第298回:近未来のスポーツカーサウンドを体感!?
EVで復活した「トミーカイラZZ」を試す
2015.06.04
エディターから一言
拡大 |
京都大学発の電気自動車(EV)ベンチャー企業であるGLMと電子楽器メーカーのローランドが、EV向けのサウンドシステムを共同開発。国産初の量産EVスポーツ「トミーカイラZZ」のオプションとして2015年秋に発売すると発表した。EVの魅力を飛躍的に高めるとうたわれる「近未来サウンド」はどのようにして生まれたのか? 自動車ジャーナリスト森口将之がリポートする。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
老舗楽器店の橋渡しでコラボが実現
EVの音をどうするか? 音源の主役だったエンジンサウンドや吸排気音が失われて、自動車業界はどうしていいか迷っているような感じを受ける。そんな中で今回発表されたテクノロジーは、ソリューションのひとつになるかもしれない。
GLMは2010年に京都で創業。同じ年にはやはり京都生まれのトミーカイラ・ブランドの継承を決め、地元のものづくり企業とワーキンググループを結成。2012年にトミーカイラZZのナンバーを取得し、2014年から納車を開始している。
EV版のトミーカイラZZは、1997年から1999年まで販売されていたトミーカイラZZのエンジンをモーターに載せ換えただけのクルマではない。ボディーは2代目として発売予定だった「ZZII」のイメージを反映させ、シャシーは衝突安全性能をクリアするとともに、後輪荷重を増やして安定性を増すべく再設計されている。開発には大手メーカーやベンチャー企業、レーシングチーム出身のエンジニアが当たった。
車両重量は850kgしかなく、パワーウェイトレシオはガソリン仕様をしのぐ2.7kg/ps。0-100km/h加速はわずか3.9秒という。工場は京都の舞鶴にあり、99台の限定生産。価格は864万円となっている。
GLMとローランドの出会いは、大阪駅近くのグランフロント大阪に、トミーカイラZZを展示したことがきっかけだった。近くに老舗楽器店、三木楽器の展示スペースがあったので、EVの音作りをしたいと打ち明けたところ、三木楽器がローランドを紹介してくれたという。ローランドでは、以前からEVの音作りの研究開発を行っていたこともあり、すぐに合意した。
感性を重視したサウンドチューニング
GLM代表取締役社長の小間裕康氏は、トミーカイラZZの走りにふさわしい、ワクワクできるサウンドが欲しいと考えていた。しかしエンジンサウンドのコピーはまったく考えてなかった。そしてローランド代表取締役社長の三木純一氏も同じ気持ちだった。
1972年にローランドが創業したときは、電子楽器に懐疑的な意見が多かったという。しかしその後、北米を中心に人気を集め、今では批判する人はほとんどいない。ローランドではアコースティック楽器に似せた音ではなく、電子楽器らしい音を追求していて、その姿勢も評価されている。この考え方がクルマにも通用するのではないかと思っていたのである。
ローランドでは開発の3本柱として、ハードウエア、ソフトウエア、そして感性を意味するアートウエアを掲げている。最新技術のBehavior Modeling Technologyも、ふるまいという言葉が象徴しているように、音の動きを大切にしている。
今回もその姿勢は反映されていて、モーターの回転数に応じて音が高くなるだけではなく、回転数に合わせて音色を変え、アクセルペダルを大きく踏み込んだときには力強い響きにするなど、感性を重視してチューニングしたという。
車両に搭載されるシステムユニットは幅110mm、奥行き250mm、高さ62mmとコンパクトなサイズで、重量は1.1kgにとどまる。音は現状で5種類用意されており、今回はこのうち2種類を、同乗走行という形で試すことができた。
気分に合わせて好みのままに
僕はガソリン仕様のトミーカイラZZの新車に乗ったことがある。約20年ぶりに再会してまず感じたのは、サイドシルの高さとバケットシートのタイト感だった。それだけ自分の体が硬く太くなったのだろう。おかげでクルマとの一体感は最高レベルだ。
スタートすると早速、シンセサイザー的な音がキャビンに流れ、速度を上げるにつれ高まっていく。変速機がないので、速度と音は比例している。違和感はまったくなかった。電子音でありながら深みのある音色で、安っぽさがないこともあるけれど、理屈抜きにEVのイメージに合っていたのだ。
ガソリンエンジン車に似せたような音だったら、やはり本物には及ばないという第一印象になって、逆にガッカリしただろう。電子楽器を手がけて半世紀近くになる、ローランドの自信と経験は説得力にあふれていた。
途中の一時停止で、ドライバーがセンタートンネルのダイヤルを回した。発進すると今度は、ビートの利いた低音に変化していた。ちょっとアメリカンV8に似ているけれど、それをまねしたような印象はない。むしろ気分に合わせて音を選べるのが好ましいと思えてきた。
クルマ好きの間では依然として、EVは音がないからつまらないという声が多い。EVはまだ、ローランド創業直後の電子楽器に近い存在なのかもしれない。でも今回のエレキなコラボには、その風向きを変える可能性があると感じた。素材がトミーカイラZZというのも、保守的な好事家には響くのではないだろうか。
(文=森口将之/写真=webCG)
■「トミーカイラZZ」のEV用車載サウンドシステムを試す

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
-
第876回:“ヨコハマ史上最高”が目白押し SUV向けスタッドレスタイヤの新製品「アイスガード8 SUV」を試す 2026.10.2 2026年9月1日に販売が開始された横浜ゴムのSUV用スタッドレスタイヤ「アイスガード8 SUV」。従来製品との比較で氷上性能を14%、雪上性能を4%、耐摩耗性能を11%アップさせたというその実力を、一足先に冬のテストコースで確かめた。
-
第875回:キモは氷上性能! ダンロップの新しいスタッドレスタイヤ「ウインターマックス アイスプロ」を試す 2026.7.1 違いは氷の上で表れる! ダンロップの新しいスタッドレスタイヤ「WINTER MAXX ICE-Pro(ウインターマックス アイスプロ)」に、冬の北海道で試乗。氷上性能を徹底的に追求したという新製品の、パフォーマンスの一端に触れた。
-
第874回:自動運転からワイパーまで! 自動車を支えるメガサプライヤー ボッシュのあくなき挑戦 2026.6.27 世界屈指のメガサプライヤー、ボッシュが開発中の新技術を披露! 市街地での高度な運転支援技術に、日本の方言にも対応した対話型AI、サーキット走行のノウハウを教えてくれるコーチング機能等々……興味深いその中身をリポートする。
-
第873回:ウエット路面に強み ミシュランの新タイヤ「パイロットスポーツ5エナジー」と「プライマシー5エナジー」を試す 2026.6.19 2026年1月29日に導入が発表されたミシュランの新製品「パイロットスポーツ5エナジー」と「プライマシー5エナジー」。これまでの特徴に加え、低燃費性能や耐摩耗性、ウエットグリップ性能のアップをうたう両モデルの走りを、クローズドコースで確かめた。
-
第872回:「フォレスター」がJNCAPで最高評価を獲得! “安全”に対するスバルの不断の取り組みに迫る 2026.6.6 相対速度100km/hの衝突後でも、普通にドアが開く!? 人気のSUV「スバル・フォレスター」が、日本の自動車アセスメントで最高評価を獲得した。安全なクルマづくりを第一とするスバルの取り組みを、群馬製作所で行われた衝突試験デモの様子とともにリポートする。
-
NEW
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】
2026.10.17試乗記三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。 -
写真で解説する「フィアット・グランデパンダ」
2026.10.16画像・写真ステランティスが「フィアットブランドの大きな柱のひとつとなる重要なモデル」と位置づける「グランデパンダ」が日本上陸。その具体的な見どころを、写真とともに解説する。 -
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】
2026.10.16試乗記欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。 -
スズキの未来を徹底検証! 技術戦略説明会から“10年先のスズキの姿”を夢想する
2026.10.16デイリーコラム年間生産500万台で、Dセグメントまでカバーする巨大メーカーに!? スズキが発表した「10年先を見据えた技術戦略2026」を徹底検証。技術開発に製品開発、インドを核としたグローバル戦略などの中身を通して、「10年先のスズキの姿」を予想した。 -
賢い選択 ――キャデラック「LYRIQ」フラットプランのすゝめ――
2026.10.15投資家も太鼓判! 「キャデラック・リリック」×フラットプランという最適解<AD>クルマが変わり、時代も変われば“持ち方”だって変化する? お金のプロである投資家が、「キャデラック・リリック」の残価保証型リースを勧める理由とは? 夢の「2台持ち」をかなえる、最新電気自動車の賢い選び方を考えた。 -
間もなく正式発表 ミツオカの新型2シータースポーツカー「LA1」を予測する
2026.10.15デイリーコラム光岡自動車が2026年11月26日に正式発表を予定しているアメリカンスタイルの新型2シータースポーツカー「LA1」。現在公開されているLA1の画像とティーザーサイトに掲載された情報から、その特徴を分析する。