2mであるのに対し、17インチを履くV40 T4 SEは5.7mと大きかった。そこでボルボでは、希望するユーザーには注文時にリム幅の細いホイールと幅の狭いタイヤを用意し、5.2mの最小回転半径を実現していたのだが、2015年からはそれが標準になったということなのだ。
しかし、本当の“見どころ”は見えないところにあった。
「ツーリングシャシー」で走りが変わる
それが、ツーリングシャシーの採用である。これまでV40には「ダイナミックシャシー」とよりスポーティーなR-DESIGN専用シャシーがあり、T4/T4 SEにはダイナミックシャシーが組み合わされていた。その名のとおり、シャキッとした挙動が特徴だったが、ライバルとなる「フォルクスワーゲン・ゴルフ」の標準モデルなどに比べるとやや硬い乗り心地だったのも事実。そんな声が届いたのか、ボルボは快適性重視の「ツーリングシャシー」を新たに開発し、このV40 T4 SE(およびT4)に設定したのだ。
具体的には、ダイナミックシャシーよりもソフトな前後スプリングと、やはりソフトなフロントスタビライザーを採用し、また、リアのダンパーを新開発のツインチューブ式にしたという。さらに、前述のとおり、V40 T4 SEではタイヤの偏平率が45%から50%に変更されたことも、快適性のうえでは有利に働くはずだ。
実際に走ってみると、劇的な変化……というほどではないが、確かに乗り心地がマイルドになった。路面の荒れを適度に遮断するとともに、特にリアサスペンションのマナーが向上している。コーナリングの際などにはサスペンションのストローク感が増している一方で、動きそのものには落ち着きがあり、なかなかバランスよくまとまっているなと思った。
確実にアップした商品力
1.6リッターエンジンと6段パワーシフトは、相変わらず十分な加速を見せてくれるのだが、心なしかエンジンのレスポンスが向上し、また、シフトマナーもさらにスムーズになったように思える。2014年モデルの走りも十分に魅力的だったが、2015年モデルはさらに進化していたのだ。
加えて、ナビゲーションシステムのサプライヤーが変わったことで画面デザインが一新され、賢いボイスコントロール機能が付いたり、オプションでハーマンカードンのプレミアムサウンドシステムが選べるようになったりと、トータルの商品力は確実にアップしている。もちろん、ボルボ自慢の安全装備は、「IntelliSafe10」が標準で装着される。
ということで、輸入コンパクトカーの選択肢として、いまや外せない存在となったボルボV40。僕のまわりでもオーナーが増えているのはうなずける。2015年後半にはディーゼルの導入を予定しているそうで、フォルクスワーゲン・ゴルフや「アウディA3」「メルセデス・ベンツAクラス」、そして、「BMW 1シリーズ」あたりはうかうかしていられないはずだ。
(文=生方 聡/写真=荒川正幸)
テスト車のデータ
ボルボV40 T4 SE
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4370×1800×1440mm
ホイールベース:2645mm
車重:1440kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:180ps(132kW)/5700rpm
最大トルク:24.5kgm(240Nm)/1600-5000rpm
タイヤ:(前)205/50R17 93W/(後)205/50R17 93W(ピレリ・チントゥラートP7)
燃費:16.2km/リッター(JC08モード)
価格:365万円/テスト車=408万1000円
オプション装備:パノラマガラスルーフ(19万円)/PCC(パーソナル・カー・コミュニケーター)キーレスドライブ(3万1000円)/レザー・パッケージ(本革シート、助手席8ウェイパワーシート)(21万円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:277km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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