メルセデス・ベンツB250 4MATICスポーツ(4WD/7AT)
ありがたみのあるコンパクト 2015.07.06 試乗記 「メルセデス・ベンツBクラス」の中で、最上級にして唯一の4WDモデルとなる「B250 4MATICスポーツ」。試乗してみると、ほかのコンパクトカーとは異なる、このクルマならではの特質が見えてきた。広がる小さなメルセデス
2015年の輸入車販売レースで、メルセデスが快走している。5月までの新車登録台数は、2万6334台。フォルクスワーゲンを2000台以上抑えて首位を走る。
昨年同期はフォルクスワーゲンが7000台の差でリードしていた。伸び率の違いも顕著で、去年より1割以上、台数を伸ばしているメルセデスに対して、フォルクスワーゲンは逆に2割落ち込んでいる。あんまりゴキゲンじゃないのだ、ワーゲンは。
実際、このところ路上でのメルセデス遭遇頻度が明らかに増えた気がする。ローカルな実感は、「ここもベンツにしたんだ!」という家が、ウチの御近所に増えていることである。具体的には「Aクラス」と「GLAクラス」と「CLAクラス」。メルセデス・ベンツ日本はモデル別の登録台数を公表していないが、ベンツの敷居を下げることを狙ったコンパクトクラスが、もくろみどおり売れているようである。
今回取り上げたのはBクラス。スタイリングが比較的地味なので、あまり目立たないが、実はけっこう走っているコンパクトメルセデスである。試乗したのは、今年1月のフェイスリフトで登場したシリーズ最上級モデル、「B250 4MATICスポーツ」である。
「硬い」のがいい感じ
Aクラスには「メルセデスAMG A45 4MATIC」という飛び道具があるが、Bクラスにはない。このB250 4MATICスポーツが最もスポーティーなBクラスである。
たまたま試乗に同行した「トヨタ・アルファード ハイブリッド」から乗り換えると、B250 4MATICスポーツはまるでスポーツカーだった。足まわりが硬い。ステアリングはズシリと重く、操舵(そうだ)の反応はクイックだ。シートも硬かったが、これはオプションのAMGレザーパッケージに含まれるスポーツシートである。
可変トルクスプリットの4WDと組み合わされるエンジンは、直噴2リッター4気筒ターボ。180系の1.6リッターターボ(122ps)に大差をつける211psは、「ゴルフGTI」(220ps)に迫るだけあって、パワーは申し分ない。エンジンの滑らかさや静粛性は6気筒並みだが、ターボのさく裂感はけっこうあり、いまはやりの穏当なダウンサイジングターボとは一線を画す。
ワインディングロードに踏み入れても、1.6トンの車重を感じさせないオンロードスポーツ四駆である。サスペンションはスピードを上げても硬いが、乗り心地にしなやかさを欠くのはA、B両クラスに共通する弱点だから、こうしてスポーティーに固めてしまったほうがかえってアラが隠れるし、潔い。
ユーティリティー性はあなどれない
おさらいすると、Bクラスは、Aクラスとプラットフォーム(車台)を共用する5ドアワゴンである。
現行モデルのデビューは2011年。先代はAクラスよりホイールベースも全長も大きかったが、現世御利益ゼロだったサンドイッチ構造の高床車台をやめたこの2代目で、大きな違いは全高だけになった。BはAより85mm高い。「フォルクスワーゲン・ゴルフ」の牙城を切り崩すべく、がぜん、カッコに目覚めた今のAクラスに対して、ファミリーワゴンとしての使い勝手のよさを前面に打ち出したのがBクラスである。
自慢のタネはリアシートの広さだ。膝まわりもヘッドルームも実にタップリしている。「Cクラス」より明らかに広い。前席のスライドレールは床から15cmも高いところに持ち上げられ、足をその下に入れることでレッグルームはさらに広がる。アルファードのセカンドシートと比べても、そう見劣りしない。というのは言い過ぎかもしれないが。
リアシートを畳むと、ワゴンとしての能力も高い。テールゲートは高い位置から大きく開き、ルーフの低い、しかも後ろすぼまりボディーのAクラスに差をつける。後席を立てた平常時の荷室奥行きもAクラスより10cm大きい(実測)。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
「ゴルフ」のワゴンと異なる魅力
今回、約300kmを走って、燃費は10.7km/リッターだった。車重1.6トンの200ps級オンロードスポーツ四駆をスポーティーに走らせた結果としてはワルくないと思う。
あらためてBクラスを使ってみて、これはAクラスのハイルーフワゴンだなと思った。「ゴルフ」にもワゴン(ヴァリアント)があるが、ハイルーフがもたらす使い勝手のよさはついてこない。4WDの品ぞろえもない。
B250 4MATICスポーツの価格は500万円である。もはやお値段はコンパクトとは言えないが、しかし、「A250 4MATICスポーツ」(475万円)との差は25万円しかない。とはいえ、ゴルフとはバッティングしない高価格コンパクトである。
だが、BクラスもAクラスも、運転しているとゴルフより半クラス大きなクルマに感じられる。ボディーの骨格の骨太感、具体的に言うとドアの立てつけの重々しさなどは、ゴルフより明らかに立派である。値段が高い分、「さすがベンツ」と思わせるありがたみがあるのだ。
そういうコンパクトメルセデスが、「アベノミクス、効いてきたゾ」と実感する人たちを吸い寄せているわけである。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=郡大二郎)
テスト車のデータ
メルセデス・ベンツB250 4MATICスポーツ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4440×1785×1545mm
ホイールベース:2700mm
車重:1600kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:211ps(155kW)/5500rpm
最大トルク:35.7kgm(350Nm)/1200-4000rpm
タイヤ:(前)255/40R18 92Y/(後)255/40R18 92Y(コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5)
燃費:14.3km/リッター(JC08モード)
価格:500万円/テスト車=550万5000円
オプション装備:レーダーセーフティパッケージ<ブラインドスポットアシスト+ディストロニック・プラス+レーンキーピングアシスト+PRE-SAFE>(19万9000円)/AMGレザーエクスクルーシブパッケージ<本革シート+助手席のメモリー付きフルパワーシート+マルチカラーのアンビエントライト+レッドステッチ入りのレザーARTICOドアパネル+harman/kardonロジック7サウンドサラウンドシステム>(30万6000円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:5447km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(5)/山岳路(1)
テスト距離:303.0km
使用燃料:28.1リッター
参考燃費:10.8km/リッター(満タン法)/10.6km/リッター(車載燃費計計測値)

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
NEW
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。 -
NEW
トヨタ車はすべて“この顔”に!? 新定番「ハンマーヘッドデザイン」を考える
2025.10.20デイリーコラム“ハンマーヘッド”と呼ばれる特徴的なフロントデザインのトヨタ車が増えている。どうしてこのカタチが選ばれたのか? いずれはトヨタの全車種がこの顔になってしまうのか? 衝撃を受けた識者が、新たな定番デザインについて語る! -
NEW
BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ(FR/8AT)【試乗記】
2025.10.20試乗記「BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ」と聞いて「ほほう」と思われた方はかなりのカーマニアに違いない。その正体は「5シリーズ セダン」のロングホイールベースモデル。ニッチなこと極まりない商品なのだ。期待と不安の両方を胸にドライブした。